光の角度をいじるだけで
朱色の印象は簡単に変わる。自分はまず被写体の素材感を観察してから照明を決めることが多い。絹や漆のように反射が強いものはハードライトでハイライトを出すと朱色が生きるけれど、肌や布の質感を柔らかく見せたいなら大きめのディフューザーやソフトボックスで光を拡散させる。ハードとソフトを使い分けるだけで同じ朱色でも硬質な色味と柔らかな色味が作れる。
色温度とホワイトバランスも重要だ。低色温(暖色寄り)の光は朱色をより暖かく、饒舌に見せる。一方でやや高めの色温(中性〜やや青)を混ぜると朱色の赤みが落ち着き、陰影に落ち着きが出る。撮影は必ずRAWで行い、ハイライトが飛ばないようにヒストグラムを監視する。特に朱色は白飛びしやすいので、露出は少し抑えてシャドウから持ち上げるのが自分の常套手段だ。
最後に補助道具について。反射板で光を拾って陰を柔らかくし、グリッドやゴボで背景の光をコントロールすれば朱色に必要なコントラストだけを残せる。場合によってはカラージェルを使って背景に低く暖色を入れ、被写体の朱色を相対的に強調することもある。こうして何枚も撮っているうちに、その被写体に一番似合う“朱”が見えてくるよ。