蹲る表現には思いがけない力強さがある、といつも感じている。折りたたまれた身体が生む線と空間をどう切り取るかで写真の印象がまるで変わるから、まずは姿勢の“線”を読むことから入る。肘や膝の角度、背中の湾曲、視線の向き——これらを鏡で確認してもらいながら、私がよく使うのはモデルに小さな「内的動機」を与えること。例えば「遠くを見つめて何かを思い出す」といった簡単な想像を促すと、力みが抜けて自然な表情と手の配置が出てくる。
構図では低めのカメラ位置を試すことを優先する。ローアングルにすると蹲った形の持つ重量感が増す一方、少し高めから斜めに狙うと俯瞰の緊張感が生まれる。レンズは35mm〜85mmの間で選び、広角寄りだと背景を活かした環境ポートレートになり、望遠寄りだと圧縮効果で被写体の存在感が際立つ。浅い被写界深度で背景をぼかすとモデルのシルエットが鮮明になりやすい。
ライティングは側面からの柔らかい光か、うっすらしたリムライトで輪郭を際立たせるのが好きだ。手や足の輪郭にハイライトを残すと、蹲りの“形”が立体的に見える。コミュニケーションは必須で、短い言葉や実演でポーズを微調整し、細かな重心移動を指示していくと必ず写りが良くなる。最終的に目線と手の位置が合わさった瞬間にドキッとする一枚が生まれることが多い。