蹲るポーズを表情の延長として扱うと、コマ全体の説得力がぐっと増す。まず骨格の収まり方に注目して、膝と骨盤の位置関係をしっかり決めることを心掛けている。体重がどこにかかっているかが一目で分かるように、足裏やかかとの接地面をはっきり描くと安定感が出る。僕はしばしば重心線を下書き段階で引いて、頭、胸、骨盤がどのように重なっているかを確認してから仕上げに入る。
服のシワや髪の落ち方は感情を伝える小さな手掛かりになる。膝に体重がかかる部分は布が引っ張られ、太ももの内側は潰れる。この違いをトーンや細いハッチングで表現すると、単なる「しゃがみ」ではなく「疲弊」「落胆」「隠れる」といったニュアンスが生まれる。『ベルセルク』のように重さを強調したい場面では、太い影や密度の濃いトーンで体を塊として見せるのが効果的だと感じる。
コマ割りと見せ場の順序も重要で、蹲る瞬間をクローズアップで見せるか、引きの構図で周囲との関係性を示すかで読者の受け取り方が変わる。僕は時に小さな見開きや縦長コマを使って、視線の動きをコントロールしながら「視線が下がる」感覚を作る。最終的にはディテールの積み重ねで感情を補強するのが肝心で、細かいラインワークと影の置き方でその一コマが長く記憶に残ることが多いと思う。