蹲る場面を描写する際、まず身体のディテールから入ると現実感が出る。膝の角度、太ももにかかる重み、呼吸の変化、手の位置。そうした身体的情報を積み重ねることで、読者は理由を知らなくても「なぜかここにいる」感覚を共有できる。
感情の層を段階的に重ねるのが自分の常套手段で、外的描写→短い内省→感覚の比喩、という順に並べることが多い。具体的には、まず視覚や聴覚の断片を入れて場面を固定し、そのあとに短い一文で胸に湧く言葉や昔の記憶を差し込む。余白を残すことで読者が補完しやすくなり、キャラクターの弱さや後悔が自然に伝わる。
例として、感情の移ろいを抑えた語りが効く作品に'ノルウェイの森'がある。がっちり説明しすぎず、些細な身体反応を拾うと説得力が増すと感じる。書くときはセリフを極力減らし、短い独白や断片的な比喩で心の揺れを表現する。そうすると蹲る瞬間が物語の中で孤立せず、読者の胸に残るはずだと信じている。