十字軍の戦闘を描くときに最初に考えるべきは、視覚と倫理を同時に扱うことだと思う。画として迫力を出すのは簡単でも、単なる血の見世物にしてはいけない。僕は古い絵画や史料の陰影を参照しつつ、兵士や民衆の表情を丁寧に描く演出を推したい。カメラワークは低めの視点を取り入れ、重さや
喘ぎを感じさせるとリアリティが増す。細かな武具の音や鎧の摩擦音も重要で、静かな瞬間の音を削ると逆に戦闘の恐ろしさが際立つ。
次に、戦闘の構造を分節化することで視聴者を疲弊させない工夫をする。突入、乱戦、撤退、余波と場面を分け、各々で感情的なテンポを変える。陣形や地形の描写に少しだけ説明的な提示を挟むと、観客が戦況を理解しやすくなる。ここで参考になるのは『ベルセルク』の一部エピソードで見られる、個人の悲劇と大軍のうねりを同時に見せるやり方だ。
最後に、史実への敬意を忘れず、異文化を単純化しない表現を選びたい。十字軍は宗教的・政治的に複雑なので、犠牲者の顔を隠さずに描くことで物語の重みが増す。演出としては大局と個のドラマを交互に出すこと。そうすることで、単なるアクション以上の深さを持った戦闘描写が生まれると考えている。