昔の宮廷文化について考えると、まず頭に浮かぶのはやはり平安期の物語群だ。そうした中で『源氏物語』は、
夜這いに相当する恋の訪れを繰り返し描く代表作として挙げられる。作中での夜間の逢瀬は、当時の恋愛感覚や階層間の関係性を映し出す重要なモチーフになっていて、現代の読者にも強い印象を残す場面が多い。自分は古典文学を読むたびに、あの時代の微妙な「暗がりでの駆け引き」が登場人物の心理を深めていると感じる。
この古典は多くの現代メディアに翻案されてきた。大和和紀による漫画『あさき
ゆめみし』は、平安の恋物語を視覚的に再構築しており、原作の夜間の逢瀬がどのようにマンガ表現に置き換えられるかを理解するうえで有益だ。さらにアニメ映画『源氏物語千年紀』など、映像化された作品群もあって、原作の持つ夜の情緒がどのように解釈されるかを見るのは面白い。
古典からの直系の系譜を追うことで、夜這いというモチーフが単なるエロティシズムにとどまらず、文化史的・物語論的な意味を帯びていることがよく分かる。個人的には、原典とその漫画・アニメ化を併せて読むと視点が広がって楽しいと思う。