台所で何度も試してみて気づいた小さな工夫が、家庭のベジタリアン・
ダルバートをぐっと豊かにする。最初は「ダル=豆」「バート=ごはん」だけで成り立つ単純な構成に思えるけれど、塩味や香り、食感の重なりが肝心だと感じるようになった。
私がよくやるのは、レンズ豆の組み合わせを工夫することだ。たとえばムング豆をベースにして、少量のウラドやトゥール(トゥール・ダル)を混ぜると、とろみとコクが自然に出る。豆は前夜に軽く浸しておくと煮崩れが抑えられ、仕上がりが滑らかになる。圧力鍋で短時間に炊いてから、少し潰して、とろみが出るくらいに整えると、ごはんにかけたときの絡みがよくなる。
香り付けでは、シンプルなテンパリング(油を熱してスパイスを入れる)を大事にしている。クミンシード、マスタードシード、乾燥赤唐辛子を低温の油でじっくり弾かせてから、ターメリックとコリアンダーパウダーを加えると、ベースのダルが単調にならずに立体的な味わいになる。旨味の補強には、刻んだトマトを煮込むほか、発酵系の要素を少しだけ取り入れるのがコツだ。私は味噌を少量溶かしたり、乾燥きのこの戻し汁を使ったりして、植物性の旨味を足すことが多い。酸味は仕上げにビネガーやレモン汁を数滴だけ入れて調整すると、全体が引き締まる。
副菜は多様にしておくと、家庭の満足度が上がる。蒸した季節野菜の炒め物、豆のサラダ、ピリッとした漬け物(自家製の酢漬けやスパイス漬け)を複数皿用意すると、それぞれの箸休めがダルの味を引き立ててくれる。量は家族の好みで加減するが、味のバランスを意識するだけで、簡単な材料でも満足感のあるベジダルバートが作れる。試行錯誤の余地がたくさんある料理だから、少しずつ自分の定番を作る楽しさもあるよ。