諧謔は単なる笑いの技術以上のものだと捉えている。文章の奥底に別の意味や視点が透けて見えるとき、読者は思わず笑いながらも考えさせられるからだ。
具体的には、期待と現実のズレを丁寧に作ることが肝心だと考えている。例えば人物描写で読者の先入観を誘導し、最後にさりげなく裏切る。『
高慢と偏見』に見られる皮肉の効かせ方は、登場人物の語り口と作者の視点のズレを利用している良い例だ。台詞の言い回しや節回しを工夫して、読者が先回りして抱く予想を逆手に取る。
リズムも大きく影響する。短いセンテンスでパンチを効かせ、次の文でやわらかく落とす。語彙選びは明快にしておくと、諧謔が言葉遊びではなく意味の層として効いてくる。自分の作品でも、この『期待の裏切り+リズム』のセットをよく使っている。終わり方はユーモアを残す程度に留めておくと、余韻が長く続く気がする。