妻の座を降りた日私――氷室夏弥(ひむろ なつみ)の誕生日パーティーの最中、シャンデリアが音を立てて砕け散った。
夫の氷室和哉(ひむろ かずや)は私を置き去りにし、インターンの秘書・三上実里(みかみ みのり)を咄嗟に抱き寄せた。
いつもは冷えきっているその顔に、見たこともないほどの優しさが浮かんでいる。
「実里……危険が迫ったあの瞬間、ようやく気づいた。俺にとっていちばん大切なのは、お前だった」
呆然としているうちに、実里を気づかって駆け寄ってきた息子の氷室悠真(ひむろ ゆうま)に突き飛ばされ、私は床に倒れ込んだ。
「どいてよ!氷室夫人になるのは、実里さんなんだから!」
少し離れた場所で寄り添う三人の姿を見ている。
今度こそ、本当にもう疲れた。
氷室夫人なんて、誰がなりたければなればいい。