風のように君を離れ、幸せへと駆け出す神谷迅(かみや じん)のそばにいるために、私という「海外帰りの名家の令嬢」が彼のそばで二年間、秘書として働き、仕事も生活も丁寧に支えてきた。
取締役会での地位を確立したその日、彼は私に深い想いを込めてプロポーズし、結婚後の三年間、私に対して至れり尽くせりだった。
私は、この夢のような日々は揺るがないものだと思っていた。
あの夜、彼と彼の親友の口から、最も残酷な真実を聞くまで。
「迅、葉山の芝居、本当に入り込んでるよな。あいつ、まだ知らねぇだろ。お前がとっくに、あいつが『詐欺師』だって分かってたってさ!」
「あいつが芝居を演じたいのなら、付き合ってやるさ。どうせ、まだ利用価値はある」
――ああ、危うく忘れるところだった。
私はただの詐欺師なの!
それに、駒として使われていた、愚かな詐欺師だった!