古い資料を照合しながら辿ると、松永久秀の名物蒐集は三段構えの戦略的行動に見える。まず私が注目したのは、戦闘や内訌での接収だ。戦国期は
財宝が移転する機会が多く、勝者が名品を抱える例が多かった。次に、政治的な贈答や交換関係。彼は交渉や同盟の一環として茶器を動かし、そうして得た品に由来や物語を添えて自派の
権威とした。
最後に、茶人や文化人との連携がある。私は、松永が当代の茶湯文化に敏感で、茶人を登用したり礼物としての価値を見極めることで、単なる略奪以上の価値を生み出したと考える。こうした関係は、品そのものの価値を高め、後世に伝わる“名物”化へとつながった。資料的裏付けを重ねるほど、その巧妙さが際立つと私は思う。
補足として、文化的価値を維持するための改変や保存行為も蒐集行為の一部だった可能性があり、私はその点も重要視している。