言葉の選び方に注意深く、坂木さんの価値観に触れる質問をいくつか用意したい。
私はまず、作品で繰り返されるモチーフや象徴がどのように生まれたかを
訊ねる。読者は象徴を独自に解釈するが、作者の意図や無意識の導線を聞くことで別の層が見えてくる。次に、登場人物の倫理的ジレンマや行動原理について具体的な場面を挙げながら掘り下げる。どの決断が作者にとって最も難しく、どの人物に最も肩入れしているのかを明かしてもらうと、物語の核が伝わりやすい。
さらに制作過程に関する核心的な質問も重要だ。構想から完成までの時間配分、推敲で捨てたアイデア、外部からのフィードバックを取り入れる基準など、実務的なノウハウを聞くことで他の作り手や熱心な読者にとって有益な情報になる。刊行後の反応については、批評と読者の反響に対する本人の受け止め方を具体的に問い、作り手としての成長や今後のテーマ選びにどうつなげるつもりかを確認する。
最後に、創作の責任や表現の自由についても触れる価値がある。社会的なテーマを扱う際の配慮や自己検閲のライン、あるいは表現の限界をどう考えるかを聞けば、坂木さんの思想的な立ち位置が見えてくると思う。私はそうした深掘りが読者との信頼を生むと感じている。