月光は、いま遠く「絵里、本当に綺麗だ……」
煌びやかなグランドクリスタルのピアノの上で、氷川北斗(ひかわ ほくと)に何度も口づけされながら、深山絵里(みやま えり)は全身の力が抜けていくのを感じていた。
こんなふうにされるなんて、ただでさえ恥ずかしくてたまらないのに――
そんな言葉までかけられて、絵里はつま先まで恥ずかしさが伝わり、思わず身体が強ばる。
「絵里、もっと力を抜いて……もう限界だよ」
北斗が耳元で囁いた。
絵里は顔を赤らめて、そっと視線を逸らす。どうしても彼の顔を正面から見られなかった。
でも、北斗は優しくも強引に、絵里の顔を自分のほうへ向けさせる。
整ったスーツ姿なのに、ふいに見せる強引さと野性味。
狼のような眼差しが、絵里のすべてを奪っていく。
そのとき、彼はドイツ語で……