ページをめくると、
市井の匂いや人々の息づかいが伝わってくる企画だと感じた。まず好印象なのは、題材自体が普遍的でありながら視点の切り口が明確である点だ。編集目線で言えば、企画書にある「日常の積み重ねで見えてくる変化」の提示は強みになる。読み手が毎回小さな驚きを得られる構成、登場人物の微妙な感情の揺れを漫画的なテンポでどう表現するかが鍵になる。導入数ページでキャラクターの核を伝え、読後に余韻を残すコマ割りとコントラストが欲しい。
市場性を考えると、読者層は幅広く取り得るが、連載で伸ばすには「定期的に戻ってくる理由」が必要だ。エピソード型にしつつ長期の心情変化や地域の事情が絡む連続性を織り交ぜると良い。作風の参考例としては、日常の密度で読者を掴んだ『よつばと!』のような安定感と、短編ごとに色が変わるアンソロジー的な魅力を両立させる試みが有効だと考える。企画書には1~3話分の具体的なプロットを挿入して、編集部が連載イメージをつかめるようにしてほしい。
最後に作画と資料性についてひとこと。街の細部(商店の掲示、看板、生活小物)で世界観が決まるので、リファレンスや取材ノートがあると説得力が増す。出自の描き分けや方言、職業描写などで誤解を招かない配慮も必要だ。連載化を念頭に置くなら、短期での打ち切りリスクを軽減するために強いフックと編集側が再利用しやすい設定(簡潔なテーマ、回想で使える過去設定、魅力的なサブキャラ)を用意しておくと採用される確率が上がると感じる。読者の心に残る瞬間を、丁寧に重ねていってほしい。