翻訳やローカライズの現場を想像すると、私が興味深いと思うのは、英語に訳すときの工夫だ。『鋼の錬金術師』を読むと、エドワードの軽口めいた「俺」は製作者の若さと図々しさを示しているが、英訳では単に“I”にされるとその味が消える。そこで訳者は語彙や省略、口語表現(“I’m the guy who…”や“Me? I…”のような前置き)やスラングを用いて、英語の読者にも同じ印象を与えようとする。逆に女性的な一人称「あたし」や「うち」を直訳で表現できないときは、語尾や言い回しで柔らかさや親密さを出したりする。私はこの補完作業が翻訳の面白さと難しさだと思う。