菫色というと、まず思い浮かぶのは野原に咲くスミレの可憐な姿だ。この色の歴史を辿ると、日本では平安時代からすでに「
すみれ色」として親しまれていたことがわかる。『源氏物語』にも登場し、
貴族たちの装束に用いられた優雅な色だった。
西洋ではヴィオレットと呼ばれ、古代ローマ時代から紫の染料として珍重された。ただし天然の紫染料は非常に高価だったため、権力の象徴として用いられることも多かった。日本の菫色はそれより淡く、可憐な印象が強いのが特徴と言えるだろう。
植物としてのスミレは早春に咲くため、春の訪れを告げる色としても愛されてきた。現代ではパステルカラーの一つとして、柔らかな印象を与える色として広く親しまれている。