結末を受け取るとき、僕はまず空白の部分に目が行った。終わり方がはっきりと説明を放棄していることで、物語が読み手に責任を委ねているように感じられた。主人公たちの関係は'
あまい'というタイトルの期待通りに単純なハッピーエンドへ収束せず、むしろ甘さの裏にある齟齬や未処理の感情をそのまま残している。だからこそ、結末は「続く」と解釈する余地を与えているのだと考える。読者がどの要素をより重要視するかで、結末の温度は変わる。
次に、象徴やモチーフを手繰ってみると、終盤に繰り返される小さな行為や台詞が示すのは「選択の積み重ね」だ。劇的な解決は描かれないが、日常の中で少しずつ変わる意思表示が未来をつくるというメッセージが透ける。これは恋愛のみならず自己規定の問題にも結びつき、読者は登場人物のこれからの行動を想像することで物語を完成させることになる。
最後に、個人的には曖昧さを歓迎している。確定した結論がないことで、登場人物たちが現実の人間として手応えを持つ。もし甘さだけを求めるなら生暖かい満足かもしれないが、余韻に浸りながら自分の価値観を物語に当てはめる楽しみが残る。そうした余白があるから、この結末は読後に長く心に留まるのだ。