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ページをめくるたびに心拍が高まり、終盤の連続した展開で思わず息を飲んだ。今回の巻は従来のテンポ感を壊してでも物語を前に進める強い意志が感じられたため、好意的に受け止める読者が多いだろう。描写は簡潔だが情緒を損なわないバランスで、特に対立の描き方が良かった。ある対話シーンでは、一言の噛み合わなさが緊張を生み、キャラクターの距離感を鮮やかに示していた。
一方で、急激な設定の変更を戸惑う向きもあるはずだ。私はその戸惑いに共感するが、物語が大胆に舵を切ったことで新しい地平が見えたのも事実だ。例えば感情の爆発が主要テーマになる瞬間は、『鬼滅の刃』の山場に似た読後感を生んだ部分もあって、感情移入のしやすさが光っていた。結局のところ、評価は好意的と否定的に分かれるだろうが、注目作であることに疑いはないと感じている。
展開の大胆さには敬意を払いたくなる。今回の新巻は、既存の世界観を拡張するためのリスクを厭わず、主要人物の信念を根本から問い直すような仕掛けが多く盛り込まれていたからだ。私はその挑戦的な姿勢を評価したいと思う。
ただし、すべての読者がその路線変更を歓迎するとは限らない。細部の説明や背景補完が追いついていない箇所があるため、情報の受け取り方で混乱を招く場面もある。とはいえ、物語の方向性は明確で、続巻への期待を高める終わり方をしているのは確かだ。読み終えたあとに頭の片隅で反芻される余韻が残る点は、『ハンターハンター』に見られるような余白の美学に近いと感じた。結果として、賛否は分かれるが刺激的で価値のある一冊だと考えている。
読み終えたあと、しばらく場面を反芻してしまった。新巻の急転直下ぶりは単なる驚きを超えて、これまで築かれてきた関係線をいっきに揺さぶる種だったからだ。
個人的には、主人公の決断に納得しつつも心がざわついた。ここ数巻で積み重ねられた伏線が回収される一方で、新しい疑問が巧妙に差し込まれていて、読者を二重にも三重にも引っかける構成になっている。いくつかのシーンは感情の起伏を強く描きすぎている気もするが、そのぶんカタルシスは大きい。構成のうまさは『鋼の錬金術師』の大きな展開を読んだときの感覚と少し被るところがあって、過去の積み重ねが一気に花開く喜びがある。
最も刺さったのは、ある脇役の視点で提示される真実が、物語全体の価値観をゆらす瞬間だ。読後は単純に面白かった、という以上に、次巻でどう着地させるのかが気になって夜も寝られない──とは言えないが、確実に続きを待ち遠しく思っている自分がいる。