短編群から入ると、
諸星大二郎の語り口とテーマの核心をつかみやすい。僕はまず初期の短編や雑誌掲載作を順に追うことを勧める。そこには民俗学的な素材、奇妙さを通じた人間観察、そして作画とコマ割りで示される不穏な余白が凝縮されていて、後の長編へつながる種が散りばめられているからだ。
次に、制作年代の流れに沿って中期の連作を読むと変化が見えて面白い。具体的には短編→中篇→長篇という成長軸を意識することで、テーマの深化やモチーフの反復が読み取れる。連載当時の雑誌順に目を通すと、作品同士の参照関係や作家の試行錯誤がよくわかる。
終盤は長篇群と近年の短編集をまとめて読んでほしい。異なる時代の作品を比べることで、神話再解釈や恐怖表現の変遷が鮮明になる。僕はこうした順で読んだおかげで、諸星作品の“根っこ”と“枝葉”を両方楽しめた。