スペインの街角で
闘牛場を見かけたときの印象が、今も頭に残っている。歴史や地域文化の重みを実感する一方で、動物の扱いに関する違和感が拭えなかった。私が問題だと感じる核心は、苦痛と死が観賞の中心に据えられている点だ。闘牛では牛が身体的な苦痛と心理的ストレスを受け、しばしば出血や疲労による長い苦しみを経て命を落とす。獣医や行動学の研究は、痛みの兆候やコルチゾール値の上昇などを通じて、その苦痛を裏付けている。
一方で、支持派は伝統・芸術性・地域経済の維持を主張する。著名な文学作品『The Sun Also Rises』のように闘牛が文化表現として取り上げられることも多く、完全に否定することに抵抗感を示す人々がいる。だが動物福祉の観点からは、文化的価値がある行為でも動物に不必要な苦痛を与える理由にはならないと考えるのが一般的だ。
だから私は、同時に成り立つ解決策を模索するべきだと思う。例えば致命性を排した形のイベント、または闘牛に代わる伝統芸能の振興、動物の苦痛を最小化する法的規制や監視制度の導入などがある。文化保存と動物福祉のどちらも無視しないバランスを探ることが、現代社会における責任ある対応だと感じている。