償えない君へ
23歳まで一度も恋愛したことがない神田雪子は、周囲に「落とせにくい女」と評判された女だった。
8歳年上の白野裕司と出会うまでは。
彼はとにかくエネルギッシュで、しつこく付きまとってくるタイプだった。
交際一周年の記念日、彼に口説かれるままに肉体関係を持って以来、車中や料亭の個室はおろか、林の中に至るまで、彼女は毎回抵抗できずに従ってしまった。
彼が自分に夢中だとばかり思っていたが、ある日彼と友人の会話を偶然聞いてしまった。
「身代わりもそろそろ25歳か。そろそろ別れる時だな」
その時初めて、自分が彼の亡き初恋の身代わりでしかなかったと知った。
彼女は去ることを決め、再び夢を追い始めた。
だが、裕司が逆上して世界中を探し回るようになるとは、思いもよらなかった。