秋が深まり、夕日は戻らない
妹・苅野菜々美(かりの ななみ)への肺移植を拒んだ私を、両親はL市一の御曹司と呼ばれる男、岩田真佑(いわた しんすけ)のもとへ送り込んだ。
冷徹で人を寄せ付けず、心に忘れられない憧れの女性を抱いていると噂される彼。
誰もが私の悲惨な結末を予想していたが、意外にも彼は私を掌中の珠のように大切にしてくれた。
結婚して三年、彼は時と場所を選ばず、私を求め続けた。
トイレにまでついてきて、洗面台に私を押しつけることもあった。
避妊はしていなかったが、一向に子供を授かる気配はなかった。
自分が妊娠したと思い込み、期待に胸を膨らませて病院で検査を受けたあの日。私は偶然、真佑と医師の会話を耳にしてしまった。
「岩田様、三年前に奥様の片肺をこっそり苅野様に移植させ、今度は彼女に生まれつき不妊だと嘘をつけと言うのですか。自分を愛している女性に、そこまでひどいことをしてもよいのでしょうか」
「仕方ないだろう。菜々美は肺が弱い。子供を産めなければ、嫁ぎ先で肩身の狭い思いをすることになる。彼女に適合する肺は、奈々子のものしかなかったんだ」
聞き慣れた男の声は、凍りつくほど冷たく、まるで見知らぬ他人のようだ。私が信じて疑わなかった愛も救いも、すべて巧妙に仕組まれたペテンに過ぎなかったのだ。
それなら、私は消えるだけだ。