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白髪になる日を待てない

白髪になる日を待てない

By:  藤原美咲Completed
Language: Japanese
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結婚して5年目石田啓太(いしだ けいた)は浮気をした。 石田奈緒(いしだ なお)に隠れて外で愛人を囲っていた。しかし奈緒は、それを知っても泣き喚いたりせず、翌日にはその愛人をうまく誘導して港市のお金持ちのもとに自ら行かせた。 それ以降、啓太は何事もなかったかのように以前と変わらず優しく気遣う良き夫を演じ続けた。 奈緒はそれが一時的な出来事だと思っていた。 しかし一年後。 実家の会社が倒産。 父は莫大な借金を抱えて飛び降り自殺し、母は債権者に辱められ命を落とし、弟は交通事故で植物状態に。 奈緒もあまりのショックに倒れ、寝込むこととなった。 そして死の直前、啓太は顔を歪めてこう言い放った。 「お前のせいで、安子はベッドの上であのジジイに惨たらしく殺されたんだ。全身傷だらけで死んでいった。こんな日が来ると想像できなかったのか?奈緒、これは報いだ!」 すべては啓太の復讐だった。 ベッドに横たわる奈緒は、血の気の引いた顔で命を賭けて愛した男を呆然と見つめるとそのまま息絶えた。

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Chapter 1

第1話

結婚して5年目、石田啓太(いしだ けいた)は浮気をした。

石田奈緒(いしだ なお)に隠れて外で愛人を囲っていた。しかし奈緒はそれを知っても泣き喚いたりせず、翌日にはその愛人をうまく誘導して、港市のお金持ちのもとに自ら行かせた。

それ以降、啓太は何事もなかったかのように以前と変わらず優しく気遣う良き夫を演じ続けた。

奈緒はそれが一時的な出来事だと思っていた。

しかし一年後。

実家の会社が倒産。

父は莫大な借金を抱えて飛び降り自殺し、母は債権者に辱められ命を落とし、弟は交通事故で植物人間に。

奈緒もあまりのショックに倒れ、寝込むこととなった。

そして死の直前、啓太は顔を歪めてこう言い放った。

「お前のせいで、安子はベッドの上であのジジイに惨たらしく殺されたんだ。全身傷だらけで死んでいった。こんな日が来ると想像できなかったのか?奈緒、これは報いだ!」

すべては、啓太の復讐だった。

ベッドに横たわる奈緒は血の気の引いた顔で命を賭けて愛した男を呆然と見つめるとそのまま息絶えた。

再び目を開けたとき彼女は書斎の前に立っていた。

息が乱れ、胸の中の動揺と悲しみがまだ収まらないまま部屋の中から声が聞こえてきた。

啓太が電話をしていた。

「助かるよ。郊外のあの別荘、ひとまず安子の名義にしてくれ。この借りは忘れない。くれぐれも奈緒にはバレないようにな」

聞き覚えのあるセリフ。その瞬間、奈緒ははっきりと悟った。

これは前世のあの瞬間だ。彼が愛人を囲っていることを偶然知ってしまったあの瞬間。

我に返ったとき、部屋の中からさらに聞こえてきた。

「安子は本当に特別なんだ。彼女と一緒にいると、心が軽くなるし、刺激的でさ。奈緒みたいにただ息が詰まって、退屈で面白くもない女じゃない。ちょっと休憩したいだけだよ。飽きたらまた、奈緒を愛せばいい」

またその言葉を聞いて心臓はドクンと痛んだ。

奈緒は拳を強く握りしめ、死の直前に彼が言い放った言葉を思い出して目が潤んだ。

気持ちを切り替えて、リビングのソファに戻った。

やがて啓太が部屋から出てきて、奈緒を見て足を止めた。

「帰ってたのか?」

「さっき帰ってきたとこ」奈緒は感情を抑え答えた。

外出しているはずの奈緒が突然戻ってきたことに、啓太の顔からは笑みが消え、代わりに気まずそうな気配を漂わせた。「ちょっとトラブルがあって、会社に戻らないと」

前世と同じ言い訳だった。

奈緒は数秒じっと彼を見つめた後、うなずいた。「うん、行ってらっしゃい」

もうこの人生では無理にしがみつくつもりはなかった。

啓太は一晩帰らなかった。

奈緒はその夜黙って夜明けまで座り続け、朝日が差し込んできた頃、乾いた目をこすって立ち上がると朝食をとってから家を出た。

まず向かったのは法律事務所。そしてその足で、石田グループ本社へ。

彼のオフィスは最上階。エレベーターを降りたフロアには誰もいなかったが、オフィスの中からはあられもない喘ぎ声が漏れていた。

「んっ……社長、もうダメ……」

「社長だと?」啓太が不機嫌そうに言い、さらに腰を強く動かすと女はたまらず甘い声を漏らした。

低くかすれた声で彼は優しく、しかし命令するように囁いた。

「安子、どうしても俺をそう呼びたいのか?ほんとは、何て呼ぶべきか分かってるよな?」

女は彼の手を握りしめ、天にも昇る気持ちで言った。

「ご、ごめんなさい……お兄ちゃん、安子、言うこと聞くから……」

「そうだ、いい子だ」

奈緒は爪が掌の肉に食い込むほど強く握りしめた。真実はとうの昔に知ったはずなのに、心は砕るように痛かった。

しばらくして、彼女は静かにドアをノックした。

中に入ると、啓太はデスクに座り、満ち足りた表情で言った。「どうしたんだ?」

「サインが必要な書類があって」

奈緒はバッグから離婚届を取り出し、最後の署名ページを開いてデスク越しに差し出した。

「何の書類?」

啓太がそれを受け取り、中を覗き込もうとした瞬間机の下から、くぐもった声が漏れた。

彼はびくりと体を震わせて後ろにのけぞり、ごまかすように咳をして体勢を整えた。

奈緒は何も聞こえなかったふりをして、爪をバッグに押しつけて小さな痕をつけながら、喉の苦味を押し殺して言った。

「ただの不動産名義変更の契約書だよ」

それを聞いた啓太は疑うことなく署名した。「こんなこと、わざわざ持ってこなくてもよかったのに。無理しないでくれよ」

それは気遣いからか?それとも、彼女にバレるのを恐れて?

奈緒の口元には皮肉な笑みが浮かんだ。「大丈夫、これが最後だから。じゃあ、私はもう行くね」

オフィスを出た彼女はすぐに電話をかけた。「石田グループの20%の株式、安く譲ってもいいわ」

「いつ契約できる?」

「一ヶ月後」

その頃には離婚も成立している。この命を削って築き上げた会社も一緒に手放す。

啓太、前世であなたは私が木村安子(きむら やすこ)を誘導したことを恨んだ。

今世ではあなたの望むとおりにしてあげるわ。

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