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百回も拒まれた僕は火葬場へ

百回も拒まれた僕は火葬場へ

母が僕の治療費の支払いを百回も拒んだあの日、骨肉腫の診断書を握りしめた僕は、一人、火葬場へと足を運んだ。 「すみません……前もって、火葬の予約をしたいのですが」 そう言うのが、精一杯だった。 三十分後、両親が弟を連れて車で駆けつけてきた。 検視官である父は、入ってくるなり、いきなり僕の頬を殴った。 「海鳴と張り合うために、死んだふりまでするつもりか?」 病院の院長である母は、僕の手から診断書を奪い取ると、一瞬の躊躇もなく、ビリビリと引き裂いた。 「私の名義を勝手に使って診断書を偽造するなんて……いい加減にしなさい!」 弟は泣きながら両親にすがりつく。 「お兄さんのせいじゃないよ……僕、もう遊園地なんて行かないから、何もいらないから……お父さんとお母さんを怒らせないで……」 僕はもう、彼らには背を向けた。疼く胸を押さえながら、ただ、火葬場の職員に懇願するしかなかった。 「お願いです……火葬して、遺骨は川に撒いてください。もう……この世界に、僕の家族なんていません」
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あの世に行っても

あの世に行っても

付き合って十年目、中尾司(なかお つかさ)は宇野伊織(うの いおり)を諦め、北村真理子(きたむら まりこ)と結婚することにした。 披露宴の席で、司はもともとアルコールアレルギーの伊織に、強い酒を無理やり飲ませ、真理子を笑わせようとした。 伊織が血を吐いて気を失うまで、司は慌てて両手で真理子の目を覆った。 「血なんて汚いから、真理子は見ちゃだめだ。 また道具を使うなんて、今度はどんな芝居を打つつもりだ?」 彼は、すべてを忘れていた。 十年もの間、伊織がどんなに遅くても家で温かい食事を待っていてくれたことを。 海辺で、少女と初めて愛を確かめ合ったあの日、自分が「ずっとお前の支えになる」と誓ったことを。 一ヶ月後、小さな骨壺が司の前に置かれた。 中に納められていたのは、若き日に深く愛した、初恋のような存在だった。 司の目が大きく見開かれ、後悔が押し寄せてきた。 「これは……宇野伊織だと?」
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いつか来る、永遠の別れ

いつか来る、永遠の別れ

5年の刑務所暮らしを終えて、元カレ・松井純一(まつい じゅんいち)に再会したのは墓地だった。 ボロボロの体を引きずりながら、私はいくつか候補のお墓を選んでいた。 ちょうどその時、純一は婚約者を連れて、彼の父親のお墓参りに来ていた。 「紬、5年も経つのに、まだこんな風に偶然を装って俺に会おうとするのか?残念だけど、俺はもうお前のことなんて好きじゃない」 私は唖然とした。でも、すれ違おうとした瞬間、純一に強く手首を掴まれた。 彼の薄い唇から、氷のように冷たい声がこぼれた。 「お前にできるのは、そんな安っぽい駆け引きくらいだな」
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来世では、二度と出会わぬように

来世では、二度と出会わぬように

肺がんの末期。私、白石一花(しらいし いちか)は最後となった誕生日に息を引き取った。 厳冬のさなか、大きな牡丹雪が空からひらひらと舞い落ちる。私は冬が好きだ。そして、この季節に永眠できることを、どこか幸運だとも思っている。 人生の最期の瞬間。頭に降り積もる雪を見つめながら、私はようやく、佐藤時安(さとう ときやす)と「白髪を共にする」という願いを叶えたような気がした。 私の方へと駆け寄ってくる時安を視界に捉え、私は微かに唇を動かした。「さようなら」 来世では、あなたに出会わないように。そして、あなたを愛したりしないように。
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死んだ私に愛を語っても意味はない

死んだ私に愛を語っても意味はない

私が1週間行方不明になった後で、夫の須賀周作(すが しゅうさく)はまだ私のことがわがままを言っていると思い、私が戻って来て謝るのを待っている。 「友子(ともこ)、早く現れないと、後悔するぞ!」 でも、待っても、私の返事は永遠に来なかった。彼は、私がとっくに死んでいたことを知らない。 彼が江崎夕子(えざき ゆうこ)と心を打ち明け合っていたまさにその時―― 私はトラックに衝突され、車ごと海上橋から海に転落し、即死した……
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母がくれた、やさしい最後の言葉

母がくれた、やさしい最後の言葉

40歳のとき、誘拐された娘・中山結衣(なかやま ゆい)を助けようとして、私は片足を折られ、頭を激しく殴られた。その一件で、私は生涯消えることのない重い障害を負ってしまい、心も体もあの日から元の自分には戻れなくなった。 本当ならまだ子どものままでいてよかった結衣なのに、あの日を境に、大人になることを強いられた。仕事を3つも掛け持ちしながら、なけなしのお金で私を病院に通わせてくれた。 やがて結衣も結婚し、子供・中山涼太(なかやま りょうた)が生まれた。しかし、涼太は先天性の心臓病を患っていたのだった。 結衣と彼女の夫・中山洋介(なかやま ようすけ)の肩に家庭の負担が全てのしかかる。 そしてある日、私が懲りずに涼太のおやつを勝手に食べて、洗ったばかりのソファを汚してしまったときのことだった。 結衣のずっと溜め込んできた感情が爆発した。 「どうしてまだ生きてるの!なんで私を助けたときに死んでくれなかったのよ!」 自分を抑えきれなくなった結衣は、お湯を張ったお風呂に私を突き飛ばす。 しかし、私のこの人生が終わりを告げようとした時、結衣はっと我に返ったらしく、慌てて私を助け出してくれた。 結衣はその場にへたり込み、声をあげて泣きじゃくった。 「もう無理……私、本当に、もう無理だよ……」 私はまだなにが起きたのかよく分かっていなかったので、ただ、ぎこちなく手を伸ばし、結衣の涙を拭うことしかできなかった。 お湯でふやけてしまった手の中のクッキーを、そっと彼女の口元へ差し出す。 結衣がまだ小さかった頃あやしたみたいに、やさしく声をかけた。 「結衣。ほら、もう泣かないの。これを食べたら元気になるからね」
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命を賭けて返す

命を賭けて返す

二年前、母に彼氏と別れさせられて、妹の代わりに彼女の視力障害者の婚約者と結婚するように言われた。 二年後、視力障害者の夫が突然視力を回復したが、母は再び私に彼を妹に返すよう求めた。 父は私を睨みつけ、「お前は忘れるな、大司は本来圭織の婚約者だ。お前は大司の奥さんになる資格がない」と言った。 ああ、どうせ私は死ぬのだから、大司の奥さんはなりたい人に任せればいい! 私は死んだ後、彼らが一人一人報いを受けるのを見ている!
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執念、晩秋に散る

執念、晩秋に散る

庄司海青(しょうじかいせい)が愛人とデートしていたその夜、桑原秋帆(くわはらあきほ)は非業の死を遂げた。 閻魔大王は彼女に七日間の還魂を許し、未練を果たすよう言い渡した。 彼女のただ一つの願い。 それは―― 海青と離婚することで過去を清算して、今後一切、死んでも生きても再び顔を合わせないことだった。
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最期に届いた家族の愛

最期に届いた家族の愛

両親の江口誠一(えぐち せいいち)と江口美蘭(えぐち みらん)は私を救うために、拉致犯の言い分をすべて受け入れて、廃工場で自ら火を放ち、身を投じた。 二人は自分の命を差し出し、私の命をつないだ。 けれど両親が死んだあと、兄の江口真琴(えぐち まこと)は私を激しく憎み、ある夜に交通事故を起こして、二度と目が見えなくなった。 真琴を助けたくて、私――江口夕乃(えぐち ゆうの)は一日十人の男に身を任せた。 次々に現れる中年男の歪んだ趣味を飲み込み、屈辱を噛み殺しながら生き延び、ようやく兄の角膜移植の費用をかき集めた。 ところが家に戻ると、目にしたのは――すでに死んだはずの両親と、植物状態のはずの兄が、私と瓜二つの江口朔菜(えぐち さくな)の誕生日を祝っている光景だった。 ケーキを切っていた父が、ふと手を止める。 「真琴、朔菜も戻ってきたんだ。そろそろ夕乃に本当のことを話そう。もう、あんな連中に関わらせるのはやめよう」 真琴は朔菜を抱き寄せ、甘やかな顔で笑った。その目は、失明者のものとは思えないほど明るかった。 「彼女に知らせる必要はあるか?もし夕乃がどうしても遊園地へ行くと強情を張らなければ、朔菜が人さらいに連れ去られることはなかった。今こうして見つかったのは、奇跡みたいな幸運だ」
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私は窒息死させられ、三人の兄が狂気に走る

私は窒息死させられ、三人の兄が狂気に走る

義妹が私に罪を押しつけた――彼女がアレルギーを起こしたのは、私のせいだと。 すると三人の兄たちは、私を狭く息苦しいアナグラに押し込み、扉を鎖で厳重に閉ざした。 「お願い、ここから出して!」 私は扉を必死に叩き、震える声で叫び続けた。 けれど、ビジネス界のエリートである長兄は、立ち去る前に冷たい視線を投げつけ、鋭く言い放った。 「早苗をいじめただけでも許せないのに、彼女が海鮮アレルギーだと知りながら食べさせただと?お前、わざとだろう。反省するまで、そこでじっくり悔やむんだな」 新進気鋭の歌王である次兄と、天才画家として名を馳せる三兄は、さらに冷ややかに鼻で笑った。 「こんな卑怯者がまだ弁解するつもりか。自分の所業を、ここでしっかり思い知るんだな」 そう言い残し、三人は震える義妹を抱きかかえ、病院へと急いでいった。 時間が経つにつれ、アナグラの中の酸素はじわじわと薄れ、呼吸するたび胸が締め付けられるような苦しさが増していった。そして、ついに――私はそこで息絶えた。 三日後、病院から戻った兄たちはようやく私の存在を思い出した。 だが、もう遅かった。狭いアナグラの中で酸素を奪われ、私はすでに冷たい亡骸となっていたのだから。
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