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第334話

Author: リンフェイ
内海唯花はハハハと笑って、牧野明凛に電話をかけた。

牧野明凛は電話の向こうで笑って言った。「唯花、あなた達夫婦、嵐が去ってようやく晴れ間が見えてきたのね。結城さんったら私まで誘って朝食をご馳走してくれるなんて、安心したわ。私本当に彼が私のことを誤解しているんじゃないかってひやひやしてたんだから」

金城琉生は彼女の従弟だ。しかし、彼女も別に親友と金城琉生がカップルになってほしいなんて思ってはいない。金城家は彼女の親友には合わないと思っていたからだ。

彼女のおばは普段から内海唯花にとても良くしているから安心だろ、などと思わないほうがいい。もしおばが息子の琉生が内海唯花を好きだと知れば、すぐにでも手のひらを返したかのように態度が変わってしまうはずだ。

彼女のおばのような義母がいたら、親友は幸せに日々暮らしていくことはできないだろう。だから、牧野明凛は従弟のために恋のキューピットになろうとは思っていなかった。

彼女は従弟と二人きりになった時に、きちんと金城琉生に話すつもりだった。そのような考えは捨てて、今後は彼女たちの店にはあまり来ないようにと。もし彼がいるのを結城理仁に見られたら、また彼に誤解されてしまう。

結婚している人は、男女に関わらず、人付き合いにおいてはやはり、結婚相手の気持ちも考えるべきだ。相手に対して不貞を働いていないとしても、結婚相手が異性と一緒にいるのを見たら、正直のところいい気はしないだろう。

結婚相手以外の人間としっかり距離を保っていれば、何も心配するようなことはないのだ。

「今すぐ出るわ」

結城理仁の面子を考えて、牧野明凛は商売すらも後回しにするようだ。

「そうだ、どこに食べに行くの?住所を送ってよ、私電動バイクで直接そこに行くから」

内海唯花は携帯を耳から離すと、結城理仁に尋ねた。「結城さん、どこに食べに行く?」

「スカイロイヤルホテルの一階にあるビュッフェに行こう。あそこの朝食は豊富だし、いろんな国の料理が味わえるからな」

内海唯花は親友に「スカイロイヤルホテルの一階にあるビュッフェだって」と伝えた。

「わかった、今から出るわ」

親友との電話が終わると、内海唯花は姉に連絡した。姉がもう起きているのをわかっていて、彼女は結城理仁に言った。「結城さん、お姉ちゃんを迎えに行きましょう」

結城理仁はそれに異論はなかった。

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