Masuk理仁は自分にとても優しく、一生でも使いきれないお金を稼いでいたとしても、唯花はやはり、自分で稼いだお金を使うと譲らない。自分で稼いだお金を使うのはとても気分がよく、心理的な負担がないと言うのだ。理仁は自分の財産全てを彼女に差し出したが、唯花がそれを使うことはほとんどなかった。「私は大丈夫、まだ若いんだからとっても健康で元気満々よ。昨日の夜とても早く寝たから、今はすっごく調子がいいの」そう言いながら、唯花は座って笑った。「そういえば暫くあなたに愛のこもった朝食を作っていなかったわね。今日は早く起きたことだし、あなたに作るわ」理仁も笑った。「俺たちがまだ結婚したばかりの頃の普通の夫婦生活が懐かしく突然思ったよ。君は毎日朝起きると、家で朝食を作ったり、外で何か買ってきてくれたりしたよね。俺は初めて外で買ったのを朝食として食べたぞ」「私も懐かしいな。ねえ、だったら、今日はフラワーガーデンのほうに帰って暫くあっちで過ごさない?」「君が決めていいよ」理仁は見事な溺愛っぷりでそう返事をした。二人の家庭では全て唯花に決定権がある。「先にお風呂に入って、ちょっとしたら下に行って朝食を作るわね」理仁は言った。「もうキッチンのほうが朝食を用意しているから、週末にしようか。週末はどちらも休みだから、愛のこもった朝食を作ってくれ」「週末は過ぎたなかりで、また数日しないと週末は来ないでしょ。いえ、二日後にはA市に行かなくちゃ。二日早めに行ってその分長く滞在しよう、芽衣ちゃんに会いたいわ」理仁は少し考えて言った。「それもいいよ」そして唯花はお風呂に行った。彼女が浴室から出てきた時には、理仁はすでに着替えを済ませ、ドレッサーの椅子に座って唯花を待っていた。唯花が髪も洗ったのを見て、彼はすぐにドライヤーを持ってきて注意した。「朝から髪を洗うなんて」「さっきうっかり髪が濡れちゃったから、いっそ洗っちゃおうと思ったの」理仁は唯花に近づいて引っ張り、ドレッサーの前に座らせて髪を乾かしてあげた。唯花は鏡越しに理仁を見つめた。「理仁」「うん」「あなた自ら私の髪を乾かしてくれるってみんなが知ったら、驚くかしら?あなたって世間の目では偉そうに上に君臨する結城家の御曹司よ」理仁は笑って言った。「誰にどう思われても構わないさ。俺は
唯花が目を覚ました時にはすでに翌日の朝になっていた。彼女は目を開けて、自分がベッドに横になっているのを見て、ぼんやりとしていた。車の中にいたのではないかと考えていた。一体どれだけ寝ていたのだろう?横を向くと、隣に見慣れた人の姿があった。彼女は横向きに姿勢を変えて、静かに理仁を見つめていた。見ているうちに、思わず手を伸ばして彼の顔を触った。こんなに素敵な男性が自分の夫なのだ。その考えが唯花の心を甘く満たした。近寄って彼の顔にキスをしようとした時、理仁が目を開けた。目の前に彼女が迫っているのに気づき、何をされるのか予想して、すぐにまた目を閉じた。唯花は小さな声で笑った。「起きてるでしょ」「いいや、まだ夢を見ている。夢の中で妻が俺にキスをしようとしているんだ。キスをもらってから起きるとしよう」その言葉に唯花はぶはっと笑った。「話しているのに、まだ寝てるって言い張る気?」「これは寝言だ」仲良い夫婦である今は、キスをするのが彼らにとって一番好きな日常のスキンシップだった。唯花も恥ずかしがることはなく、彼の体に覆いかぶさり、彼の唇に口づけをした。理仁は唯花の頭を押さえてもっと深いキスをしようとしたが、彼女のほうが唇の位置をずらして、理仁の顔に細かくキスの雨を降らせた。「そろそろ起きていいわよ」理仁は目を開けて、少し不満そうにしていた。彼は唯花の赤い唇をツンツンと突っつき、言った。「キスをされるとわかっていれば、もっと寝ていたのにな。君に服をはぎ取られてから起きればよかった」唯花は彼の体から離れ、手を伸ばして優しく彼の顔をつねった。「寝ている時に、服を脱がしたりしないわよ。あなたみたいに、私が寝ているのに……」理仁は唯花を懐に抱きしめ、小さな声で笑った。「俺だってたまにしかしないよ」「今何時?私何時間寝てたの?」理仁は携帯を手にとり、時間を確認して言った。「まだ早いよ、七時にもなってない」「外はもう明るいわね」「今の時期は、朝六時過ぎでももう明るくなってるよ。あと一、二か月したら、日が短くなるね。ここ暫くの間、あまりいろいろ走り回ったらダメだぞ。しっかり休まないと。あんなに小さな陽君だって、君がいつも眠そうだって言っていたぞ。つまりちゃんと休んでいないからだ。睡眠時間が減ってるんだ。昨日の
「まだよ」「後で一緒に食べようよ、私がご馳走するから」唯月は笑った。「いいわよ」明凛が近寄ってきて微笑んで言った。「唯月さん、やっと帰ってきたんですね。陽ちゃんったら毎日ずっとぶつぶつうるさかったんですよ。私も唯花も耳にタコができそうでした」陽は当然の如くこう言った。「だって、おかあさんに会いたかったんだもん」母親に会いたくて、まだかまだかとつぶやき続けてはいけないものか?明凛は笑って彼の顔をつねった。店はこの時まだ忙しかったので、三人はそれ以上おしゃべりをしなかった。高校生たちの帰宅時間が過ぎ、だんだん静かになっていった。唯花は姉に温かいお茶を淹れて持って来ると尋ねた。「伯母様はおうちに帰った?」「ええ、伯母様からご飯に誘われたんだけど、陽のことがあるから、行かなかったの」唯花は何か言いたそうにしていたが、我慢できずにあくびをした。陽は叔母があくびをするのを見て、母親に言った。「おばちゃんはね、毎日ぼくが寝ても寝てないから、いつもあくびをするんだよ」唯月は心配そうに言った。「唯花、体に注意しなさいよ。体が一番大切なんだからね」「お姉ちゃん、心配しないで。最近は睡眠の質がどうも悪くて、昼間はいつもあくびが出るの。昼もあまり寝たくなくて、一度横になったら一生起きなくなりそうだもの」明凛が話を続けた。「お店は私が見るから、こっちにまで気を使わなくていいって言ったでしょ。私が疲れるんじゃないかって心配するけど、私はか弱いお姫様ですか?家では悟からすっごく大事にされて、何もさせてもらえないしさ。自分でお茶を淹れるのだって、火傷したらダメだからってさせてくれないのよ。本屋に来た時だけ、やっと一息つけるの。それに、悟も手伝いに人を手配してくれているし」「私だってたまに様子を見に来る程度よ。あなたは妊娠しているんだから、私も心配なの」唯花は心配されながらも、同じように親友のことを心配していた。唯月は明凛のお腹を見て微笑んで言った。「今はもう妊婦さんなのがわかるわね」明凛も下を向いて自分のお腹を見た。「わかりますか?自分ではまだそんな感じしないんですけど。ただちょっとぷっくりしてきたかなって感じで」「経験者だし、一目で妊婦だってわかるのよ。あと二か月もしたらお腹が出てくるわ。それから暫くしたら、まるでスイカ
「私たちの教育がダメだったの。あなたに正しい考えを植え付けるのに失敗して、歪んだ考えを持つようにさせてしまった。お母さんにも責任があるわ」「お母さん、ごめんなさい、本当に、悪かったわ。私が間違ってた」夕菜も決して馬鹿ではない。父親がここまで冷たくどうするか選べと言ったのなら、絶対に理仁のほうを選ぶことなどできない。自分の全てを失うわけにはいかない。結城理仁という人物は、彼女の一生でただ通り過ぎるだけの存在だ。彼にちょっと寄り道させたくても、留めておくことは不可能だ。沙織はため息をついた。「お父さんもお母さんも、ただ口先だけで間違いを認めるのなんて聞きたくないわ。実際にあなたの行動で証明してもらわないとね。夕菜、これ以上私たちをがっかりさせないでちょうだい。お母さんは二階に行くから、あなたは一人で静かに反省なさい」そう言い終わると、沙織は上にあがっていった。残された夕菜はソファに座り、傷ついて涙を流したり、怒りと恨みに憤慨したりしていた。沙織は娘のことをよく理解していて、すぐには娘が気持ちを切り替えられないとわかっていた。娘には考える時間を少し与える必要がある。もし、結局理仁を諦められないなら、もう救いようがない。辻家のこの騒動など、唯花は知る由もなかった。唯花は理仁に任せておけば、満足のいく答えを彼がくれると信じている。琴ヶ丘で週末を過ごした。そして月曜日。また新たな一週間の始まりだ。市内に戻ると、それぞれ仕事に、幼稚園に行った。唯月は伯母の詩乃に言われ、琴ヶ丘から戻ってきてから、二軒の店を人に任せて、陽は妹に任せてしまった。そして、詩乃と一緒に柏浜に向かった。今月末、理仁と唯花は音濱岳に悠と芽衣の双子の百日祝いに行く予定がある。だから、唯月も一週間しかいられなかった。一週間が過ぎ、唯月と詩乃は柏浜から戻ってきた。唯月は詩乃と一緒に神崎家に行くことはなく、息子が妹の本屋にいると聞いて直接店に向かった。夕日が西の空に傾き、空がまるで炎のように真っ赤に染まった。この時間帯、本屋はとても忙しかった。唯月が中に入ると、妹と明凛がいつもと同じく、一人が客の本を探し、もう一人がレジを担当していた。陽はこの時、子供用の絵本を見ていた。隅の方に座って静かに自分の本をめくっていた。カバンも近くに置
沙織は夫を追いかけて家から出てきた。豊は車に乗る前に、妻にひとこと残していった。「しっかりお前の娘を説得してくれよ。あいつがまだ不倫しようという考えを捨てず汚名を背負って生きていくか、今のままでいるか、どっちかだ。しっかり考え抜いて答えが出たら私に教えろ。もし、まだ悩むようで決められないなら絶対に連絡してくるな。私は娘などいないことにして生きていくからな」沙織は黙っていた。豊は運転手に言って車を出させた。すると、あっという間に彼は家から遠ざかっていった。沙織はどうしようもなく、家に戻ると、娘がソファでしくしくと泣いているのを見て、心が締め付けられた。沙織は夕菜に近づいて、彼女の頭をコツンとつつき、怒りの混じった声で言った。「夕菜、小さい頃から、私たちがしっかり教育してきたでしょ。どうしてこんな馬鹿な事をしたの?星城の結城家の理仁さんね。確かに彼はとっても優秀な方だわ。いくらそうだったとしても、彼にはもう奥さんがいるのよ。それなのにあなたは彼を追いかけ回して、奥さんにふざけた写真を送りつけた。つまり、お二人の家庭を壊そうとした。それに自分は彼の不倫相手になっていいと思ってるのね。夕菜、あなたはとっても素敵な子よ。辻家で育ち、こんなに良い条件に恵まれているあなたと比べられる人なんてそうそういないの。お母さんもあなたがとってもプライドが高いから、普通の男では満足できないって知ってる。もし、結城社長が独身なら、思う存分口説きにいけばいいわ、私たちだって応援するもの。だけどね、彼は既婚者なの。だからもう彼への気持ちに蓋をして忘れてしまいなさい。お母さんとお父さんはずっと仲が良いのよ。一番ああいう不倫をするような人間が大っ嫌いなの。だからあなたにそうなってほしくないわ。もし、あなたが誰かの奥さんだったとしたら、夫の不倫相手をどう思う?殺してやりたいほど憎くない?そんな人間にあなた自らなろうとしているのよ」夕菜は泣きながら言った。「お母さん、だって、私理仁さんのことが好きなんだもん、どうすればいいの?初めて会った瞬間に、夢中になったの」「もう彼のことを考えるのをやめてしまいなさい。思い出さなければ、時間が経って忘れられるから。夕菜、私たちの言うことを聞いて。私たち辻家の人間は正々堂々と正しい道を歩む一族よ。あんな世間に顔向けできない
夕菜は父親に叩かれた頬を手で覆い、信じられない様子で父親を見つめた。父親にぶたれた!夕菜は両親にとって唯一の子供だ。小さい頃から二人に大切に育てられてきた。彼女の才能を伸ばすために父親が彼女に厳しく当たることはあったが、今まで手をあげたことはなかった。それなのに、父親は娘に好きな男ができたぐらいで、平手打ちを喰らわせたのだ。夕菜は悲しくなり、涙を流した。この時、沙織がハッとして、娘が可哀想になり立ち上がると、娘が頬を覆う手を引いて夫に言った。「言葉で言い聞かせればいいでしょう。どうして夕菜に手をあげるの」「今私がお前を殴って、目を覚まさせることができないなら、今後は二度と会社に出入りするなよ。会社に大きなトラブルをもたらすような人間に、任せるわけにはいかない。たとえ私の唯一人の子供であってもだ!夕菜、もう一度言うぞ、彼のことは諦めなさい。社長はお前のことをまともに見たことすらないんだぞ。それなのにお前ときたら、恥も捨てて自ら下賤な不倫相手になろうとするとは。またそんなことをしようとするなら私はお前とは親子関係を切る。お前のような娘など生まなかったことにして生きていくからな!私の娘は品行方正で、きちんとした価値観を持ち、モラルのある人間でなければならない。お前のように真実の愛だとかいう旗を掲げながら、実は他人の家庭を壊そうとしているような、歪んだ考えを持つ人間など、私の娘ではない!うちのビジネスは幅広い。もし、娘が頼れない人間なら、辻一族の誰かに譲ろう。私には姪や甥はたくさんいるからな。必ず一人は辻グループを継ぐ力がある奴がいるさ。私も別に会社の後継者はお前でなければならないわけじゃない。お前のあの身代わり野郎だが、さっさと縁を切ってしまえ。もし、お前がまだあの男と一緒に、親しげな写真などを撮って社長夫人に送ろうとするなら、お前のカードは凍結させる。明日会社でクビにしてやる!」豊は冷ややかに言った。「私は言ったことは必ず実行するぞ!信じられないというなら、好きなようにやればいい。私がお前を会社から追い出さないか試してみろ。響君に会社を任せるかどうか、じっくり見ておくことだな!」そう言い終わると、豊は二階ではなく、外のほうへ歩いていった。「あなた、どこに行くの?」沙織は夫の様子にとても驚いていた。彼女は夫がまさ
「ええ、彼が昼に顧客と食事をするって」麗華は当たり前のように言った。「だったらあの子にひとこと行けなくなったと伝えたらいいわ。私たち二人、一緒に外食してからショッピングしたことなんてないもの。理仁だって、この私に文句は言えないでしょ」周りはいつも麗華と唯花のこの嫁姑は仲が悪いなどと適当なことを言いふらしている。唯花が毎回パーティーに神崎夫人と参加していて、普段も唯花が琴ヶ丘邸に帰って姑に付き合っていないと言うのだ。二人が公の場で一緒に食事をしたりショッピングしたりする姿も目撃されていないと。麗華はこのような噂話に付き合いたくなかった。彼女と唯花の関係がどうなのかは、自分自身でよくわ
姫華はとても快く彼のお願いに応えた。「善君がここへ来る時、私に電話してね。その時、いろいろと参考になるようなことをアドバイスするわ。あなたのお家のリフォームが終わったら、きっと将来の奥さんも大満足してくれるはずよ。その時はお礼をちょっと弾んでちょうだいね」善はやはり微笑んで言った。「それはもちろんですよ」姫華は彼の微笑みを見つめ、彼の話し方はいつもこうだなと気づいた。口を開く前に笑みを浮かべる。その微笑みはまるで春の暖かい風のように、心温まるもので、彼を前にすると、安心して心の扉が開いてしまう。「わかったわ、あなたのための内装アドバイザーになりましょう」善はニコニコと微笑み、お
一方、別の場所では。唯花はゴシップニュースを見た後、暫くの間黙っていてから、親友に話しかけた。「理仁さんと結婚してから日常がガラッと変わったわね。たったこれだけのことでゴシップ記事になったわよ、私」彼女が結城家の若奥様となってから、これが初めてのゴシップであった。明凛は昔からこのようなゴシップには詳しかった。彼女は笑って「あなたの旦那さんは、星城のビジネス界のトップである、結城理仁さんよ。あなたと姑の交流は少なかったし、ここ最近は伯母さんと一緒にパーティーに参加したりしてたもんだから、周りが誤解してたのよ」と言った。「ちょっと前に、ある夫人があなたのお義母さんに電話をして、あな
姫華「……つまり、私のことをあなたのお守り代わりだと思ってる?」善は彼女からそう言われても、冷静にこう返した。「お守り代をお渡ししましょうか」姫華は笑って言った。「以前は桐生家についてあまり知らなかったんだけど、あなたと知り合ってから、お兄さんに桐生家についていろいろと聞いてみたことがあるの。善君って桐生家ではあまり護身術とかが得意じゃないから、出かける時には常にボディーガードをつけているんでしょう?」「ええ、僕は小さい頃太っていたんです。太っている人はあまり運動が好きではないでしょう。護身術を習っている時にいつもさぼっていて、結局兄弟たちの中で一番弱い男になってしまいました。仕方