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道中ヘルベチカ
道中ヘルベチカ
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Novel-novel oleh 道中ヘルベチカ

シルヴァア・スワロウ

シルヴァア・スワロウ

高校時代、親友サクマミチコの死と自殺未遂の記憶を「アズサ」という先輩に奪われ、忘却の中で生きてきたキヨミ。十年後、Web編集者として働くも虚無感に苛まれ、風俗嬢「アカリ」として新たな人生を歩み始める。 店で出会った童貞客・テラダマコト、同僚のユキ、そして過去の亡霊が、彼女の心を揺さぶる。抑圧された記憶が蘇るたび頭痛に襲われながら、キヨミは「書くこと」を禁じられた自分と、愛と欲望の狭間で揺れ動く。 忘れられた喪失と、奪われた感情を取り戻す「性春」小説。
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Chapter: 第6羽:生徒会長とエンドロール(下)
キヨミの目が見開かれる。頭の中が真っ白になる。アズサはゆっくり顔を離し、キヨミの瞳をまっすぐ見つめた。その瞳は宝石のように輝いていた。 「私たち、恋人同士にならない?」映画のストーリー以上にわけのわからない展開に、キヨミは何も答えられない。ただ熱く残る唇の感触を、どう受け止めれば良いのかわからない。アズサは満足げに微笑むと、再びキヨミの肩を引き寄せ、もう一度、深く長いキスをする。アズサの舌が口の中に侵入し、キヨミの舌に絡んでくる。大人のキスだ。経験したことがないわけではない。ただ、その日初めて会話を交わした者同士でやってよい行為なのか。とっさにキヨミはアズサの体を押しのけた。唇が離れ、「おっと」とアズサの口から漏れる。「なぁに? 嫌だった?」アズサはニヤニヤしている。キヨミの心臓は、ドクンドクンと大きく脈打っている。何も答えられない。「黙っちゃって。嫌だった……にしては、判断遅すぎかな」アズサのツッコミは正しい。一緒に映画観て、1度キスをし、2度目でようやく拒絶。まるでずっと思考が麻痺していて、ようやく我に返ったようだ。仮にその通りだとしても、そんなことを言い訳にはできない。「まぁ、何も反応がないのも困るけどね。お人形さんなのかなとか思っちゃった」アズサはそう続けた。お人形さん。褒めてるのか、バカにしているのか。「どうして私なんですか?」キヨミはようやく言葉を返す。アズサは「どうしてって……うーんと、可愛いと思ったから?」と答える。「他にも、いるんですか?」質問を重ねると、一瞬キョトンとしたアズサだったが、「他にも……あ、他にも恋人いるのかってこと? やばっ、今の誘い方、そんなにチャラかった?」チャラい。確かに、ポップに表現するならそうだ。普通、いきなりキスはしてこない。それも、2度も。「まぁ、最近まで付き合ってはいたけど、今はフリーだよ。君は? もしかしてすでに付き合っている人とかいた? ええと……イチノセキヨミちゃん、だよね」名前……まだ、名乗っていなかったハズだが。そうか、破られたノートに書いてあったのを見ていたのだろう。「いえ……いないですけど。ただ、同性の恋人なんて持ったことないですし……しかもそれが、フカミ先輩なんて……」「あれ、フカミって……私の苗字、名乗ったっけ」「だ、誰でも知ってますよ、うちの高校の生徒
Terakhir Diperbarui: 2026-04-12
Chapter: 第5羽:生徒会長とエンドロール(上)
【2010年7月】静岡県・三島市 アズサは、キヨミの前に唐突に現れたわけではない。 むしろ一つ年上のその先輩の存在感は、キヨミが高校に入学したときから常にそこにあった、と言った方が正しいだろうか。 2009年、キヨミがこの市立高校に入学した年、アズサは生徒会長を務めていた。弁論大会では県大会を制し、全国大会でも優勝。さらにその年の秋、とある文芸雑誌の新人賞を高校生ながら獲得し、全国的にその名を轟かせた。 校内放送で名前が呼ばれるたび、廊下ですれ違うだけで後輩たちが息をひそめるほどの存在。学校内で彼女を知らない者はいない、と言えるほどの有名人だった。 そんなアズサが、キヨミに初めて声をかけてきたのは、市立図書館だった。 7月の蒸し暑い午後。キヨミはいつものように窓際の席に座り、ノートに走り書きをしていた。図書館は静かで、かすかなエアコンの音だけが響いている。 「勉強しているのかと思ったら、なあにそれ、詩でも書いてるのかしら」 聞き覚えのある、どこか甘く澄んだ声。キヨミが顔を上げると、そこにアズサが立っていた。長い黒髪を一つにまとめ、白いブラウスに紺のスカートという制服姿が、まるで絵画から切り取られたように整っている。唇の端に、わずかな笑みが浮かんでいた。 キヨミは慌ててノートを閉じようとしたが、アズサの細い指が素早くそれを押さえた。 「見せてごらんなさい」 拒否する間もなく、ノートはアズサの手に移っていた。彼女はゆっくりとページをめくり、ある一節で指を止めた。 「なかなか面白い文章を書くのね」 アズサの声は、褒めているようでありながら、どこか上から目線だった。 「特にこの文章が好き」 示されたのは、次の言葉だった。 “人は死んでも、あの世なんて場所にはいかない。魂など存在しない。ただ終わるだけだ。物が壊れ、捨てられて無くなるのと何も変わらない。そう思うからこそ、人は美しい。” キヨミの頰が、かあっと熱くなった。自分の書いたものが誰かに読まれること自体が初めてに近く、ましてや「好き」とまで言われるなんて。 「ありがとう……ございます」 少し照れる様子を見せるキヨミ。しかしその直後、ショッキングな出来事は起こった。 目の前で、アズサが無造作に、キヨミがポエムを書いたページをビリビリと引き裂いたのだ。 「でも、こんなことしちゃあ駄目
Terakhir Diperbarui: 2026-04-11
Chapter: 第4羽:亡霊とWebライティング(下)
大丈夫、書くと言っても、まったくゼロから始めるわけではない。取材はすでに済ませてあり、ライターが書いた一次原稿も上がっている。キヨミの仕事は、それを「読んで気持ちよくなる記事」に整えることだ。他人の文章を直すのは、簡単だった。「この表現、ちょっと弱いな」「ここはもっと感情を煽った方がいい」「読者が『欲しい!』と思う言葉を足そう」指は自然にキーボードを叩く。赤入れを入れ、推敲を重ね、14時には初稿を完成させ、WordPressにアップロードした。「できました。レビューお願いします」編集長に報告すると、すぐに「サンキュー! 助かったわ〜」と返ってくる。初稿には、「てにをは」や句読点など細かい修正を加えられただけで、15時の予約投稿状態に切り替わった。直されたところを確認するが、別に文法的に誤っていたわけではない。「“T社から新作リップが発売されます”より、“T社から新作リップが発売で
Terakhir Diperbarui: 2026-04-10
Chapter: 第3羽:亡霊とWebライティング(上)
【2019年1月】東京都・港区キヨミが自分自身を、おそろしく醜悪な存在であると認め始めたのはいつからだろう。まだ純な乙女であるべき中学時代、とある留学生の男子と情事を重ねてからか。その恋は彼の帰国と共に終わりを迎え、深い喪失を味わった。あるいはそれより前、無垢な童女でいた小学生のころ、友達だと思っていた女の子に、アパートの屋上から突き落とされたときからか。藪に落ちたおかげで、奇跡的に大怪我は免れた。原因そのものは、幼少期にありがちな些細な気持ちのズレだった。物事の始まりを思い返してみてもキリがないことは、キヨミ自身もわかっている。ある宗教でも“人間は生まれながらに罪な存在である”と言っているが、別に宗教的な見解や哲学な問題にこの疑問を発展させるつもりはない。もっと個人的な話だ。キヨミが生まれ、物心ついてから、2019年1月にいたる短い期間において。キヨミという存在を大きく決定づけた出来事は何だったのか。キヨミはときどき考え直す。通勤中・入浴中・就寝前などタイミングもバラバラで、考え直すたび導き出される答えもさまざまだが、中でも思い出す頻度が高いのは2010年の6月。しかしその日に何が起きたのか、記憶はおぼろげだ。きっと何か大変なことが起きたに違いないのに、思い出そうとするたび、ひどい頭痛に見舞われる。頭痛にも耐えられる範囲で辛うじて思い出せるのは、通学中の電車の中の光景。鬱陶しい梅雨の季節、キヨミは雨に濡れた窓の外を見ている。電車はホームに停まっていて、入口の扉は開いている。けれどキヨミが待っている人物は現れず、扉は閉まってしまう。あの駅で、キヨミは誰を待っていたのか。そしてその人物は、なぜ現れなかったのか。深く記憶を掘り起こそうとするほどに、ガンガンと、まるで金槌で内側から打ち付けられているような酷い頭痛で意識を失いそうになる。2010年の6月に17歳だったキヨミは、この2019年の1月、25歳になってしまった。9年も経てば、重要でない過去の出来事などほとんど忘れ去られる。けれど、思い出そうとするたび頭痛を引き起こすこの記憶は、「9年の月日を経て忘れてしまった」のではない。自らの人格形成をする上であまりに重要な出来事の一つだったのに、「9年もの長きにわたって封印されている」。そう表現する方が正しい。単なる物忘れではなく、記憶喪失か。それと
Terakhir Diperbarui: 2026-04-09
Chapter: 第2羽:ヴァンパイアとティッシュ(下)
“この仕事はね、本能的に「感じる」ことのできる人間にしか続けられない。ただエッチが好きなだけじゃダメ。相手によって感覚が鈍るような、ただの女には無理。「ビッチ」になるの。身も心も「ビッチ」になりなさい。長く続けたいならね”初日の講習で、そう言われたことを思い出す。ああ、やはり自分には、この仕事が向いていたのかもしれないという気持ちになる。「気持ちいい?」「ああ、はい、気持ちいい、です」「うそ。初めてなのに、わかる?」まだ少し戸惑うような表情の客を見ながら、キヨミはイジワルを言う。それも、講習で習ったテクニックの一つだ。「わか、わかると、思います」「ほんとうに? 変な感覚でしょ。自分と他人の体がつながっているなんて。そういうの、気持ち悪くないの?」「いや、そんな、気持ち悪く、なんかないですよ」「本当にそう思う?」くちゃくちゃと小刻みに腰を動かしながら、さらにイジワルな質問を重ねる。「気持ち悪くなんか、ぅ、あっ、ないですよ。う、うれしいです、こんな、アカリさんみたいな、きれいな人とつながれて、あっ」アカリ。それがキヨミの源氏名である。まだ耳馴染みのない、新しい名前。一瞬、誰の名前だろうかと戸惑いさえする。「嬉しい。ありがとう」「あっ、ああっ、好きです、アカリさん、あっ」「うれしい、テラダさん。んっ」唇を重ねる。上の方でも、深くつながる。「好きです」と言われ、「私もです」なんて言葉は使わない。相手を惚れさせるには手っ取り早い言葉だが、同時に自分が「惚れやすい女」だと安く見せる言葉でもある。ただの疑似恋愛でも、駆け引きは普通の恋愛同様に必要だ。否、普通の恋愛以上だろう。体を許す分、心まで許してしまってはいけない。肌が無防備な分、心には鎧を着なければならない。それから、腰を上下に動かす。動かし方には2パターンある。パン、パン、パン、パン。激しく上下にピストンし、男根を上から下まで幅広く擦るパターン。「はぁっ、はぁっ、あっ、あっ」もう一つ。ズブッ、ズブッ、ズブッ、ズブッ。やや斜めに浅く動かし、男根の先端を膣の奥にぐいぐいと導くよう短めに擦るパターン。「ひっ、ひっ、ふっ、ふっ」最初は前者で行い、徐々に後者に変えていく。早漏の相手ならこれを1分、遅い男でも5分かけると大概射精する、そう教わった。しかし、この日の客はなかなかそれに至らな
Terakhir Diperbarui: 2026-04-08
Chapter: 第1羽:ヴァンパイアとティッシュ(上)
【2019年3月下旬】東京都・新宿区その日の最初にキヨミを指名した客は、自らの名をテラダマコトと名乗った。身長は高く、全身がやたら白い。もうすっかり桜も満開の時期なのに、雪を思い出させるような色だ。ひょっとしたらこの日も、店へ足を運ぶまで一歩も外出しなかったのではと思うほどに。ただ、そのように日の光を避けて生きるヴァンパイアのような人種は、ここ歌舞伎町ではそう少なくはないと聞く。「ごめんなさい、こんなガリガリのみすぼらしい裸で」湯船から上がってバスタオルを腰に巻いた客は、キヨミに視線を向けられているのを恥じてか、両腕を胸の前で組んで体を隠すような仕草を取っている。キヨミは「大丈夫ですよ」となだめながら、ベッドの淵に客を腰かけさせた。筋肉がほとんど無いようにすら思える胴体は、かつらむきした大根の皮を連想させた。胸のあたりからペキリと折れそうなほど、体が薄い。「|痩《や》せてる人、好きですよ」社交辞令で述べただけのキヨミのセリフで、少し客は安心したのか、腕をほどく。現れた客の乳首はレーズンのように黒く、白い肌の上でよく目立った。「私の体も見てください」そう言いながら、キヨミは客の手を取り、自分の体に巻いたタオルに触れさせる。客は恐る恐るといった様子でタオルに触れた手を引いた。ファサッ、と床に落ちるタオル。露わになったキヨミの肌を前にして、客は眩い光でも見たように目を細める。「そのまま、私に委ねてくださいね」裸になったキヨミは、そう囁きかけながら客の胸に顔を近づけ、その乳首を舌でなぞる。「あっ」と声を漏らす客に、「ごめんなさい、ここ、苦手でした?」などと、言葉だけの謝罪を口にした。大概の男はいいえと否定するもので、その客も同様、「気持ちいいです、うっ、続けて、くださ、はぁっ」と懇願した。しばらく乳首を舐め、薄い胸板をなぞりながら首に向かっていく。やや髭の剃り残しのあるザラザラした顎を舌で撫でてから、唇に軽くキスをする。キヨミはそこで、やや上目遣いに客を見た。興奮のあまりか、客は目を閉じてしまっている。童貞らしいなと思いながら、キヨミは客の両手を取り、そのまま覆いかぶさるようにして客の上体をベッドに倒した。仰向けの体勢になる客。その薄い唇を自らの唇で覆い、舌を深く潜り込ませる。緊張に縮こまっている客の舌を引きずり出し、互いの唾液をかき混ぜた。呆れる
Terakhir Diperbarui: 2026-04-08
元カノとSNSスキャンダル

元カノとSNSスキャンダル

既婚者の小説家志望・クロカワテツヤは、Facebookで高校時代の元カノ・シロカネマユラと再会する。雨の降る南麻布で、懐かしい初恋の記憶が蘇り、禁断の不倫関係に溺れていく。妻ユキノの鋭い監視の目を盗みながら、マユラとの密会を重ねるが、彼女の心の傷や復讐心が絡み合い、情熱的な関係は危険なほどエスカレート。やがてマユラは、二人の親密な写真をSNSに投稿してしまいーー。過去と現在の愛が交錯し、罪悪感と欲望の狭間で葛藤するテツヤの心揺さぶる心理ドラマを描きながら、現代のSNS社会の闇を浮き彫りにする作品。
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Chapter: 第14報:終幕の謝罪文
<strong>2016年某月某日 編集済み</strong>半年ほどFacebookを不在にしておりました。不在の間に皆様から書き込まれたエントリに目を通すと「雲隠れでは」との指摘もあります。まさしく、その通りです。心配して電話をかけてくださった皆様。中にはLINEなどで厳しい言葉を投げかけられた方もいらっしゃいましたが、改めて身が引き締まる思いでした。本当にありがとうございました。事情をご存じでない方に向けて、改めてご説明いたします。実は私、クロカワテツヤは、半年前まで、シロカネマユラという高校時代の元恋人と不倫しておりました。誘ってきたのは彼女の方です。もちろん、それで私の罪が軽くなるとは思っておりません。私自身もシロカネさんをいいように利用し、彼女の心を弄んでしまったのだと思います。そのことを彼女自身に暴露されたのが、まさに半年前のこと。当時の私とシロカネさんの友人・知人、のべ1,300人以上の方の前に大変下品でお恥ずかしい写真を晒してしまいましたこと、今更ながら深くお詫び申し上げます。そちらの投稿は、現在すでにシロカネさんのアカウントごと削除されております。削除は私から依頼したものではありましたが、まさかアカウントごととは思いませんでした。以来、彼女とは一切連絡が取れておりません。もちろん、慰謝料を要求されればお支払いするつもりで、こちらから直接家を訪ねたりもしま
Terakhir Diperbarui: 2025-08-19
Chapter: 第13報:恋のアップデート
10年前に俺を振ったマユラは、最後のメールに「あなたの幸せを願っている」と書いていた。その言葉は、ぜんぜんフェアじゃなかった。ヤツには新しい恋人がいる。俺には、マユラと別れて付き合える女なんていない。大学に行けば、新たな出会いはいくらでもある。けれどどんな女を見ても、そこにマユラの影を探してしまう。「女の恋は上書き保存」とはよく言ったものだ。男の恋など、いくら上書きしようとしてもムリだ。以前のデータの保護がどうやったって解除できず、新規インストールには失敗ばかり。男にとって恋なんて言えるのは、初恋の相手だけかもしれない。その後ユキノと出会ったのは恋じゃなかった。妹ができたような感覚が近い。やがて仲が深まるうち、「恋人」をすっとばして「妻」とフォルダをリネームしたにすぎない。いまだに俺の「恋人」フォルダには、マユラが存在していた。もう二度と開けてはいけないフォルダだ。永遠にアップデートされないまま、忘れ去られていくべきものだった。10年越しにそれがアップデートされたいま。状況は最悪でしかない。マユラと交わりながら妻の名を呼んでしまった俺は、ヤツのiPhoneで写真を撮られている。局部丸出しの恥ずかしい格好で。「これ、ぜんぶFacebookにアップするから」「やめてくれ……
Terakhir Diperbarui: 2025-08-17
Chapter: 第12報:愛しのレッグカット
きしむベッドの音、悲鳴に近いあえぎ声。香水のニオイ、それに混じるオスとメスのクサさ。汗のしょっぱさに、唾液の甘さ。目に映るマユラの裸体、泣き出しそうな表情。肉と肉が擦れる感触と、体全体を包む熱気――否、熱は体の奥底からこみ上げてくる。俺とマユラの命を燃やし、溢れ、また外から内側を温める。五感すべてが、ヤツに釘付けになる。狂っている。俺もマユラも既におかしくなっている。いや、10年前からそうだ。どうしてこんな女を抱いたんだろう。「じつは俺さ、シロカネのことが気になってて」高校のころ、よく俺やマユラと一緒につるんでいた男友達に告げると、こう返された。「え……やめといたほうがいいんじゃねえの……」決してマユラは嫌われていたわけじゃない。誰とでも仲よく付き合えた。一緒にいて気兼ねしない女。しかしそれゆえに、深いところでつながりあえない存在。誰もがシロカネマユラの存在を知っていたが、誰もヤツの心の奥底の闇を知らないし、知ろうとしなかった。俺だけが興味を持った。そして知った。裸のマユラを。その股に刻まれた無数の傷、リストカットならぬレッグカットの跡を。見て率直に、キモチワルイと思った。自分でそんなところに傷をつくるなんて、アタマおかしいんじゃないか。けれ
Terakhir Diperbarui: 2025-08-15
Chapter: 第11報:ふたりだけのプリズン
珍しいことに、空には雨雲ではなく星空が広がっている。この街で雨が降らない日もあると、ようやく証明された。思い返せば今までも、この街で雨が降らない日もあったろう。ただの曇りの日も、星が出ている日も。ちゃんと見上げず、気づかなかっただけでは。言葉に記したことが、いつも真実とは限らない。むしろ嘘だらけだ。俺が不倫したことも、そうだったらいいと思う。マユラなんて元カノ、最初から存在しなかった。そうであれば、気分だってどれほど晴れるか。マユラの家に着いてインターホンを押す。が、返事はない。Facebookのメッセージで行くと伝えておいたハズ。「既読」も確認した。仕方なく家の前で待つことにする。スマホはカバンにしまってある。見たくもない。ネットの炎上は激しさを増している。投稿の公開範囲が俺とマユラの知人のみの設定になっていたことと、俺が会社の人間とは誰とも「友達」になっていなかったのは救いだ。が、バレるのも時間の問題かもしれない。俺より交友関係の広いマユラの「友達」に、俺と仕事上で付き合いのある人間がいないという保証はない。このスキャンダルが表に出たらおおごとだ。ひょっとしたら、会社もクビになるかもしれない。プロジェクトが頓挫してブルーになっていたことが、ここまで波及するとは……改
Terakhir Diperbarui: 2025-08-13
Chapter: 第10報:終わりからの始まり
「これで最後だ」というセリフを、いったい何度叫んだことだろう。「もう辞めよう」と言って突き放そうとするたび、マユラは俺にからみついてきた。逆にマユラからふりほどこうとするなら、今度は俺の方が放せなくなった。綱引きのようなセックス。疲労困憊で、文字通り精も根も尽きた。射精したのも何回だろう。ヤツと抱き合うと、下半身も思春期に戻ってしまう。妻とはいつも1回。2回以上はとてもできないのに。またも中央線の車内、脳みそが綿でくるまれたような眠気に、吊革を何度も手放しそうになった。アルコールも入っていないのに、周りの乗客にはタチの悪い酔っぱらいと思われたことだろう。辛うじて寝過ごさず中野駅のホームに降り立ったときも、フラフラでしばらくマトモに歩けなかった。ベンチに腰掛け、少しだけ休む。目を閉じると、マユラの肌色の肉体が――腹が、背中が、太股が、乳房が、そして毛で覆われた股間が、ぐるぐると回っていた。股間のものはヒリヒリと痛みながらも、また勃とうとしている。だめだ、だめだ。激しく頭を振り、睡魔と性欲を振り払う。立ち上がり、家路に戻る。途中、飯を何も食べてないことに気づき、駅前の通りの「なか卯」に寄る。出されたうどんの白さを見て、またマユラの肌を連想してしまい、慌ててかき込んだ。店を出て約10分、なんとかぶじマン
Terakhir Diperbarui: 2025-08-11
Chapter: 第9報:忘却のための射精
「ひぁっ……ま、待って……ここでしたら、泡で染みちゃう……」湯船の中で俺と股間を重ね合わせながらも、マユラは抗議する。バカな心配だ。泡風呂の泡が浮いているのは水面だけ、中の湯に混じっていることはない。「だいじょうぶだよ、激しくしなければ。ちゃんと、気持ちいいだろ?」「う、うんっ……、き、きもちいい……」ヤツの甘えた声に、俺の股間のものがビクビクと反応し、硬度を増す。そのたびまた、ひゃあん、という声が響く。もっと深くつながりたい。「いったん、手を離すぞ」と、マユラの上体を支えるのを、ヤツの背後に延びた自身の両手に任せ、俺の腰を挟むようなポジションにあるマユの両足をつかむ。その二本を持ち上げ、俺の肩に載せる。「わわっ……ちょっ……何するの、怖いっ……あっ」おびえた声を出す一方で、さきほどより一層甘い声がマユラの喉の奥からもれる。俺の先端が、ズブ、と深く入ったのを感じる。ここほど広い
Terakhir Diperbarui: 2025-08-09
百合な親友と共に双子を育てる離婚妻。元夫とのすれ違い愛には裏があった

百合な親友と共に双子を育てる離婚妻。元夫とのすれ違い愛には裏があった

物流大手ルミナスコーポレーションを経営する養父母から「借り物の娘」扱いされながらも、運輸大手ステアリンググループの御曹司・悠真と政略結婚した遥花。本物の家族を手に入れられたと思っていたが、それは悪夢の始まりだった。グループの総帥の“帝王学”で、妻も信頼できず「娼婦」として扱う悠真。夫に無碍に扱われながらも双子を身ごもる遥花。悠真が他所の女(百合子)と一緒に屋敷にいることを目撃し、離婚を決意する。悠真が百合子を運命の女性と信じる一方、遥花は親友・香澄の支援で新生活を始め、養父母の圧力や脅迫メモに苦しむ。すれ違いの愛と双子の秘密、企業間の陰謀がドロドロに絡む愛憎劇。
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Chapter: 第116章(最終話):永遠の絆*遥花
【2026年1月】冬の陽射しは冷たく、墓地の石碑に白い影を落としていた。香澄の墓前には、家族みんなが揃っていた。悠真、蓮、菖蒲、そして私。今日は香澄の四十九日。去年の11月、彼女は静かに息を引き取った。墓石には「遠藤香澄」と刻まれている。香澄と反町家の関係は、香澄が亡くなる前からすでに切れていた。ネットブロード社がステアリンググループに対して起こしたハッキング攻撃は、すべて香澄の独断として責任を押し付けられる形となった。元夫であり、社長の創業者であった反町信弘氏は植物人間状態。それに代わり、会社の重役や幹部達、それに反町家の血縁者たちが徒党を組んで、香澄社長を追い出した。酷い話だが、香澄自身も死期が近かったとあって、マスコミなどの取材に煩わされることもなかった。ユナイトコーポレーションの買収の話も凍結され、ネットブロード社は今、再編に追われているが、もはや香澄とは無関係な話だ。ある意味では、香澄自身が望んだ通りの結末だったのかもしれない。彼女らしい、見事な幕引きだ。世間は、反町香澄なんて最初から存在しなかったかのように動き始めている。けれど私たちだけは――あの日、病室で最後に交わしたキスと抱擁の感触は、今も私の肌に残っている。菖蒲が小さな花束を墓前に置いた。彼女はもう10歳。去年のドラマが大ヒットして、天才子役としてますますオファーも増えて忙しくなっているのに、今日は撮影を休んで来てくれた。「香澄さん……お元気? 菖蒲、ちゃんと大きくなってるよ。ママとパパと、お兄ちゃんと、みんなで頑張ってるからね」菖蒲の声は少し震えていた。蓮は黙って菖蒲の肩を抱いた。蓮の『Phantom Guard』は警察のサイバー捜査に正式採用され、彼はもう「天才少年プログラマー」として有名人になり始めている。悠真は私の手を握っていた。総帥就任から数ヶ月、ステアリンググループは安定を取り戻した。社長令嬢である阿左美さんも蘇った霊視の力で手腕を振るいつつ、ユナイトコーポレーションの株価も回復傾向にある。「散々苦労かけさせられたが……ある意味では、お前のお陰で成長できたとも言える。ライバルとして、元友人として、お前を失って俺も辛く思っているよ、香澄……できればまた、若い頃の武勇伝でも語り合いたかったな」悠真の声は静かだった。私は彼の肩に頭を預けた。「カッコつけてるけど、昨日の
Terakhir Diperbarui: 2026-02-28
Chapter: 第115章:私を恨んで*香澄
私の手は、遥花の細い首に絡まっていた。指先に、彼女の脈が伝わる。温かくて、速くて、生きている証。なのに、私はその脈を止めようとしていた。 「わかったわ、遥花……ありがとう。それなら私の手で、殺してあげる」 声は震えていた。自分の声なのに、どこか遠くから聞こえるようだった。sophilaの冷徹さも、過去の香澄の優しさも、もう混ざり合って一つの私になっているはずなのに、今この瞬間だけは、どちらでもない何かだった。 遥花の瞳が、驚きと悲しみで揺れる。彼女は抵抗しない。ただ、私を見つめている。その目が、私の心を抉る。 「……香澄……?」 彼女の声が、かすれる。首を絞める力が、徐々に強くなる。息が詰まる音がする。遥花の顔が、赤くなる。涙が、一筋、頬を伝う。 その涙を見た瞬間、何かが弾けた。 ――できない。 手から力が抜けた。指が、勝手に離れる。遥花は大きく咳き込み、ベッドに倒れ込んだ。彼女の胸が激しく上下する。息を吸うたび、喉が鳴る。 私は、自分の手を呆然と見つめた。 「ごめんね……」 声が、震えた。涙が、ぽろぽろと落ちる。遥花は咳をしながら、私を見上げた。首に赤い痕が残っている。それを見ただけで、また胸が裂けそうになる。 「遥花……ごめん」 私は、彼女の体を抱き寄せた。遥花はまだ息を荒げながら、私の胸に顔を埋めた。 「香澄……」 「遥花を殺すなんて、できない。あなたに生きていてほしいから。私はあなたと共に生きられない。それならせめて、一生私のことを想って、ずっと引きずったまま生きていて欲しいと思うの。ごめんね、それが私のワガママ」 遥花の肩が、震えた。彼女は、私の胸に顔を押しつけて、泣きじゃくった。 「そんな……そんなワガママ、許さない……」 「許さなくていい。でも、私の願いはこれだけなの。遥花が、私を忘れずにいてくれること。蓮と菖蒲が大きくなって、私のことを話してくれること。悠真が、遥花を支え続けてくれること」 私は、遥花の髪を撫でた。彼女の涙が、私の病衣を濡らす。 「遥花……最後に、ひとつだけお願い」 遥花は、顔を上げた。涙でぐしゃぐしゃの顔が、愛おしい。 「なに……?」 「私を抱いて。最後に、一度だけ……」 遥花の目が、揺れた。でも、すぐに頷いた。 「うん……」 私
Terakhir Diperbarui: 2026-02-27
Chapter: 第114章:残された時間*遥花
【2025年11月】 病院の個室は静かで、白いカーテンが柔らかい陽射しを遮っていた。香澄はベッドに横たわり、点滴のチューブが腕に繋がれている。顔色はまだ青白いが、目だけは昔のままの優しさを取り戻していた。 私はベッドの脇に座り、香澄の手を握っていた。彼女の指は細くて冷たい。でも、握り返してくれる力が、確かにあった。 「遥花……ありがとう。来てくれて」 香澄の声は弱々しかったが、穏やかだった。私は微笑んで、首を振った。 「ありがとうはこっちよ。戻ってきてくれて」 香澄は小さく笑った。目尻に、涙が溜まる。 「戻れたのは、遥花のおかげ。蓮の作ったアプリがなかったら……私はまだ、sophilaのままでいた」 蓮のアプリ。あの子の執念が、封印を解いた。統合の瞬間、香澄の体が震え、過去の香澄とsophilaが一つになった。あのときの衝撃で、腫瘍が一気に悪化した。医師の診断は、残酷だった。 「脳腫瘍、末期です。手術はもう不可能。余命は……数週間から数ヶ月」 その言葉を聞いたとき、私は膝から崩れ落ちた。香澄はベッドの上で、静かに泣いていた。 でも、今は泣かない。泣いている暇はない。残された時間を、一緒に過ごすために。 「香澄……私たち、残された時間を一緒に過ごそう」 私は、香澄の額にそっとキスをした。彼女は目を閉じて、頷いた。 「うん……お願い」 ※ 病院の廊下で、蓮と菖蒲が待っていた。菖蒲はマネージャーの奥野さんと一緒に来ていて、今日は撮影の合間を縫って駆けつけた。 「ママ! 香澄さん、どう?」 菖蒲が駆け寄ってきて、私の腰に抱きつく。私は菖蒲を抱き上げて、頷いた。 「少し落ち着いたわ。ありがとう、来てくれて」 蓮はノートパソコンを抱えたまま、静かに言った。 「遥花……ステアリンググループの件、終わったよ」 私は目を丸くした。 「終わった……?」 蓮はパソコンを開いて、画面を見せてくれた。株価チャートが、急回復している。赤かった線が、緑に変わっていた。 「香澄さんのサーバーから抜き出した不正データ、全部公開した。ネットブロード社のハッキング証拠も、警察に提出した。ユナイトコーポレーションの買収計画は凍結。総帥に就任した悠真……父さんの采配もうまくいってる」 菖蒲が目を輝かせた。 「すごーい! ざあこお兄ちゃん、めっちゃカッコい
Terakhir Diperbarui: 2026-02-26
Chapter: 第113章:統合の瞬間*sophila
頭が割れそうだった。 膝をついた瞬間、世界が音を失った。社長室の床が冷たくて、指先が震える。遥花の声が遠くから聞こえる。 「香澄……過去のあなたを、解放するわ。もう、恐れなくていい」 その言葉が、胸の奥に突き刺さった。次の瞬間、私の意識は体から引き剥がされた。暗闇の中に落ちていく。まるで深い井戸の底へ、ゆっくりと沈んでいくような感覚。 そこは真っ白な空間だった。どこまでも続く白い床と、白い天井。まるで病院の無菌室のようだ。 私は立っていた。黒いスーツを着た「反町香澄」――sophilaの私が。 そして、向かい側にもう一人の私がいた。白いワンピースを着た、遥花の恋人だった頃の、柔らかい笑顔の香澄。 二人の私が、静かに向き合っていた。 「……やっと、会えたね」“過去の香澄”が、優しく微笑んだ。私は、唇を歪めた。 「会いたくなんてなかった。私は弱い。すぐにあなたに頼ってしまう。だから……」“過去の香澄”は、静かに首を振った。 「あなたが私を封印したせいで、遥花は泣いたわ。私が、遥花を悲しませてしまった」 怒りか、悔しさか、自分でもわからない。 「違う、あなたじゃない! 遥花を悲しませたのは私のせい……私は、あなたを独占しようとしたの!」 しかし“過去の香澄”が否定する。 「あなたはただ、強くあろうとしただけ。弱いままじゃ、遥花を幸せにできない。隆一に作られた道具のままじゃ、彼女を傷つけるだけだと思った。だから、私を封印したんでしょ。強くなって、すべてを壊して、遥花を自由にしてあげようとしたんじゃない」“過去の香澄”がゆっくりと近づいてきた。彼女の瞳は、涙で濡れていた。 「違うわ。私は、ただ怖かったのよ。弱いままで、遥花に嫌われてしまうのが。遥花に、愛され続ける自信がなかった。だから、あなたを閉じ込めて、強がった。復讐なんて、ただの言い訳。本当は、遥花に触れたくて、抱きしめたくて、でも怖くて……」 白い空間に、私の声が反響する。頭痛が、再び激しくなる。腫瘍が、脳を締め付ける。“過去の香澄”は、悲しげに微笑んだ。 「もう、いいのよ。遥花が来てくれた。彼女は、私たちを愛してくれている。sophilaも、香澄も、全部愛してくれているって……抱きしめてくれた」 その瞬間、外の世界から、遥花の温かさが流れ込んできた。彼女の腕の感触、唇の柔ら
Terakhir Diperbarui: 2026-02-23
Chapter: 第112章:再会への旅*遥花
朝の陽射しがカーテンの隙間から差し込む。リビングのテーブルに、蓮と菖蒲の朝食を並べながら、私は静かに息を吐いた。今日は香澄に会いに行くと決めた日。「ママ、どこか行くの?」菖蒲が目をこすりながらリビングに入ってきた。彼女の髪は寝癖で跳ねていて、いつものように可愛い。私は微笑んで、菖蒲の頭を撫でた。「うん、ちょっと用事でね。一人で出かけてくるわ」菖蒲の目が、大きく見開かれた。「え……一人で? また、帰ってこないつもり?」「心配しないで、夕方には帰るから」菖蒲は、唇を尖らせた。「ママ……絶対帰ってきてね。菖蒲、ママがいないと寂しいもん」その言葉に、胸が締め付けられた。菖蒲の小さな手が、私の服の裾を握る。私はしゃがんで、菖蒲を抱きしめた。「うん、絶対帰ってくる。菖蒲と蓮とパパと、一緒にいるよ」蓮が階段を降りてきた。ノートパソコンを抱えている。「遥花……僕のアプリで、香澄さんの位置は追えるよ。リアルタイムで。危なくなったら、すぐに連絡する」蓮の声は、落ち着いている。でも、目が少し赤い。私の決意を、止める気はないみたいだ。「ありがとう、蓮。頼りにしてるわ」悠真は、朝から会社に出かけていた。昨夜、すべてを話した。香澄に会いに行くこと。過去の香澄を救うために、一人で行きたいと。彼は悩んでいたようだが、もう私を止めることはしなかった。ただ、「気をつけて。帰ってきてくれ」とだけ言った。家を出た。菖蒲は玄関で手を振って、「ママ、絶対帰ってきてね!」と泣きながら叫ぶ。蓮は「アプリで追ってるから、大丈夫だよ」と静かに言いながら、私に笑顔を向けてくれた。電車の中で、過去の記憶が蘇る。香澄と出会った子供の頃。彼女はいつも明るくて、私の厳しい家庭環境を笑い飛ばしてくれた。香澄は、私の初めての友達……そして私が双子を身ごもってから、とても短い間だけど、共に暮らし、共に双子を育て、そして愛し合った、かけがえの無い家族だ。今、香澄は反町香澄として、私たちの敵になっている。でも、私は信じている。彼女の中には、まだ過去の香澄がいる。sophilaが封印した、優しい香澄が。東京駅に着き、ネットブロード社の本社へ向かうタクシーの中で、蓮からLINEが来た。「遥花、香澄さんの位置は最上階の社長室。アプリでリアルタイム追跡中。……でも、解放アプリを入れるには、香澄さんのデバイ
Terakhir Diperbarui: 2026-02-21
Chapter: 第111章:暴走と家族会議*蓮
学校から帰ってきて、すぐに自分の部屋にこもった。ノートパソコンを開いて、『Phantom Guard』のコードをいじり始める。 sophila――反町香澄社長のサーバーに侵入して、彼女の秘密を探る。最新のバージョンで、今度こそ突破してやる。 「よし……ファイアウォールの抜け道、昨日見つけたやつを使って……」 キーボードを叩く。画面にデータが流れ込んでくる。機密ファイル、ログ……そして、変なフォルダを見つけた。「Sealed Memory」って名前。封印された記憶? なんだこれ。 パスワードがかかってるけど、僕のアプリでクラック。開くと、中に古いプログラムのコードがいっぱい。洗脳プログラム……? プログラムの製作者の名前を見ると、“ryuichi”と記載されている。sophila自身が作ったものではない。 ログを見ると、sophilaが自分の意思でプログラムを起動して、過去の香澄の人格を封印した記録が残ってる。 「香澄は、自分の意思で過去の自分を封印してた……? どうして?」 さらに深く掘ってみる。プログラムのコメントに、sophilaのメモみたいなものが残ってる。「弱い自分を閉じ込めれば、私は強くなれる。遥花を傷つけないために」。 ……遥花? ママのこと? sophilaは、ママを傷つけないために、過去の香澄を封印した? でも、今のsophilaはママを傷つけるようなことばっかりしてる。矛盾してる。 「もしかして、封印したせいで、sophila自身がおかしくなっちゃったのかも……」 頭を掻く。この洗脳プログラムは、元々人格を操るためのものだったようだ。“ryuichi”というのが誰かはよくわからないが、ともかく第三者が作ったプログラムをsophila自身がいじったら、予想外の結果になったのかも。弱い自分を封印したつもりが、逆に強すぎる人格が暴走し始めた……みたいな。 「sophilaを倒すんじゃなくて、過去の香澄を解放すれば……元の香澄に戻れるかも」 閃いた。アプリをさらに改良して、封印データを解除するハッキングコードを書く。プログラムの構造を解析して、逆の動作をするように。理論上は可能だ。でも、実際にやるには、香澄のスマホかパソコンに直接アクセスしないと……。 「まずは、家族に話さないと」 リビングへ降りる。菖蒲はソファでSwitchや
Terakhir Diperbarui: 2026-02-20
学園のお嬢様なのにカースト底辺の汗クサ小太り男子の匂いでオ◯ニーしちゃってます💦:香の檻-Cage of Scent

学園のお嬢様なのにカースト底辺の汗クサ小太り男子の匂いでオ◯ニーしちゃってます💦:香の檻-Cage of Scent

学園のお嬢様・香織は、クラスメイトであるカースト底辺男子・拓海の汗と土の匂いを嫌悪しながらも、魔法にかけられたように禁断の自慰に溺れる。拓海は小太りで顔もイマイチだが、香織は彼の真摯さや努力を垣間見、やがて彼に惹かれていく。時に高飛車な態度を取りつつも拓海との親睦を深め始めるが、ある日、非行男子生徒3人による性的な暴行を受けてしまう香織。拓海は香織を救うも、あらぬ疑いをかけられ停学の危機に。香織は拓海を救うため、勇気を振り絞ってとある行動に出た――。 王道純愛ラブストーリーを、詩的な文体とリアルな官能表現満載(自宅・学園内でのオ〇ニー、軽いNTR、初体験、ラブラブ中〇しシーンあり)で送る。
Baca
Chapter: エピローグ:香の鍵
“香りとは檻である”かの詩人がその言葉を呟いたとき、そこにはどんな思いが込められていたのか。もう抜け出せない絶望感からか、あるいは自我を失くすほどの甘美な悦びに酔いしれてか。香りは時として人の心を捕らえる。そして一度囚われると、決して逃れることはできない――鍵を手に入れさえしなければ。果たして詩人は、その先の人生で鍵を得ることはできたのだろうか。春の始まり。2DKの簡素な集合住宅の一室で、情事にふける若い男女の声が響く。若い――と言っても、20代半ば。8年の年月を経て、成熟した大人の体となった、香織と拓海だった。長年スポーツに勤しんでいた拓海の体はすっかり引き締まり、盛り上がった筋肉にぷつぷつと汗が浮き上がっている。一方、香織の体は女性らしい丸みを帯び、柔らかで形の良い乳房も熟れた果実のような膨らみとなっていた。拓海が、香織のポツッと硬くなった乳首にキスをすると、彼女は「ひゃうっ……」と可愛らしい声を上げてのけ反る。その反応に興奮したのか、拓海はますます情熱的に香織の乳首を吸い上げる。「拓海……もうっ、相変わらず赤ちゃんみたいなことする……」「へへ、男の本能ってやつかな。目の前にあると、吸いたくてたまらなくなる」「私達に赤ちゃんができても、同じことするつもりなの?」そ
Terakhir Diperbarui: 2025-07-27
Chapter: 第18話:決戦と解放
夏の日差しを浴びながら、香織は彩花と再び観客席に座っていた。しかし学園のグラウンドではない。より広く、青々とした芝生が広がる区営のグラウンドだった。学園のサッカー部が最も注力していた、「夏の試合」が今から始まろうとしていた。春の終わりのあの日、退学した瀬野らから誘われた時は、まったく行く気にもなれなかったこの試合。まさか自ら望んで観戦することになろうとは、香織自身も思ってもみなかった。いまフィールドに堂々と立つのは、例の試合結果からレギュラーに選ばれた拓海だ。そして彩花が応援していた新入部員もレギュラー入りし、今は拓海の味方として隣で肩を並べていた。香織は彼の汗と土の匂いを想像し、心で祈った。試合開始のホイッスルが鳴り、拓海は動き出す。相手チームは強豪で、序盤から圧倒的な攻勢を仕掛けてきた。拓海の動きにはまだぎこちなさが残り、ボールを奪われるたびに観客席からため息が漏れる。(拓海、頑張って……!)祈るように、香織は心の中で叫んだ。試合の開始前、コーチは拓海にこう戦略を伝えていた。「相手は前線が強い。拓海、お前は中盤で守備を固めつつ、隙を見たら一気に前へ出ろ。チームの逆転はタイミングが命だ」観客には圧されているように見えたが、拓海はほぼコーチの指示通り中盤で守備に徹し、相手の猛攻を食い止めていた。
Terakhir Diperbarui: 2025-07-26
Chapter: 第17話:幸せで神聖な営み
香織と拓海は、直に肌と肌を重ねながら、舌と舌を絡めあいながら、強く求めあった。あの体育館の裏で、瀬野から無理矢理唇を奪われ、口腔を犯されたときとは全然違う。激しいだけでなく、優しさが込もった求め合うキス。どれほど長く重なっていただろうか。やがて唇を離し、互いに見つめ合う。「香織……この先に進んでもいい? 初めてで、うまくできるかわからないけど……」彼の真面目な言葉に、再び香織は頬を赤らめながら、こくんと頷く。だがその時、拓海が動きを止め、慌てたように呟いた。「待てよ……僕、アレ持ってない。まずいよね?」香織が目を上げると、拓海が困った顔でこちらを見ている。彼女がキョトンとする中、彼は「何か……ないかな」と言いながら物置の隅を見回す。ふと、古い棚の埃っぽい角に拓海は目を留めた。そこには、誰かが捨てたらしい未開封のゴムのパッケージが転がっていた。それを拾い上げ、驚いた声を上げる。「何だこれ……こんなとこに置いてあるなんて……一体、誰が?」香織も顔を赤らめながら呟く。「誰かが……使わなかったのかしら。でも、封が切れてないなら……」
Terakhir Diperbarui: 2025-07-25
Chapter: 第16話:もっと近くに
テスト試合の前日、香織は図書室で彩花と話していた。彩花は頬を染め、興奮気味に切り出した。「香織、聞いて! サッカー部の新入部員に、めっちゃかっこいい子がいるの! 明日のテスト試合、絶対応援したいんだけど……一人じゃ恥ずかしくて。ね、付き合ってよ!」香織の心臓がドキンと鳴った。拓海も出る試合だ――彼の試練を近くで見たいが、内緒の恋愛は守らねば。香織は微笑み、彩花の熱意に押される形で答えた。「ふふ、そこまで言うなら付き合うわ。応援、楽しそうね」彩花が目を輝かせ、抱きつく。「やった! 香織と一緒なら、絶対楽しいよ!」香織自身も心の中では楽しみすぎて叫び出したい衝動に駆られながら、努めて冷静なお嬢様を装った。試合当日、香織は彩花と共に観客席に座った。夏の陽射しがグラウンドを照らし、拓海の姿が遠くに見える。彼は緊張した顔でフィールドに立ち、補欠ゆえの不慣れな動きが目立つ。「やっぱりあの新入部員、かっこいい!」彩花がそう興奮して叫ぶ中、香織は拓海の匂いを想像し、心で応援した。試合は拓海のチームが劣勢だった。ライバルの新入部員がドリブルで突破し、ゴールをキメる。守備で追われるばかりの拓海に
Terakhir Diperbarui: 2025-07-24
Chapter: 第15話:“おっぱい”の魔法
数日後、香織は庭園のベンチで拓海を待っていた。夏の陽射しが薔薇の香りを濃くし、彼女の胸は微かな緊張で高鳴っていた。テスト試合を目前に控え、拓海が日に日に押しつぶされそうになっていることを、香織も感じ取っていた。(拓海の頑張りを、ただ待つだけじゃ足りない。私が彼を支えなきゃ……)拓海が現れた。汗で濡れた体操服が小太りな体に貼り付き、疲れ切った顔に無理やり笑みを浮かべている。香織を見つけ、ベンチに腰を下ろした。「香織……今日もこうして会えて、嬉しいよ……」“嬉しい”と言いながらも、彼の声は力なく、汗と土の匂いが濃密に漂う。香織は水筒を差し出し、穏やかに尋ねた。「練習、きつかったでしょ? テスト試合、近づいてるものね」拓海は苦笑し、俯いた。「うん……コーチに『今のお前じゃ無理だ』って言われてさ。ライバル連中も僕のことバカにして……僕、ほんとにレギュラーなんてなれるのかな……」彼の弱音と、匂い――汗と土、疲れ果てて決意が揺らぐようなニュアンス――が、彼女の心を揺さぶる。言葉だけでは足りない。もっと近くで、彼を支えたい。「拓海……ちょっと、こっちに来て」香織は立ち上がり、拓海の手を引い
Terakhir Diperbarui: 2025-07-23
Chapter: 第14話:友情と試練
「彩花、私……恋人が出来ちゃった」ある日の昼休み、学園のカフェスペースの隅で、二人だけで昼食を取っている最中だった。香織の突然の告白に彩花は目を丸くし、持っていたサンドイッチをポロリと床に落とす。「あーっ! 最後に残しておいたタマゴサンドが……!」「わ、大丈夫!?」「うぅっ……埃まみれ……大丈夫じゃないよ! もったいない……」恨みがましい目で彩花は香織を見る。落としたのは自分なのに、香織のせいだとでも言いたげだ。「まさか……今日二人でご飯行こうって言ったのも、それを言うためだったの?」「いや、そういうわけ……でも、あるのかな……」たどたどしく答えながら、「あ、お詫びにこれ食べる?」と言って、弁当箱の中のふっくらとした卵焼きを箸で彩花に差し出す香織。「食べるっ」と言い、彩花は直接食いついた。まるで池に撒かれたエサを頬張るコイのように。「ん~、おいしい! 香織の家の卵焼き、最高~!」「良かった。実は今朝、自分で焼いてみたの」「へぇ、メイドさんが作ってくれたんじゃないんだ!」
Terakhir Diperbarui: 2025-07-22
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