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道中ヘルベチカ
道中ヘルベチカ
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Novels by 道中ヘルベチカ

元カノとSNSスキャンダル

元カノとSNSスキャンダル

既婚者の小説家志望・クロカワテツヤは、Facebookで高校時代の元カノ・シロカネマユラと再会する。雨の降る南麻布で、懐かしい初恋の記憶が蘇り、禁断の不倫関係に溺れていく。妻ユキノの鋭い監視の目を盗みながら、マユラとの密会を重ねるが、彼女の心の傷や復讐心が絡み合い、情熱的な関係は危険なほどエスカレート。やがてマユラは、二人の親密な写真をSNSに投稿してしまいーー。過去と現在の愛が交錯し、罪悪感と欲望の狭間で葛藤するテツヤの心揺さぶる心理ドラマを描きながら、現代のSNS社会の闇を浮き彫りにする作品。
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Chapter: 第14報:終幕の謝罪文
<strong>2016年某月某日 編集済み</strong>半年ほどFacebookを不在にしておりました。不在の間に皆様から書き込まれたエントリに目を通すと「雲隠れでは」との指摘もあります。まさしく、その通りです。心配して電話をかけてくださった皆様。中にはLINEなどで厳しい言葉を投げかけられた方もいらっしゃいましたが、改めて身が引き締まる思いでした。本当にありがとうございました。事情をご存じでない方に向けて、改めてご説明いたします。実は私、クロカワテツヤは、半年前まで、シロカネマユラという高校時代の元恋人と不倫しておりました。誘ってきたのは彼女の方です。もちろん、それで私の罪が軽くなるとは思っておりません。私自身もシロカネさんをいいように利用し、彼女の心を弄んでしまったのだと思います。そのことを彼女自身に暴露されたのが、まさに半年前のこと。当時の私とシロカネさんの友人・知人、のべ1,300人以上の方の前に大変下品でお恥ずかしい写真を晒してしまいましたこと、今更ながら深くお詫び申し上げます。そちらの投稿は、現在すでにシロカネさんのアカウントごと削除されております。削除は私から依頼したものではありましたが、まさかアカウントごととは思いませんでした。以来、彼女とは一切連絡が取れておりません。もちろん、慰謝料を要求されればお支払いするつもりで、こちらから直接家を訪ねたりもしま
Last Updated: 2025-08-19
Chapter: 第13報:恋のアップデート
10年前に俺を振ったマユラは、最後のメールに「あなたの幸せを願っている」と書いていた。その言葉は、ぜんぜんフェアじゃなかった。ヤツには新しい恋人がいる。俺には、マユラと別れて付き合える女なんていない。大学に行けば、新たな出会いはいくらでもある。けれどどんな女を見ても、そこにマユラの影を探してしまう。「女の恋は上書き保存」とはよく言ったものだ。男の恋など、いくら上書きしようとしてもムリだ。以前のデータの保護がどうやったって解除できず、新規インストールには失敗ばかり。男にとって恋なんて言えるのは、初恋の相手だけかもしれない。その後ユキノと出会ったのは恋じゃなかった。妹ができたような感覚が近い。やがて仲が深まるうち、「恋人」をすっとばして「妻」とフォルダをリネームしたにすぎない。いまだに俺の「恋人」フォルダには、マユラが存在していた。もう二度と開けてはいけないフォルダだ。永遠にアップデートされないまま、忘れ去られていくべきものだった。10年越しにそれがアップデートされたいま。状況は最悪でしかない。マユラと交わりながら妻の名を呼んでしまった俺は、ヤツのiPhoneで写真を撮られている。局部丸出しの恥ずかしい格好で。「これ、ぜんぶFacebookにアップするから」「やめてくれ……
Last Updated: 2025-08-17
Chapter: 第12報:愛しのレッグカット
きしむベッドの音、悲鳴に近いあえぎ声。香水のニオイ、それに混じるオスとメスのクサさ。汗のしょっぱさに、唾液の甘さ。目に映るマユラの裸体、泣き出しそうな表情。肉と肉が擦れる感触と、体全体を包む熱気――否、熱は体の奥底からこみ上げてくる。俺とマユラの命を燃やし、溢れ、また外から内側を温める。五感すべてが、ヤツに釘付けになる。狂っている。俺もマユラも既におかしくなっている。いや、10年前からそうだ。どうしてこんな女を抱いたんだろう。「じつは俺さ、シロカネのことが気になってて」高校のころ、よく俺やマユラと一緒につるんでいた男友達に告げると、こう返された。「え……やめといたほうがいいんじゃねえの……」決してマユラは嫌われていたわけじゃない。誰とでも仲よく付き合えた。一緒にいて気兼ねしない女。しかしそれゆえに、深いところでつながりあえない存在。誰もがシロカネマユラの存在を知っていたが、誰もヤツの心の奥底の闇を知らないし、知ろうとしなかった。俺だけが興味を持った。そして知った。裸のマユラを。その股に刻まれた無数の傷、リストカットならぬレッグカットの跡を。見て率直に、キモチワルイと思った。自分でそんなところに傷をつくるなんて、アタマおかしいんじゃないか。けれ
Last Updated: 2025-08-15
Chapter: 第11報:ふたりだけのプリズン
珍しいことに、空には雨雲ではなく星空が広がっている。この街で雨が降らない日もあると、ようやく証明された。思い返せば今までも、この街で雨が降らない日もあったろう。ただの曇りの日も、星が出ている日も。ちゃんと見上げず、気づかなかっただけでは。言葉に記したことが、いつも真実とは限らない。むしろ嘘だらけだ。俺が不倫したことも、そうだったらいいと思う。マユラなんて元カノ、最初から存在しなかった。そうであれば、気分だってどれほど晴れるか。マユラの家に着いてインターホンを押す。が、返事はない。Facebookのメッセージで行くと伝えておいたハズ。「既読」も確認した。仕方なく家の前で待つことにする。スマホはカバンにしまってある。見たくもない。ネットの炎上は激しさを増している。投稿の公開範囲が俺とマユラの知人のみの設定になっていたことと、俺が会社の人間とは誰とも「友達」になっていなかったのは救いだ。が、バレるのも時間の問題かもしれない。俺より交友関係の広いマユラの「友達」に、俺と仕事上で付き合いのある人間がいないという保証はない。このスキャンダルが表に出たらおおごとだ。ひょっとしたら、会社もクビになるかもしれない。プロジェクトが頓挫してブルーになっていたことが、ここまで波及するとは……改
Last Updated: 2025-08-13
Chapter: 第10報:終わりからの始まり
「これで最後だ」というセリフを、いったい何度叫んだことだろう。「もう辞めよう」と言って突き放そうとするたび、マユラは俺にからみついてきた。逆にマユラからふりほどこうとするなら、今度は俺の方が放せなくなった。綱引きのようなセックス。疲労困憊で、文字通り精も根も尽きた。射精したのも何回だろう。ヤツと抱き合うと、下半身も思春期に戻ってしまう。妻とはいつも1回。2回以上はとてもできないのに。またも中央線の車内、脳みそが綿でくるまれたような眠気に、吊革を何度も手放しそうになった。アルコールも入っていないのに、周りの乗客にはタチの悪い酔っぱらいと思われたことだろう。辛うじて寝過ごさず中野駅のホームに降り立ったときも、フラフラでしばらくマトモに歩けなかった。ベンチに腰掛け、少しだけ休む。目を閉じると、マユラの肌色の肉体が――腹が、背中が、太股が、乳房が、そして毛で覆われた股間が、ぐるぐると回っていた。股間のものはヒリヒリと痛みながらも、また勃とうとしている。だめだ、だめだ。激しく頭を振り、睡魔と性欲を振り払う。立ち上がり、家路に戻る。途中、飯を何も食べてないことに気づき、駅前の通りの「なか卯」に寄る。出されたうどんの白さを見て、またマユラの肌を連想してしまい、慌ててかき込んだ。店を出て約10分、なんとかぶじマン
Last Updated: 2025-08-11
Chapter: 第9報:忘却のための射精
「ひぁっ……ま、待って……ここでしたら、泡で染みちゃう……」湯船の中で俺と股間を重ね合わせながらも、マユラは抗議する。バカな心配だ。泡風呂の泡が浮いているのは水面だけ、中の湯に混じっていることはない。「だいじょうぶだよ、激しくしなければ。ちゃんと、気持ちいいだろ?」「う、うんっ……、き、きもちいい……」ヤツの甘えた声に、俺の股間のものがビクビクと反応し、硬度を増す。そのたびまた、ひゃあん、という声が響く。もっと深くつながりたい。「いったん、手を離すぞ」と、マユラの上体を支えるのを、ヤツの背後に延びた自身の両手に任せ、俺の腰を挟むようなポジションにあるマユの両足をつかむ。その二本を持ち上げ、俺の肩に載せる。「わわっ……ちょっ……何するの、怖いっ……あっ」おびえた声を出す一方で、さきほどより一層甘い声がマユラの喉の奥からもれる。俺の先端が、ズブ、と深く入ったのを感じる。ここほど広い
Last Updated: 2025-08-09
百合な親友と共に双子を育てる離婚妻。元夫とのすれ違い愛には裏があった

百合な親友と共に双子を育てる離婚妻。元夫とのすれ違い愛には裏があった

物流大手ルミナスコーポレーションを経営する養父母から「借り物の娘」扱いされながらも、運輸大手ステアリンググループの御曹司・悠真と政略結婚した遥花。本物の家族を手に入れられたと思っていたが、それは悪夢の始まりだった。グループの総帥の“帝王学”で、妻も信頼できず「娼婦」として扱う悠真。夫に無碍に扱われながらも双子を身ごもる遥花。悠真が他所の女(百合子)と一緒に屋敷にいることを目撃し、離婚を決意する。悠真が百合子を運命の女性と信じる一方、遥花は親友・香澄の支援で新生活を始め、養父母の圧力や脅迫メモに苦しむ。すれ違いの愛と双子の秘密、企業間の陰謀がドロドロに絡む愛憎劇。
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Chapter: 第84章:後悔と追憶*遥花
あの日、カフェで無理に霊視を試みたあと、阿左美さんの体調は少しずつ悪くなっていった。お腹の赤ちゃんは元気だけど、阿左美さん自身が疲れやすくなったみたいだ。「遥花さん、ごめんね……また来てもらっちゃって」阿左美さんのマンションで、彼女はベッドに横になりながら言った。吉田さんは仕事で出かけていて、今日は私一人で付き添っている。「いいよ、気にしないで。阿左美さんこそ、無理しちゃダメだって言ってるのに」私は彼女の手に触れた。少し冷たい。阿左美さんは弱々しく笑った。「百合子の霊の気配が、ますます強くなってるの……夜、夢で出てきて、赤ちゃんを睨んでるのよ。怖くて、眠れない日が増えちゃって」「阿左美さん……私には霊というものが本当にいるのかはわからないけれど、きっと今はそれだけじゃなくて、出産前の不安が悪影響を及ぼしているところもあるのかも。私も出産前は不安だったし……」いい機会だ。彼女に、私が妊娠中、子宮頸管無力症と診断されたことを彼女に告げた。お医者さんにくれぐれもストレスは避けてと伝えられていたけれど、さまざまなトラブルが重なった結果か、早産になってしまったことも。ただ、未熟児のまま生まれてきた蓮と菖蒲も、いまは普通の小学生として立派に成長している。不安な未来もあるけれど、きっといい結果になる、希望を持つことが大事だ――と。「遥花さんにもそんなことが……そうか、思い出したわ。私、前に一度、悠真さんに憑りついている生霊を見たことがあるの。あなたと、あなたのお腹にいる二人の魂だった。私、あなたに出会うより前から、あなた達の生霊に会っていたの」「へっ……そうなの?」阿左美さんが悠真に憑りついている生霊を……どうしてそんな経緯になったのかわからないが、双子がお腹にいる間、生霊を飛ばしていたなんて。しかも双子も一緒になんて、恥ずかしいやら何やら、だ。「とにかく……もう少し休んで。出産まであと少しだよ。きっと無事に生まれてくるよ」私は彼女のお腹を撫でながら言う。でも、心の中では不安が募る。百合子の霊が本当に子を呪っているなら、どうしたらいいの……?数日後、阿左美さんから緊急の連絡が入った。「陣痛が来たの……病院に向かうわ」と。私はすぐにタクシーを飛ばし、病院へ駆けつけた。病室で、阿左美さんは汗だくでベッドに横たわっていた。吉田さんが手を握り、励ましている
Last Updated: 2026-01-11
Chapter: 第83章: 妊娠と霊の影*遥花
【2025年5月】「遥花さん、見て、私のお腹! まるでスイカみたいで笑っちゃう」初夏の陽気が心地よい季節、阿左美さんはカフェのテラス席で、大きくなったお腹を撫でながら言った。吉田さんとの間にできた子を身ごもって、もう臨月だ。私たちは週に一度、こうして会うのが習慣になっていた。蓮と菖蒲の面倒は、奥野さんや田中さんなど、長い付き合いのある大人たちが見てくれている。特に今日は、悠真と吉田さんが、2人を遊園地に連れていくらしい。蓮は自作のアプリを開発したことへの、菖蒲は撮影中のドラマの演技を監督から褒められたことへのご褒美だ。相変わらず忙しい悠真だが、「たまには俺も羽を伸ばさないとな」と、時間を作ってくれた。悠真も阿左美さんの妊娠を知ってから、私たちの友情を尊重してくれるようになった。「ところで遥花さん、聞いてよ。ユナイトコーポレーションの買収騒動、ますます深刻みたいで。うちのパパ――信孝社長も毎日頭抱えてるわ」阿左美さんはスマホをいじりながらため息をついた。いつも明るく振る舞っている阿左美さんだけど、最近の彼女の顔色は少し優れなかった。今日は特に、険しい表情をしている。「私の霊能力で、何か助けられないかなって思うんだけど……妊娠中は、どうも調子が出なくて」彼女はお腹を撫でながら苦笑いした。阿左美さんの霊感は、事件解決の鍵になったこともある。だがエネルギーを大量に使うため、母体に負担がかかるらしい。出産が近づくにつれ、ますます使えなくなっていると、前にも言っていた。「無理しちゃダメよ。赤ちゃんが大事なんだから」私は彼女の手を握った。阿左美さんはうなずきながら、でもどこか悔しそうだった。「わかってるけど……パパの会社がなくなったら、私の生活も変わっちゃうかも。悠真さんの会社も影響出るでしょ? 遥花さんだって心配よ」確かに、最近はステアリンググループの株価も低迷し始め、悠真を苦しめていた。夜遅くまで仕事部屋にこもってため息をつく姿を見ると、心が痛む。でも、私は悠真を信じている。彼なら乗り越えられるはずだ。阿左美さんはスマホを置いて、目を閉じた。「……ちょっと、試してみようかな。ユナイトの未来、霊視で覗いてみるわ」「え、でも妊娠中は危ないって……」「大丈夫、少しだけだから」彼女は深呼吸をし、手を組んで集中し始めた。数分後、額に汗が浮かび、顔色
Last Updated: 2026-01-10
Chapter: 第82章・Switchと大豆ハンバーグ*菖蒲
「……あ゛あ゛~! また0番に戻ってる……なにこれクソゲーじゃない!?」「ちょ……菖蒲ちゃん。あんまり"クソゲー”なんて言葉使わない方が。楽屋の外に聞こえちゃうかもしてないよ?」ドラマの撮影が終わり、Switchで『8番出口』を遊んでいた私を、マネージャーの奥野がいさめる。私、大道寺菖蒲。9歳、小学3年生。最近、オーディションで合格して芸能事務所に入り、新人気鋭の子役タレントとして売り出し中だ。「だってさぁ、このゲーム難しいんだもん! 奥野もやってごらんよ」「ゲームかぁ……サラリーマンやってた頃はよくやってたんだけどね。最近はあんまりもうやらなくなっちゃって」「ふぅん。趣味の料理のやりすぎで、腕が鈍っちゃったとか? つまんないの。奥野のざあこ」「う、うわ……どこでそんな言葉覚えてきたの? ざあこなんて言っちゃダメだよ」「ふふっ、ざあこ、ざあこ」奥野の反応が面白くてつい連呼してると、急に楽屋の扉が開いた。やばっ、偉い人に聞かれたかも? と思い、自然と背筋が伸びてしまうが――。「あ、なんだ、田中かぁ……お迎え、遅いんだけど」「す、すみませんお嬢様……道路が込んでおりまして」パパである大道寺悠真の専属ドライバー、田中だった。「じゃあ、帰るとしますかー……ちなみに田中、パパも一緒?」「いえ、悠真様はまだお仕事をされています。なんでも最近、会社の経営状況がかんばしくないとかで……」「あ、それお兄ちゃんも言ってた。なんか買収? とかされちゃいそうなんだっけ、パパの会社」「い、いや……! そんなわけないじゃないですか! 買収されそうなのは傘下のユナイトコーポレーションです」「ふうん。まぁ興味ないけど」と、車の後部座席に乗り込み、シートベルトを締める。田中の車はシトラス系の匂いがする。「……なんかこの芳香剤、キツイ。鼻にツンと刺さるような感じ」「ありゃ……良くなかったですか。すみません、昼間、車内でハンバーグ弁当を食べたもので……匂いを消そうと思ってこれにしちゃいまして」「ハンバーグ弁当!? オエッ! 私、お弁当の冷えたハンバーグ嫌い! 田中ももう齢なんだから、あんま脂っこいもの食べちゃダメよ!」「は、はぁ……お気遣いいただき、嬉しい限りで」「田中さん……今度、大豆ミートのハンバーグ作りますよ。一緒に食べましょう」奥野の提案に、田中が
Last Updated: 2026-01-09
Chapter: 第81章・芽吹きと師匠*蓮
物心ついたのはいつだったろうか。友達は3歳ぐらいだとか、4歳になって幼稚園に入ったころだとか言う。けれど僕の一番古い記憶は、まだ生まれて半年も経たないころのことだ。周りは薄暗い倉庫だった。赤ん坊の僕は、つばの広い帽子をかぶった謎の男に誘拐されてそこにいた。けれどそんな僕を、とあるヒーローが救ってくれたんだ。そのヒーローの名は、sophila――それが、母親である遥花に教えられた名だ。sophilaはかつて遥花のバディであり、僕と妹にとっては師匠だったという。僕の名前は蓮。蓮大道寺。9歳、今年の春で小学4年生になった。双子の妹である菖蒲と、母親の遥花と、父親の悠真と暮らしている。父親――か。悠真は確かに血の繋がりはあるようだけど、本当の父親じゃないと思っている。僕と菖蒲の本当の父親は、どこかにいるはずだ。それこそ、遥花の語るsophilaこそが僕の本当の父親ではないか。つまり、血の繋がりを超え、魂で繋がった存在ではないか、と。sophilaに抱かれていたときの温もりを、今でもはっきり思い出す。とても温かくて、それでいて柔らかくて……父親なら男性のはずだが、sophilaは性別にとらわれない、何か人智を超えるような、女性的な魅力も兼ねそろえた人物なのではないかと考えている。sophilaを思うと、胸がドキドキする。憧れか。ひょっとしたら恋にも似たような気持ちかもしれない。父親だと思いながら恋までしちゃうなんて冷静に考えれば気色悪いが、とにかく僕の中ではそういう特別な存在なのだ。「お兄ちゃん、見て見て! これが菖蒲のスペシャルポーズ!」と、リビングでポーズを取りながら菖蒲が言う。まだ学校から帰ってきたばかりで、ランドセルも床に放り投げたまま。目をキラキラさせながら、いつぞやネットで流行っていたI字バランスをキメている。芸能界に入ったばかりの妹は、そうやって毎日のように新しいポーズを練習しているのだ。「ああ、かわいいかわいい」僕は適当に返事をする。菖蒲は可愛いけど、毎回見せられると飽きる。「もー、お兄ちゃん、もっと本気で褒めてよ!」菖蒲が膨れる。「本気で褒める必要あるか? 菖蒲は可愛いのは事実だろ。それより、早くランドセルをしまって、宿題やったらどうだ。まぁ、僕はもう学校で済ませてきてるけどな」菖蒲はプクッと頰を膨らませて、僕を睨む。「お兄ち
Last Updated: 2026-01-08
Chapter: 第80章・刑務所とカスミソウ*椿
【2025年4月】都内勤務になったのは、つい最近のことだった。佐伯敏夫の働きかけで、ようやく松山支社から、念願叶って進出することができた。円城寺椿、もう33歳、独身。恋人なし。鏡に映る自分は、昔よりずっと疲れた顔をしている。それでもメイクはバッチリ欠かさない。ようやくあの人に会えるのだ。路線は初めて乗る武蔵野線。行先は府中刑務所――隆一様が捕らえられている場所だ。そこで私は、「内縁の妻」だと申し出て、面会することが許された。当然ながら、受刑者との面会なんて人生で初めてだ。それに隆一様と会うのも、もう9年ぶり。まずはお互いのことがわかるだろうかという不安もあった。面会室の椅子に座り、しばらく待つ。館内はBGMがかかってるわけでもなくとても静かで、時計の針がカタッと動く音すら聞こえるほどだった。やがて、刑務官に連れられて、囚人服を着た初老の男性が現れた。その姿を見て、絶句してしまう。面会室の向こうに座る彼は、もう60過ぎではあるけれど、頬はこけ、目も虚ろで、見た目は70代、80代にも見えるほど老け込んでいた。あの頃の、鋭く冷徹な眼光はどこにもない。当然ながら、トレードマークの帽子はかぶっていない。短く刈り揃えられた髪の毛は、グレーだった。「隆一様……」声を震わせた。彼は、ゆっくりと顔を上げた。その目に、わずかな光が宿る。「椿君か……9年ぶりだな」何を言えばよいのか。言おうと思っていたセリフは、先ほどの衝撃のせいですべて頭から抜けてしまった。パクパクとコイのように口を動かしながら、辛うじてこう言う。「ええ……隆一様、がいに(物凄く)、お齢を召されたようで……」隆一様は、フフフと笑って、多少、ゴホッ、ゴホッと咳き込んだ。「見た通りだ……すっかりジジイだろう」認めたくないが、彼のその手もシワだらけだ。息が詰まりそうになる。「椿君、君はとても魅力的な女性になったようだな。まるで孫みたいに思っていた可愛らしい娘が、すっかり大人の女性となって。見違えるようだ」だが、そうして私のことを褒めてもらうと、胸がキュンとする。大人の女性だなんて。例えお世辞だとしても、大好きだった人に私が重ねてきた年齢をそうポジティブに評価してもらえるのは、嬉しくてたまらない。「ずっと……隆一様を待っとったんよ」最初に言おうとしていたセリフを思い出して言うと、彼は苦笑
Last Updated: 2026-01-06
Chapter: 第79章・亀裂と優しさ*遥花
事件から1年が経ったのに、香澄の体はまだsophilaの人格に支配されたままだった。sophilaはいつも優しかった。菖蒲を抱き上げては「大きくなったね」と微笑み、蓮には新しいおもちゃを用意してくれた。でもその笑顔の奥に、どこか寂しさが漂っているのがわかった。相変わらずミルクやおむつの世話はしてくれるけど、自分の子に接しているというより、ベビーシッターのようにただ世話をするだけ。香澄みたいに「双子のヒーロー! 今日は何して遊ぼうか?」とか、「んー! 今日もプリキュアみたいにかわいいぞう!」とかは、もう言ってくれなくなった。ある日、sophilaが静かに言った。「遥花、悠真との再婚、考えてみない?」驚いてsophilaを見る。「どうしてそんなことを……」「香澄はもう戻らないかもしれない。だったら、遥花は幸せになるべきだと思うの。悠真は、遥花を愛してる。毎週会いにくるたび、彼の仕草や言葉からそれが読み取れる。心理学の本に書いてあった通りに」sophilaが、人並の恋愛というものについて知りたくて、最近そういう本を読み漁っているのは知っていた。でも、私との関係を守るためにそうしてくれたのではなかったのか。「そんな話、悠真は一言も……」「香澄と遥花の関係を気にして言えないだけよ。でもここは悠真と"元サヤに戻る”方が、蓮と菖蒲のためにもなるんじゃないかしら」sophilaの言葉は優しかったが、"元サヤに戻る”だなんて。きっと心理学の本に書いてあった覚えたての言葉を使いたかったのだろう。香澄なら、絶対にそんな言葉は使わなかった。人と人との関係なんて常に変化していく。"元サヤに戻る”なんてあり得ない。「sophila、あなたは私のこと、どう思ってるの? 本で勉強して、あなたの気持ちにも整理はついた?」sophilaは、少しだけ目を伏せた。「私は香澄の守護者だから。香澄が愛した人を守りたいと思う」その言葉に、半分はホッとしながら、半分は違和感を覚えた。彼女が私を必要としてくれているのは理解できたが、このモヤモヤする気持ちの正体は一体何なのか……。それから少しずつ、亀裂が生まれていった。sophilaは変わらず優しかったが、私との会話は減った。双子が寝静まった後の、夜の営みの時間も。それまではぎこちないながらも続けてくれていたが、ある夜の行為の後、
Last Updated: 2026-01-05
学園のお嬢様なのにカースト底辺の汗クサ小太り男子の匂いでオ◯ニーしちゃってます💦:香の檻-Cage of Scent

学園のお嬢様なのにカースト底辺の汗クサ小太り男子の匂いでオ◯ニーしちゃってます💦:香の檻-Cage of Scent

学園のお嬢様・香織は、クラスメイトであるカースト底辺男子・拓海の汗と土の匂いを嫌悪しながらも、魔法にかけられたように禁断の自慰に溺れる。拓海は小太りで顔もイマイチだが、香織は彼の真摯さや努力を垣間見、やがて彼に惹かれていく。時に高飛車な態度を取りつつも拓海との親睦を深め始めるが、ある日、非行男子生徒3人による性的な暴行を受けてしまう香織。拓海は香織を救うも、あらぬ疑いをかけられ停学の危機に。香織は拓海を救うため、勇気を振り絞ってとある行動に出た――。 王道純愛ラブストーリーを、詩的な文体とリアルな官能表現満載(自宅・学園内でのオ〇ニー、軽いNTR、初体験、ラブラブ中〇しシーンあり)で送る。
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Chapter: エピローグ:香の鍵
“香りとは檻である”かの詩人がその言葉を呟いたとき、そこにはどんな思いが込められていたのか。もう抜け出せない絶望感からか、あるいは自我を失くすほどの甘美な悦びに酔いしれてか。香りは時として人の心を捕らえる。そして一度囚われると、決して逃れることはできない――鍵を手に入れさえしなければ。果たして詩人は、その先の人生で鍵を得ることはできたのだろうか。春の始まり。2DKの簡素な集合住宅の一室で、情事にふける若い男女の声が響く。若い――と言っても、20代半ば。8年の年月を経て、成熟した大人の体となった、香織と拓海だった。長年スポーツに勤しんでいた拓海の体はすっかり引き締まり、盛り上がった筋肉にぷつぷつと汗が浮き上がっている。一方、香織の体は女性らしい丸みを帯び、柔らかで形の良い乳房も熟れた果実のような膨らみとなっていた。拓海が、香織のポツッと硬くなった乳首にキスをすると、彼女は「ひゃうっ……」と可愛らしい声を上げてのけ反る。その反応に興奮したのか、拓海はますます情熱的に香織の乳首を吸い上げる。「拓海……もうっ、相変わらず赤ちゃんみたいなことする……」「へへ、男の本能ってやつかな。目の前にあると、吸いたくてたまらなくなる」「私達に赤ちゃんができても、同じことするつもりなの?」そ
Last Updated: 2025-07-27
Chapter: 第18話:決戦と解放
夏の日差しを浴びながら、香織は彩花と再び観客席に座っていた。しかし学園のグラウンドではない。より広く、青々とした芝生が広がる区営のグラウンドだった。学園のサッカー部が最も注力していた、「夏の試合」が今から始まろうとしていた。春の終わりのあの日、退学した瀬野らから誘われた時は、まったく行く気にもなれなかったこの試合。まさか自ら望んで観戦することになろうとは、香織自身も思ってもみなかった。いまフィールドに堂々と立つのは、例の試合結果からレギュラーに選ばれた拓海だ。そして彩花が応援していた新入部員もレギュラー入りし、今は拓海の味方として隣で肩を並べていた。香織は彼の汗と土の匂いを想像し、心で祈った。試合開始のホイッスルが鳴り、拓海は動き出す。相手チームは強豪で、序盤から圧倒的な攻勢を仕掛けてきた。拓海の動きにはまだぎこちなさが残り、ボールを奪われるたびに観客席からため息が漏れる。(拓海、頑張って……!)祈るように、香織は心の中で叫んだ。試合の開始前、コーチは拓海にこう戦略を伝えていた。「相手は前線が強い。拓海、お前は中盤で守備を固めつつ、隙を見たら一気に前へ出ろ。チームの逆転はタイミングが命だ」観客には圧されているように見えたが、拓海はほぼコーチの指示通り中盤で守備に徹し、相手の猛攻を食い止めていた。
Last Updated: 2025-07-26
Chapter: 第17話:幸せで神聖な営み
香織と拓海は、直に肌と肌を重ねながら、舌と舌を絡めあいながら、強く求めあった。あの体育館の裏で、瀬野から無理矢理唇を奪われ、口腔を犯されたときとは全然違う。激しいだけでなく、優しさが込もった求め合うキス。どれほど長く重なっていただろうか。やがて唇を離し、互いに見つめ合う。「香織……この先に進んでもいい? 初めてで、うまくできるかわからないけど……」彼の真面目な言葉に、再び香織は頬を赤らめながら、こくんと頷く。だがその時、拓海が動きを止め、慌てたように呟いた。「待てよ……僕、アレ持ってない。まずいよね?」香織が目を上げると、拓海が困った顔でこちらを見ている。彼女がキョトンとする中、彼は「何か……ないかな」と言いながら物置の隅を見回す。ふと、古い棚の埃っぽい角に拓海は目を留めた。そこには、誰かが捨てたらしい未開封のゴムのパッケージが転がっていた。それを拾い上げ、驚いた声を上げる。「何だこれ……こんなとこに置いてあるなんて……一体、誰が?」香織も顔を赤らめながら呟く。「誰かが……使わなかったのかしら。でも、封が切れてないなら……」
Last Updated: 2025-07-25
Chapter: 第16話:もっと近くに
テスト試合の前日、香織は図書室で彩花と話していた。彩花は頬を染め、興奮気味に切り出した。「香織、聞いて! サッカー部の新入部員に、めっちゃかっこいい子がいるの! 明日のテスト試合、絶対応援したいんだけど……一人じゃ恥ずかしくて。ね、付き合ってよ!」香織の心臓がドキンと鳴った。拓海も出る試合だ――彼の試練を近くで見たいが、内緒の恋愛は守らねば。香織は微笑み、彩花の熱意に押される形で答えた。「ふふ、そこまで言うなら付き合うわ。応援、楽しそうね」彩花が目を輝かせ、抱きつく。「やった! 香織と一緒なら、絶対楽しいよ!」香織自身も心の中では楽しみすぎて叫び出したい衝動に駆られながら、努めて冷静なお嬢様を装った。試合当日、香織は彩花と共に観客席に座った。夏の陽射しがグラウンドを照らし、拓海の姿が遠くに見える。彼は緊張した顔でフィールドに立ち、補欠ゆえの不慣れな動きが目立つ。「やっぱりあの新入部員、かっこいい!」彩花がそう興奮して叫ぶ中、香織は拓海の匂いを想像し、心で応援した。試合は拓海のチームが劣勢だった。ライバルの新入部員がドリブルで突破し、ゴールをキメる。守備で追われるばかりの拓海に
Last Updated: 2025-07-24
Chapter: 第15話:“おっぱい”の魔法
数日後、香織は庭園のベンチで拓海を待っていた。夏の陽射しが薔薇の香りを濃くし、彼女の胸は微かな緊張で高鳴っていた。テスト試合を目前に控え、拓海が日に日に押しつぶされそうになっていることを、香織も感じ取っていた。(拓海の頑張りを、ただ待つだけじゃ足りない。私が彼を支えなきゃ……)拓海が現れた。汗で濡れた体操服が小太りな体に貼り付き、疲れ切った顔に無理やり笑みを浮かべている。香織を見つけ、ベンチに腰を下ろした。「香織……今日もこうして会えて、嬉しいよ……」“嬉しい”と言いながらも、彼の声は力なく、汗と土の匂いが濃密に漂う。香織は水筒を差し出し、穏やかに尋ねた。「練習、きつかったでしょ? テスト試合、近づいてるものね」拓海は苦笑し、俯いた。「うん……コーチに『今のお前じゃ無理だ』って言われてさ。ライバル連中も僕のことバカにして……僕、ほんとにレギュラーなんてなれるのかな……」彼の弱音と、匂い――汗と土、疲れ果てて決意が揺らぐようなニュアンス――が、彼女の心を揺さぶる。言葉だけでは足りない。もっと近くで、彼を支えたい。「拓海……ちょっと、こっちに来て」香織は立ち上がり、拓海の手を引い
Last Updated: 2025-07-23
Chapter: 第14話:友情と試練
「彩花、私……恋人が出来ちゃった」ある日の昼休み、学園のカフェスペースの隅で、二人だけで昼食を取っている最中だった。香織の突然の告白に彩花は目を丸くし、持っていたサンドイッチをポロリと床に落とす。「あーっ! 最後に残しておいたタマゴサンドが……!」「わ、大丈夫!?」「うぅっ……埃まみれ……大丈夫じゃないよ! もったいない……」恨みがましい目で彩花は香織を見る。落としたのは自分なのに、香織のせいだとでも言いたげだ。「まさか……今日二人でご飯行こうって言ったのも、それを言うためだったの?」「いや、そういうわけ……でも、あるのかな……」たどたどしく答えながら、「あ、お詫びにこれ食べる?」と言って、弁当箱の中のふっくらとした卵焼きを箸で彩花に差し出す香織。「食べるっ」と言い、彩花は直接食いついた。まるで池に撒かれたエサを頬張るコイのように。「ん~、おいしい! 香織の家の卵焼き、最高~!」「良かった。実は今朝、自分で焼いてみたの」「へぇ、メイドさんが作ってくれたんじゃないんだ!」
Last Updated: 2025-07-22
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