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北川とも
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Novel-novel oleh 北川とも

血と束縛と

血と束縛と

美容外科医の佐伯和彦は、十歳年下の青年・千尋と享楽的な関係を楽しんでいたが、ある日、何者かに拉致されて辱めを受ける。その指示を出したのが、千尋の父親であり、長嶺組組長である賢吾だった。 このことをきっかけに、裏の世界へと引きずり込まれた和彦は、長嶺父子の〈オンナ〉として扱われながらも、さまざまな男たちと出会うことで淫奔な性質をあらわにし、次々と関係を持っていく――。
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Chapter: 第33話(5)
 和彦の異変に気づいた二神が気遣わしげに眉をひそめる。それが申し訳なくて、ますます動揺しそうになったところで、すぐ側までやってきた御堂にそっと肩を抱かれた。「佐伯くん、これから時間はあるかな」「えっ……、あっ、はい。ぼくは予定はないので、大丈夫です」 御堂はわずかに目を細めてから、指先で二神を呼び、何事か耳打ちした。 和彦の見ている前で素早く打ち合わせを終えてしまうと、状況がよく呑み込めないまま和彦は、持っていたバッグを、御堂が伴っていた隊員らしき男に預けた。それから、御堂と二人で車に乗り込む。運転はもちろん、二神だ。 今日も御堂の護衛は厳重で、和彦たちが乗った車が走り出すと、ぴたりと背後から、もう一台の車がついてくる。 振り返ってそれを確認した和彦は、緊張しつつシートに身を預ける。自分がついてきてよかったのだろうかと、いまさらながら戸惑っていた。「……御堂さんは、何か用があったんじゃないですか?」 おずおずと問いかけた和彦に対して、隣に座っている御堂が意味ありげな流し目を寄越してくる。「用というほどのものではないよ。うちの隊は、法要の警備には加わらないからね。ひとまず夏の間に、隊としてきちんと体裁を整えて動けるよういろいろ準備をしているけど、動くのは、隊員や清道会の人間だ。隊長のわたしはこの通り、のんびりしたものだ」「清道会……」 綾瀬の顔と、低くしわがれた声を思い出し、つい視線を伏せる。生々しい光景が脳裡に蘇りそうになったが、御堂からの問いかけで意識を引き戻された。「――佐伯くんは、行くんだろう?」「あっ……、はい。いえ、法要のほうではなく、近くの宿まで。長嶺会長や千尋に誘われたんです。宿でゆっくりしていればいいと言われていますが、本当にそうできるかどうか……」「長嶺の男たちのお守は大変だろう」 迂闊に返事もできず和彦が口ごもると、御堂は軽やかな笑い声を洩らした。「素直な反応だなあ」「……相
Terakhir Diperbarui: 2026-05-31
Chapter: 第33話(4)
 走り出した車の後部座席で、普段より多い人や車の流れを眺める。せっかくの夏休みを、家族や友人、恋人と過ごす人は多いのだろうなと考えてから、我が身を振り返る。知らず知らずのうちに苦笑が洩れていた。 自分のことを〈オンナ〉にしている男たちのことを、世間ではどう呼ぶのだろうかと、少しだけ皮肉っぽく、そして自虐的に考えてみた。だからといって和彦は、長嶺の男を憎んだり、恨んでいるわけではない。執着され、庇護されるということは、一種の麻薬だ。苦しい反面、とても心地いいし、安堵感すら覚えるようになる。 まるで夏の陽射しだ――。  和彦はウィンドーに顔を寄せ、食い入るように外を見つめる。残念ながらスモークフィルム越しでは、どんなに強烈な陽射しも遮られてしまう。 ふと和彦は、ほんの数日前に味わった汗ばむほど熱い抱擁を思い出し、次に、こう心の中で呟いていた。 鷹津は今ごろ、何をしているだろうか、と。 ハッと我に返り、シートの上で身じろぐ。鷹津のことを気にかけた自分に驚いていた。 番犬として刑事の鷹津を利用し、必要に応じて体を与えるうちに情を通わせるようにはなっていたが、それでも離れてしまえば、心の隅に収納できるだけの冷静さ――分別があった。しかし今の和彦は、ごく自然に、まるで長嶺の男たちを想うように、鷹津を想った。〈オンナ〉という言葉の威力だろうかと、和彦は密かに慄然とする。鷹津とのやり取りが、いまさらながら耳元に蘇っていた。 マンションから本部に向かう途中、こまごまとした買い物を済ませるつもりだったが、そんな気分ではなくなっていた。 黙り込んだままの和彦を乗せ、 車は静かに総和会本部のアプローチを通り、駐車場へと入る。いつもより停まっている車の数が多いのは、明日の法要と関係があるのかもしれない。準備や警備などのため、今日出発する関係者もいるだろう。 ドアが開けられ、車を降りた和彦の傍らから、すかさず手が差し出される。「バッグをお持ちします」「いえ、大丈夫です。重くないですから」 何か言いたげな顔の護衛に対して、和彦は微笑で返す。そのまま歩き出したが、すぐにある光景が視界に入り、結局足を止めていた。 車
Terakhir Diperbarui: 2026-05-31
Chapter: 第33話(3)
 それでも、鷹津とのことを知られるわけにはいかなかった。当然、自分から口にするはずもない。 保身のためもあるが、自分のせいで鷹津が何かを失うのは、やはり嫌なのだ。「……何かあった?」 囁きながら千尋がもう一度唇を重ねてくる。和彦は、茶色の髪を優しく指で梳いた。「何も、と言いたいところだが、ここにいると、いろいろあるから……」 千尋の眼差しがスッと鋭さを帯びる。その変化を目の当たりにして和彦はドキリとした。「千尋?」「先生から目を離すと、危ないんだよな。自覚なく、性質の悪い男を引き寄せて、骨抜きにするから。――もしかして最近は、自覚があったりして」 口調は冗談っぽくありながら、千尋の表情は真剣だった。こういうときの千尋は、厄介だ。次の行動が予測できず、とんでもない暴走をしそうなのだ。 和彦の奔放さに対して、嫉妬や独占欲とのつき合い方は上手いと話す千尋は、事実、年齢に見合わない寛大さを示しているといえる。一方で、何かの拍子に激しい感情を発露させることもあるのだ。そうやって千尋は、荒々しい感情のバランスを取っている。とても危うく。 それを受け止めることは、自分の役割であり、義務ですらあると和彦は考えていた。「自覚があったら、ぼくを嫌いになるか?」「悪いオンナ、っていう自覚か……。エロい響き」 バカ、と一言呟いた和彦は、千尋の頭を軽く小突く。すぐに手を引こうとしたが、その手を千尋に掴まれた。子供が甘えてくるように額と額を合わせてきたかと思うと、頬ずりをされ、首筋に顔が寄せられる。肌に触れる息遣いがくすぐったくて、和彦は小さく笑い声を洩らした。「子犬にじゃれつかれているみたいだ」「子犬?」「……別に、可愛いという意味で言ったんじゃないからな」 和彦が念を押すと、千尋が唇を尖らせる。あざといほど子供っぽい仕種だが、和彦には効果的だと、千尋はよくわかっているのだろう。「悪いオンナの周りには、食えない大人の男ばかりだからね。――こういうのも新鮮だろ?」
Terakhir Diperbarui: 2026-05-31
Chapter: 第33話(2)
「だってさあ、俺、せっかくの夏なのに、夏らしいこと何もしてないんだよ? 去年もそれなりに忙しかったけど、今年ほどじゃなかった。だからせめて、こういうときぐらい、楽しむとまではいかなくても、ゆっくりしたいなあ、って」「意地悪を言うつもりはないが、ゆっくりしたいなら、ぼくが行かなくてもできるだろ」「――長嶺の男たちが一堂に会するのに、あんたがいなくてどうする」 突然、二人の会話に割って入ったのは、いつからそこにいたのか、開いた襖の傍らに立った守光だった。入っていいかと問われて頷くと、守光が二人の傍らに座る。このとき、畳んだ服の山にちらりと視線が向けられ、和彦はさりげなく自分の背後に隠す。「すみません、片付けている途中だったもので……」「この部屋も、ずいぶんあんたの私物が増えた。どうにかしないとな」「クリニックが休みに入ったら、少しマンションに持ち帰ろうかと思っています」「いや、そういうことではなくて――……、まあ、今はそのことはいい。法要のことだ」 守光にひたと見つめられ、和彦は背筋を伸ばす。すると守光が、淡い笑みをこぼした。「堅苦しい話をするわけではないんだ。楽にしてくれないか、先生」「あっ、はい……」 そう言われて、和彦は肩からわずかに力を抜く。「先日、あんたが名簿を見たときに言っただろう。ちょっとした行事があると。それが、総和会が毎回執り行っている初代の法要だ。花見会は、世代を超えた交流会のような側面があるが、法要はあくまで内輪の集まり。花見会のように華やかな行事にはならん。形式にそって粛々と進むだけだ」 淡々とした口調でここまで話した守光が、次の瞬間、ニヤリと笑った。食えない笑い顔は、雰囲気が賢吾とよく似ている。「総和会として大事なのは法要だが、長嶺組……長嶺の家にとって大事なのは、そのあとだ」「あと、ですか?」「宿を移して、ささやかに休養をとる。今は、わしや賢吾だけじゃなく、長嶺の男として千尋もがんばってくれたからな。家族旅行のようなものだ」 
Terakhir Diperbarui: 2026-05-31
Chapter: 第33話(1)
 畳んだ自分の服を抱え、和彦は小さく唸り声を洩らす。守光から与えられている客間は、すっかりもう和彦の自室という様相だ。 自宅マンションから必要に応じて服などを持ってきてもらっているためだが、客人らしく、遠慮しつつ部屋を使っているつもりだったのだ。なのに昨日、これを使ってくださいと、とうとう衣類用の収納ケースが客間に運び込まれてしまった。 勘繰りたくはないが、『和彦のために』と言いながら、これから本格的に家具が配置されていくのではないかと、つい身構えてしまう。「……少し、マンションに持って帰ろうかな……」 せっかくクリニックが休みになるのだし、と声に出さずに続ける。 世間はいよいよ、盆休みに突入する。多忙な生活を送っている和彦としては、堂々とクリニックを閉められる行事は歓迎したいところだが、ゆっくりできると素直に喜べるほど能天気ではない。これまでの経験で、休日を自由に過ごせた試しがないのだ。 明日から約一週間、クリニックを閉めることになるが、どれぐらい休日として過ごせるだろうかと、すでにもう戦々恐々としている。 できることならマンションに戻り、のんびりと寛ぎたいところだが、そういう希望すら、まだ守光に切り出せないでいた。 一人になりたいと思いつつ、一人になるのが少し怖いという気持ちも和彦にはあった。 数日前の鷹津との狂おしい行為を思い返した途端、胸の奥が妖しくざわつく。鷹津の腕の中で肉欲の獣に成り果てたときの高揚感は忘れ難い。同時に、鷹津の強引さに屈服させられた自身の浅ましさを、痛感もさせられる。 鷹津との間にあったことを誰かに知られたらと考えると、寒気がする。賢吾にもさんざん指摘されてきたが、和彦は隠し事には向かない性格だ。特に、特別な関係を持つ男のことについては。 長嶺の男は怖い――と、心の中でひっそりと呟いたとき、客間の外で騒々しい足音が聞こえてくる。和彦が知る限り、こんなににぎやかな気配を立てる人間は一人しかいない。ぎょっとすると同時に襖が開き、慌しく千尋が飛び込んできた。「――先生、海に行こうっ」 夏休みを待ちわびていた小学生かと思いつつ、和彦
Terakhir Diperbarui: 2026-05-31
Chapter: 第32話(33)
 早く体を離さなければと危機感を抱きながらも、心の大部分では、今味わっている心地よさを手放せないでいた。それは鷹津も同じらしく、再び緩やかに腰を揺らし始めたかと思うと、内奥に収まっている欲望が熱さと硬さを取り戻していく。まだ、興奮しているのだ。「あぁ――……」 和彦が吐息をこぼすと、鷹津がわずかに唇を緩めた。「まだ俺を、欲しがってるな。お前の尻がいやらしく吸い付いて、締まりまくっている。俺のオンナになれて、そんなに嬉しいか」「……うる、さい……」 内奥深くをぐうっと突き上げられて、喉を反らして尾を引く悦びの声を上げる。露わになった和彦の首筋を舐め上げて、鷹津が囁いてきた。「もう一度犯してやる。俺の汗と精液の匂いがこびりつくほど、たっぷりとな」 和彦が感じたのは恐怖でも嫌悪でもなく、狂おしい肉欲の疼きだった。すでに二度も精を放ったというのに、熱いものが出口を求めて、体の奥でドロドロと渦巻いている。 鷹津の舌先に胸の突起を転がされ、激しく濡れた音を立てて吸われてから、歯を立てられる。痕跡を残すなと、もう言えなかった。 蕩けた和彦を見下ろして、鷹津が真剣な表情で肌にてのひらを這わせてくる。〈オンナ〉となった和彦の存在を確かめるかのような手つきに、鷹津が変わったのか、自分が変わったのか、和彦はひどく感じてしまう。「あっ、やめっ――」 力を失った欲望をてのひらに包み込まれ、上擦った声を洩らす。「今の乱れっぷりなら、空になるほど精液を搾り取れそうだな」 淫らで物騒なことを呟きながら、鷹津の手が柔らかな膨らみにかかる。きつく揉みしだかれて、和彦は腰をくねらせて反応しながら、食い千切らんばかりに内奥で脈打つ欲望を締め付ける。すがるように鷹津を見上げると、どこか恍惚としたような笑みを向けられた。「……忌々しいほど、いいオンナだ。お前は。わかっていても、骨抜きになる。……クソむかつく」 次の瞬間、内奥から欲望が引き抜かれ、和彦の体は乱暴にうつ伏せにされて腰を抱え上げ
Terakhir Diperbarui: 2026-05-30
SWEET×SWEET

SWEET×SWEET

システムエンジニアの啓太郎は仕事で疲れきっている中、マンションの隣室に住む引きこもり青年・裕貴と知り合う。 生意気で、小悪魔のようでありながら、妙に愛情深いところもある裕貴に食事の面倒を見てもらっているうちに親交を深め、そこで啓太郎は、裕貴の内面にも次第に立ち入ることになる。 裕貴と特別な関係となった啓太郎の前に、裕貴の兄・博人が姿を見せるが、兄弟の間には誰にも言えない秘密があり――。
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Chapter: -109-
「好き嫌いというより、鬱陶しいほうに見慣れてるからな」 「素直じゃないなあ」 そう言って裕貴はクスクスと笑い、啓太郎にしがみついてくる。息もできないほどの強烈な欲情に襲われた瞬間だった。  いつもは、ここで自分をコントロールすることができたのだ。どんなにつらくても、金で裕貴を自由にしているという意識が歯止めになり、暴走を止めていた。だが今、裕貴との間にあるのは『金』のやり取りではなく、『想い』のやり取りだ。そのうえで、自分たちの今の行為がある。 啓太郎は、裕貴の髪に唇を押し当て、耳から首筋へと愛撫しながら、スウェットパンツと下着を引き下ろし、同時に、余裕という言葉をかなぐり捨てていた。 裕貴の腰を引き寄せて、指で綻ばせた内奥の入り口へと高ぶった欲望を押し当てた。すると裕貴の唇から熱い吐息が洩れ、その響きに啓太郎はゾクリと疼きを感じる。「……最初はゆっくりしてね」 背に回した腕に力を込めながら裕貴が言い、柔らかな髪を手荒く撫でて啓太郎は頷く。「痛かったら言え」 「そんなこと言ってたら、啓太郎、何もできないよ」 啓太郎がちらりと苦笑を洩らすと、上目遣いに見上げてきた裕貴もにやりと笑う。だがすぐに厳かな気持ちで――大げさではなく、啓太郎はこれ以上なく真剣なのだ――動き始めた。 慎重に腰を進めて裕貴の内奥へと押し入る。きつい収縮感に怯みそうになりながらも、それでも裕貴の奥を暴きたいという誘惑には勝てない。「んあっ……」 逞しい部分を含ませた途端、裕貴が声を上げる。苦しみを和らげようと、啓太郎は顔中に唇を押し当て、何度も髪を撫でていたが、ふいに裕貴が言った。「なんで唇にはキスしてくれないの?」 予想外の質問に目を丸くした啓太郎は、指先で裕貴の唇を撫でる。「さっき口で、お前に、その――……。俺はいいけど、お前が唇にキスされるのは抵抗あるんじゃないかと思ってな」 言い終わると同時に頭を引き寄せられ、唇を塞がれた。口腔に裕貴の熱い舌が差し込まれ、舐め回される。キスの勢いに背を押されるように、啓太郎はさらに深く裕貴の中に押し入っ
Terakhir Diperbarui: 2026-05-31
Chapter: -108-
 きつく吸い上げたあとに、甘やかすように舌を絡めると、裕貴は全身を震わせて悦んだ。そうしながら根元から指の輪で締めるように擦り上げる。堪えきれないように裕貴の両手が頭にかかり、嫌がるように求めるように、髪を掻き乱された。「け、太郎……。啓太郎っ――」 切なげな声に誘われ顔を上げた啓太郎は、薄い腹部に唇を押し当てる。次の瞬間、ぐいっと裕貴の片足を抱え上げて胸に押し付けると、唾液で濡らした指で裕貴の秘められた場所をまさぐった。「あっ」 声を上げた裕貴が顔を背ける。啓太郎はこめかみに唇を寄せながら、いつものように慎重に内奥をまさぐる。裕貴が必死に頭を抱き締めてきた。「くうん……」 内奥に指を付け根まで収めると、裕貴が小さく鳴く。啓太郎はできるだけ優しい声で問いかけた。「痛いか?」 「いつも同じこと聞く」 そう言って裕貴は笑ったが、内奥に挿入した指を蠢かした途端、唇を引き結んだ。  繊細で傷つきやすい場所を、啓太郎は丁寧に綻ばせていく。いつも以上に感じさせてやろうという気になるのは、きっとこのあとで、裕貴に苦痛を味わわせるとわかっているからだ。「あっ、あっ、あっ……」 襞や粘膜を撫でるように擦り上げ、ときおり指を出し入れする。内奥がひくつくようにして指を締め付けてくるが、ただやみくもに反応しているわけではない。啓太郎の指の動きに合わせているのだ。 啓太郎は裕貴の頬にキスしてから体を起こす。反り返ってトロトロと透明なしずくを滴らせ続けている裕貴のものを再びてのひらで包み込むと、上下に扱きながら、内奥で円を描くように指を動かしてやる。  裕貴の中は柔軟に啓太郎の指の動きを受け止めながら、それでも必死に締め付けてくる。「うぅ、くうん」 切なげな声を上げて裕貴が腰を揺らす。それを合図に、啓太郎はもう一本の指を内奥に含ませ、抉るように刺激した。「ふっ、ああっ……、ダメ、だよ、啓太郎、もうダメっ――」 「まだだ。いつもは、もう少しもつだろ?」 「……バカ。いつもと、全然違うじゃん」 裕貴の素直な反応に、啓太郎の中で加虐的なものが誘発される。ひどいことをしたいわけではなく、裕貴を快感で狂わせてしまいたいという気持ちだ。 指で触れる限り、裕貴が一番敏感に反応する内奥の浅い部分を探り当て、軽く擦り上げる。「んっ」 微かに声を洩らして裕貴が首をす
Terakhir Diperbarui: 2026-05-30
Chapter: -107-
「本当に、もう黙っていろ……」 優しく裕貴のものをてのひらに包み込むと、注意するまでもなく裕貴は唇を噛んで顔を背ける。何度触れようが、裕貴のこの反応は変わらない。  この反応が曲者なのだ。こんな行為に慣れているように見える一方で、ひどく初々しく見えたりもして、そのギャップに啓太郎は参ってしまう。 柔らかく互いの唇を吸い合いながら、てのひらに包み込んだものを丁寧に擦り上げているうちに、裕貴の息遣いが忙しくなり、啓太郎の下で切なげに身をしならせ始める。 赤く染まりつつある裕貴の目元に唇を押し当ててから、もう片方の手で胸元を撫でる。さきほどから硬く凝っていた胸の小さな突起に触れた途端、裕貴が喉の奥から声にならない声を上げた。「んあ……」 啓太郎はわずかに口元を綻ばせてから、もう一つの突起を舌先でくすぐる。ビクンと胸を震わせて、裕貴の両手が必死に啓太郎の肩を掴んでくる。「啓太郎っ、これ、いつもと変わらない。おればかりっ……」 かまわず啓太郎は、片方の突起は指で摘まみ上げ、もう片方の突起はきつく吸い上げた。てのひらの中で裕貴のものは、本人よりもずっと素直に反応し、ゆっくりと熱くなってしなり始めていた。 もっと濃厚な愛撫を求めるように裕貴の腰が揺れだす頃、顔を上げた啓太郎は、裕貴の欲望の高まりを裕貴自身に教えるため、反り返ったものの形を指でなぞる。このとき裕貴は、自分の欲望に羞恥したような表情を見せながら、啓太郎を睨んでくるのだ。  生意気だ、と口中で呟き、啓太郎は今度は柔らかな膨らみを慎重にまさぐる。「くうっ……ん」 指を蠢かすたびに裕貴の腰が震え、ここを攻めている間だけは裕貴は従順になる。膝に手をかけただけで啓太郎の意図がわかったように、自ら足を抱えるようにしておずおずと左右に開くのだ。「……ここ、気持ちいいか?」 「バカ」 尋ねてすぐに返ってきた答えに、思わず笑ってしまう。 白い両膝にキスしてから内腿にも唇を這わせると、裕貴は背を仰け反らせるようにして笑い声を上げた。「くすぐったいよ。そんなふうにされると」 「我慢しろ」 「啓太郎を蹴り飛ばすかもしれないよ?」 「なおさら我慢しろ」 「なんだよ、それ――」 最初は笑い声を上げていた裕貴だが、啓太郎が内腿に丹念に舌を這わせるようになると、首をすくめるようにして声を堪え、ぎゅっとシ
Terakhir Diperbarui: 2026-05-30
Chapter: -106-
 舌を絡め合い、唾液を交わしながら、啓太郎はセーターをたくし上げて、いつもの手順で裕貴の脇腹を撫で上げ、胸元へとてのひらを這わせる。荒い息を吐き、今度は薄い腹部へと唇を押し当てた。  少しずつ顔を上げていきながら、もどかしい思いでセーターを脱がせ、コットンパンツの前に手を這わせる。このとき裕貴の息遣いがわずかに弾んだ。 ボタンを外してファスナーを下ろすと、下着ごとコットンパンツを脱がせ、裕貴を何も身につけていない姿にする。いつもはこれで、啓太郎が一方的に裕貴の体に触れて、快感を与えるだけだった。しかし、今日からは違う。 裕貴がゆっくりと視線を上げ、啓太郎の腕に手をかけながら言った。「――啓太郎も脱いでよ。これまでと、違うんだろ?」 挑発されていると感じ、ムキになった啓太郎はトレーナーを脱ぎ捨て、上半身裸になる。裕貴はそっと目を細め、啓太郎の腕や肩、胸元から腹部へとゆっくりとてのひらを這わせてきた。感触を確かめるように。 啓太郎は、自分が誰かと比べられているのだろうかと、いいようのない不安を覚える。一方で、肌に触れる感触がくすぐったくて心地いい。  これ以上裕貴に翻弄されてはいけないと我に返った啓太郎は、裕貴の両手首を掴んでベッドに押さえつけ、わざと威圧するようにのしかかる。驚いたように裕貴は今度は目を丸くして、じっと見上げてきた。「啓太郎……」 「黙ってろ」 傲慢に言い放って裕貴の首筋に顔を埋める。強い気持ちを刻みつけるように白い首筋をいきなり吸い上げてから、軽く歯を立てる。裕貴がビクリと体を震わせ身じろいだが、啓太郎は手首を掴んだ手に力を込め、動くなと態度で示した。「啓太郎、いつになく強引?」 クスクスと笑い声を洩らしながら裕貴に言われ、啓太郎はもう一度白い首筋に軽く噛み付く。まだ、裕貴は余裕だ。  こいつの手から主導権を奪い取ってやると思いながら、熱心な愛撫を啓太郎は続ける。 丹念に耳の形を舌先でなぞり、耳の裏にまで唇を這わせる。合間に裕貴の体にてのひらを這わせ、滑らかな肌が次第に熱を帯び始めているのを感じていた。  腰から腿へとてのひらを移動させ、膝に手をかけて足を開かせようとする。すると裕貴の足に力が入り、物言いたげに見つめられた。その表情の意味を、啓太郎は勝手に解釈する。 安心させるように裕貴に笑いかけた。「心配するな。
Terakhir Diperbarui: 2026-05-29
Chapter: -105-
「啓太郎が真剣な顔して、怖い声出すから、ドキドキしてきた」 「……俺はいつも、そんなにヘラヘラしているか?」 思わず問いかけてから、啓太郎は顔をしかめる。話が逸れていることに気づいたからだ。「いや、そんなことはどうでもよくて――」 「啓太郎が欲しいものって何?」 啓太郎の言葉に被せるように裕貴が言い、きつい眼差しを向けてくる。  寸前まで猫みたいに甘えてきて、はにかんだ笑みも見せていたというのに、もう表情を一変させているのだ。そんな裕貴に、情けないほど啓太郎は翻弄され、魅了されている。「わかっているのに聞くのか」 「おれの勘違いかもしれないから、聞きたい」 裕貴の首から外したマフラーを傍らのデスクの上に置き、啓太郎は熱くなった滑らかな頬を両手で包み込む。「――お前に触れたい」 囁きながら裕貴の額に軽くキスして、唇にも触れようとする。すると裕貴が声を洩らして笑った。「いっつもおれに触りたい放題じゃん」 「違う。触らせてもらってるんだ。……お前に金を払って、俺はお前を買ってた」 「合意なんだから、そんな卑下た言い方しなくていいよ」 「お前に金を払っている限り、この感覚は抜けない。だからお前に、もう金を払いたくないんだ」 裕貴に片手を取られ、てのひらにそっと唇が押し当てられる。たったそれだけの行為に、啓太郎の体中に熱い疼きが駆け抜けた。「今から俺たちの関係は変えられるか?」 「啓太郎が望むなら」 「……だから、その言い方はずるいだろ」 このとき裕貴が痛みを感じたように唇を歪める。今にも泣き出すのかと、一瞬啓太郎は焦ったぐらいだ。  裕貴はもう片方のてのひらにも唇を押し当ててから、自分の頬をすり寄せてくる。「おれが引きこもっているのは、臆病だからだよ。これ以上何からも拒絶されたくないからだ。……おれからは望まない。求められて応えるほうが、ずっと幸せだし、つらくない」 裕貴が引きこもっている事情は、やはりそう単純なものではないのだ。何かしらの絶望を味わって、傷を癒すためにこの部屋に閉じこもる必要があったのだ。  それはもしかすると、裕貴に巧みなキスを教えた人物と関係あるのかもしれない。  邪推の域を出ない考えに囚われた途端、啓太郎の中に嫉妬の炎が燃え上がる。「だったらお前は、求めてくる人間だったら、誰でもいいのか?」 
Terakhir Diperbarui: 2026-05-28
Chapter: -104-
「なん、だ……」 マフラーの端を手で弄びながら裕貴が側に歩み寄ってくる。本当に酔っているのか、足元が少し覚束ない。  肩に額が押し当てられ、ごく自然な流れで啓太郎は裕貴の頭を片手で抱き寄せる。「ものすごく言いにくいんだけど」 そんな裕貴の切り出し方に、思わず啓太郎はドキリとする。何か不吉なことを言われるのではないかと身構えたのだ。だが、顔を上げた裕貴の悪戯っぽい笑みを見ると、どうやら違うらしい。「……お前にも言いにくいことなんて、あったのか」 「あるよ。こんないいプレゼントをもらったあとだからさ」 軽く受け流すことができなかった。心底照れた啓太郎は、顔を背けてしまう。そんな啓太郎の反応の意味を、聡い裕貴はわかっているはずなのに、からかいはしなかった。「言いにくいことってなんだ。もったいぶらずに早く言え」 「啓太郎に、クリスマスプレゼントを用意してないんだよ、おれ」 そんなことかと、拍子抜けした。  啓太郎は片手でガシガシと頭を掻きながら、短く息を吐き出す。「俺はいい……。別にお前から何かもらおうと思って、買ってきたわけじゃないしな」 「なら、欲しいものはないわけ?」 裕貴から挑発的な眼差しを向けられ、咄嗟に何も言えなかった。  啓太郎は心の中で、裕貴はやはり不揃いに伸びた髪のほうがいいと痛感する。そうでないと、いつもこの際どい眼差しを向けられ、うろたえなければならないのだ。 頭に血が上りすぎて、何も考えられない。おかげで本能のみが剥き出しになっていく。裕貴の前で取り繕っていた年上としての体面など、とっくにどこかに消えていた。「――……欲しいものがあると言ったら、くれるのか?」 「努力はするよ」 啓太郎はムッと唇をへの字に曲げる。すると裕貴がおもしろがるように頬をつついてきた。「お前、俺が何を言うかわかったうえで、そんなこと言ってるだろ」 「何、ヤバイことでも言う気なわけ?」 からかわれて怒りたいのに、そうできない。  ――惚れた弱みだ。 負け惜しみではないが、苦々しく啓太郎は呟いた。「……どっちがずるいんだ」 「さあね」 そう言いながら裕貴が体を寄せて、啓太郎の背に両腕を回してくる。トレーナーを通してじんわりと伝わってくる体温が、狂おしい想いに火をつけてしまった。ここが啓太郎の限界だ。  のろのろと裕貴の肩
Terakhir Diperbarui: 2026-05-28
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