Chapter: 第14話 彼の気持ちディートハルトは私の肩をつかんだ。「ど、どこか悪いの?」彼の声が少し震えていた。「ううん、体は……大丈夫。お義母様の紹介で、不妊の……病院に行ってきたの」「不妊て……」「うん……。女医さんで、すごく優しく話を聞いてくれたの……。 なんかうれしくなっちゃって」「今日色々診てもらったけど、妊娠するには問題ない体だって……言われたよ」私はディートハルトの腕をつかみ、その美しい翡翠の瞳に問いかけた。「ディー、子供……作らない……?」言ったあと、体中の熱が顔に集まり、心臓の音がディートハルトに聞こえるんじゃないかと思った。彼をみると、翡翠の瞳が揺れていた。そして、視線を——外された。ドクン……。胸が重くなり、手で押さえた。私は、ガウンの紐を外しシースルーのナイトドレスになった。「私じゃ……ダメかな……。女性として——見られない?」ディートハルトをつかんでいる手が震えてきた。ガバッとディートハルトに強く抱きしめられた。「アーシュはどこから見ても、素敵だよ。そんなこと言わないで……」「うん……。じゃあ……」ディートハルトも同じ気持ちになってくれたのかな……?私はディートハルトの力強い腕や胸板にドキドキしていた。幼なじみの友人から、男性として……。「でも、子供はもう少し待ってほしい……」「もう少し……?」「あぁ、今はお互い若いし、仕事が楽しいだろ? だから、子供はもう少し落ち着いてからにしたいんだ。もちろん母さんに何か言われたら、俺がちゃんと言うから。もう少しだけ待ってほしい……」ディートハルトの真剣な気持ちが伝わってきて、私はうなずくことしかできなかった。拒否はされなかっただけ、良しと思わなきゃいけないのかな。「じゃあ、寝よ
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-07-08
Chapter: 第13話 カメリア治療院 「はい、お義母様どうぞお入りください」お義母様が訪ねてくるなんて、初めてだった。「おはよう、アーシュレイ」「おはようございます、お義母様」私はお義母様に一礼した。「手短に話すわね。仕事帰りにここに寄ってほしいの」お義母様から一枚の封筒を渡された。「ここは王宮と我が家のちょうど中間地点だから、通いやすいはずよ。話は通してあるから……。では、忙しい時に悪かったわね」そういってお義母様は部屋を出ていった。なにかしら……。私は封筒を開けた。するとそこには不妊専門病院『カメリア治療院』と書かれた文字が目に飛び込んできた。「不妊治療……」不妊も何も、一度も……。私はため息をついて、その封筒を仕事用のバッグに入れた。◇◇◇ 「アーシュレイ様ですね、お待ちしておりました。こちらにどうぞ……」今日は定時に上がり、お義母様に言われたとおりにカメリア治療院にやってきた。外観は治療院の看板もなく、淡いピンク色の可愛い建物だった。 伯爵家の馬車で連れていってもらえなかったら、まず見つけられないだろう。建物の内装も、白やピンクを基調としていて家具や調度品は落ち着いたものが多く、とても居心地が良い。完全個室で、この時間は他の患者さんはいないようだ。もしかして、貸し切りなのだろうか……。さすが、お義母様……。確かに嫡男の嫁が不妊症なんて、噂がたったら……。待合室で待っていると、診察室のドアが開き、優しそうな50代くらいの女医さんが迎えてくれた。「はじめまして、私はノエルと言います。今日は不妊のお悩みとお義母様から聞いていますが……」どうしよう……、なんて説明すれば良いのやら。ノエル先生は柔らかな笑みを浮かべた。「こういったことって、言いにくいですよね。うちは完全個室で、この時間はアーシュレイ様しかおりません。秘密も守りますので、どうぞ悩んでいることがあったら打ち明けてください。私で力になれることがあったら、お手伝いいたしします」先生がここまで言ってくれるなら……、正直に話しても良いよね。「実は……、お義母様には言えなかったのですが。その……、子作りを一度もしていないんです……」わたしは膝の上の拳をギュッと握った。「夫にはそれとなく言ってみたのですが、いつもはぐらかされてしまって……。ここに来る以前の問題ですよね」私は、乾い
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-07-07
Chapter: 第12話 二人の誓い「アーシュ、これからちょっと出かけない? 気分転換にさ」「あ、うん……。そうね、たまにはいいわね」 このまま屋敷にいて、またお義母様と顔を合わせるのも気まずい。 私たちは馬車に乗り込み、心地よい揺れの中、景色を楽しんだ。ディートハルトはいまだ無言だ。さっきのこと、まだ怒っているのかな……。私は隣に座るディートハルトの袖をつかんだ。「ん? どうした?」思いもよらず、彼の甘い声に頬が熱くなる。「あっ、さっきのこと……。大丈夫?」「あ……、うん。母さんがごめん……。アーシュに嫌な思いさせちゃったね」ディートハルトがそう言って、手を絡めてきた。私も素直に甘えることにした。「うん、少しね。でも、そういう約束ではあったから……。仕方ないよ……」私はディートハルトの肩に頭をのせた。細く華奢だった肩は、今では分厚く逞しい肩へと変わっていた。「ディーは本当に逞しくなっちゃったね。昔は私の方が大きかったのに」「ははは、いつの話をしてるんだよ」「出会った頃よ」「確かに、あの頃はアーシュの方が大きかったよね」「私のことを庭師の娘だと勘違いしてたし……」「あ、それは仕方ないだろう! 普通の令嬢はあんな格好もしないし、水やりもしないよ」私たちは目が合い、どちらからともなく笑った。こんなに、気兼ねなく話したのは——いつ以来だろうか……。そんなことを思っていると、馬車が止まった。「着いたみたいだね。じゃあ、降りようか」「ここは……」懐かしい景色……。「ずっと忙しくて来られなかっただろう?」「うん……」馬車を降りると、従者が花束を渡してくれた。「ありがとう」私は従者にお礼を言った。「行ってらっしゃいませ」従者が一礼した。私はディートハルトのエスコートで、目的の場所まで行った。広々とした貴族専用墓地には、季節の花々や草木が綺麗に手入れされていた。私は目の前の墓石に花束を置いた。墓石にはおじい様とおばあ様の名前が刻まれていた。おばあ様は私が生まれて間もなく亡くなり、おじい様の作業台には、いつもおばあ様の写真とお花が飾られていた。「おじい様、おばあ様、ご無沙汰しております。ご報告が遅くなりましたが、私ディートハルトと結婚しました。喜んでくれるかな? 私……、伯爵邸で大事にされているわ。おじい様の勤めていた、王宮の魔道具課
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-07-07
Chapter: 第11話 お義母様とテラスで結婚してから生活リズムが整い、とても充実した日々を送っている。 しかし、一つ問題がある。 ……ディートハルトが帰ってこない。 正確には、帰ってきてはいる。 結婚してから一応同じベッドで寝ているが、深夜にディートハルトが帰宅して朝早く出発してしまうのだ。 いまだ初夜は行われていない。 私は毎夜、カトレーヌに湯あみできれいにされて、透け感のあるナイトドレスを着せてもらっている。 週末の晩餐でお義母様から、「そろそろなんじゃないの?」という視線が刺さる……。 先に結婚したディートハルトの弟夫婦が妊娠したと、うれしそうに報告していた。 義両親も目を細め、義妹を気遣っていた。 ——今日は金曜日。 明日は私もディートハルトも仕事がお休み……。 今夜こそ初夜を決行しないと——私の立場が危うい。 今夜は寝ずに待っていよう。 私は大好きな月刊魔道具という雑誌を開いた。 月刊誌で、今一番熱い魔道具の紹介やレシピ、研究者の紹介などが書かれている。 私の愛読書で、いつか私もこの雑誌に載ることが夢なのだ。 キィ……と扉が開いた。 扉に目を向けると、瞳を大きく開いたディートハルトと目が合った。 「アーシュ、どうしたんだ?」 「おかえりなさい。いつも先に寝てしまうから、今日こそは起きて待っていようと思ったの……」 「そ、そうか……。ありがとう」 彼の視線が泳ぎ、目が合わなくなった。 「何か飲む?」 「あぁ、ありがとう」 カトレーヌが用意しておいてくれた、保温力抜群の魔道具ポットからお茶を入れる。 「疲れが取れる、ハーブティーよ」 「あ、ありがとう」 ディートハルトは形の良い唇で、ハーブティーを口に含んだ。 喉仏がゆっくりと上下し、私は目を離せなかった。 (なんだか、私より色気がある……) これから初夜のやり直しをすると思うと、心拍数が上がっていった。 ——でも、頑張らないと……。 私は早くなる鼓動を押さえて、立ち上がった。 「な、なんだか暑いわね……」 私は上に着ていた厚手のガウンを脱いだ。 薄手のナイトドレスは下着が透けていて、体のラインが良く見えるものだ。 チラリとディートハルトを見ると、こちらを見て口を結んだ。 (良かった……、効果はあった
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Chapter: 第10話 酔っているの? 「はぁ~、可愛い……」ディートハルトはその力強い腕で、私を抱きしめてきた。 「やっと、一緒になれたね。この日をどんなに待っていたか」やっと……って——何言っているの……?彼の体が火照り、私の体まで伝わってきた。あ……。「ディー、酔っているでしょう……」「うん、せーかい!ははは……」彼は顔を持ち上げ、天使のような顔で笑った。時計を見ると深夜2時を超えていた。 「今まで飲んでたの?」「うん、レインや先輩方が——離してくれなくて」「レイン……?」初めて聞く名前だった。「同期の治療士……。相棒みたいなもん……」「そっか……、ディーはどこにいってもすぐに仲間ができていいね……」うしろに流した髪が彼の顔に落ちてきて、私はその髪を耳にかけた。 「そんなことないよ。アーシュの方が……。みんなアーシュに見とれてた……」 「え?」 「俺のなのに。みんなアーシュを見ていた。今日は特に女神様みたいだって、みんな釘付けだった……」ディートハルトが眉間に深いシワを作った。こんな顔見たことない……。 「そ、そんなことないよ。参列者の女性なんて、みんな頬を赤くしてディーに夢中だったよ」 「俺は……女性は——嫌いだ……」女性が嫌いって……。 「私も一応女性だよ?」ディートハルトは瞳を大きく開いた。 「もちろん、知ってる……。アーシュは普通の女性と違う。親友だし、かっこいいし……」ディートハルトが私の胸元に顔を埋めた。まるで子どもが甘えるように。「かっこいいかぁ……。悪女みたいだって言われることはあったけど、かっこいいは初めてかも」「子どもの頃にガーデンパーティーで女の子に囲まれていたとき、虫の魔道具を使って追い払ってくれたじゃん。アーシュは俺のヒーローだって思ったよ」「懐かしい!あの魔道具は女性を撃退するために考えたんだよね。我ながら良い作品だったわ……。でも、父と母にバレて、あの魔道具は使用禁止になったのよね……」 「画期的だったのにな……」 ディートハルトが残念そうに言った。「本当に……きみは……すごい……よ」上にのしかかったディートハルトの重みが急に増し、息遣いが規則的になった。「えっ? ちょっと、ディー!? 寝ているの?」ディートハルトの肩を揺さぶるも、全く動かなかった。(ひぃ……、お……重い。この筋肉
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Chapter: 第9話 結婚初夜「奥様、本当に良くお似合いです。マーメイドラインのウェディングドレスを、ここまできれいに着こなす方はそうはいません!」 新婦の控室で力説してくれているのは、伯爵家に移った私の専属の侍女になったカトリーヌだ。 小柄な彼女は私と同じ年で、ふわふわの金髪のショートヘアに、大きな瞳でとても可愛らしい。 悪女のような容姿の私とは大違いだ。 そして何より、とても良い子で私に尽くしてくれる。 彼女も同じ男爵家の出身なのに……。 それを一切出さず、心を込めて接してくれる。 「同じ女性でも、ため息が出ちゃいます。この細く美しいくびれに、この豊満なバスト、そして形の良いお尻……。う、美しすぎます……」 先ほどから、カトリーヌは何やら呼吸が荒いような……。 彼女も忙しかったから、大丈夫だろうか……。 「今日はこのドレスに合うように、髪の毛を巻いて生花を差していきますね。きっと女神様のように、さらに美しくなりますよ!」 「ふふふ……、ありがとう」 ここ数カ月の激務のおかげで体重は落ち、ダイエットの心配はなくなった。 ほとんど寝ていないため、目の下のクマはカトリーヌが綺麗に消してくれた。 鏡の前にいる自分が昨日と同じ人間とは思えなかった。 カトリーヌの腕は本物だ……。 それに、そうしてもらわないと、あの美しい幼なじみの横には立てない。 いや、ここまでしても、かすんでしまうかもしれない……。 それほど、ディートハルトは美しく、それでいて男性としての色気まで持っているのだ。 私が幼なじみではなかったら、きっと眩しくて見ていられないだろう……。 つくづく、すごい人と幼なじみになってしまったものだ。 そして、そんな彼と本当に結婚することになるとは……。 ただディートハルトは……、本当に良かったのだろうか……。 ——好きな人とか、いなかったのだろうか。 騎士団に入っての3年間、本当に何もなかったのだろうか……。 そして、今夜は初夜……。友達同士なのに……。 「さあ、奥様できましたよ!本当にお美しいです!」 赤毛の髪をゆるく編み込んで、前に垂らしてくれた。 生花が所々に飾り付けられていて、派手さがなく本当に綺麗だった。 コンコン……と、ドアをノックされた。 「入ってもいいだろうか?」
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-07-05