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海を越えて新世界へ、愛は国境を知らない

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-09-22 05:02:06

船での旅が始まって一週間が過ぎた。

広大な海を眺めていると、世界の大きさを実感する。

私たちが今まで活動してきた場所は、世界のほんの一部に過ぎないのね。

「美しい海ね」

私は船の甲板で海風に髪をなびかせていた。

「どこまでも続いている」

「君も美しいよ」

カイルが隣に立った。

「海風に吹かれている君を見てると、心が躍る」

「もう、またそんなことを」

私は頬を赤らめた。

「でも、嬉しい」

船には私たち愛の騎士団以外にも、多くの乗客が乗っていた。

商人、学者、冒険家……

様々な人々が東の大陸を目指している。

「リア様」

セラフィナが資料を持ってきた。

「東の大陸について調べたことをまとめました」

「どんなところなの?」

「桜が美しい国、茶道という優雅な文化がある国、武士道を重んじる国……」

「それぞれ独特の文化を持っているようです」

桜、茶道、武士道……

聞いただけでも美しそうな文化ね。

「でも、言葉が違うのが心配です」

ソフィアが不安そうに言った。

「通じるでしょうか?」

「愛の言葉は世界共通よ」

私は確信していた。

「心と心で通じ合えるはず」

その時、船の向こうから美しい歌声が聞こえてきた。

乗客の一人が故郷の歌を歌っているようだった。

言葉は分からないけれど、メロディーが心に響く。

きっと、愛する人への想いを歌った歌なのでしょう。

「素敵な歌ね」

私は歌声に耳を傾けた。

「言葉は分からないけれど、愛を感じる」

「そうですね」

マーサも微笑んでいた。

「愛は言葉を超えるのね」

歌を歌っていたのは、東の大陸出身の若い女性だった。

美しい黒髪を結い上げ、着物という美しい衣装を着ている。

でも、その表情はどこか悲しげ。

「あの方、悲しそうね」

私は気になった。

「何かあったのかしら」

「話しかけてみましょうか?」

カイルが提案した。

「でも、言葉が……」

「大丈夫」

私は立ち上がった。

「愛の気持ちがあれば、通じるはず」

私は女性に近づいて、微笑みかけた。

「美しい歌ですね」

女性は最初戸惑ったような顔をした。

でも、私の笑顔を見て、安心したように微笑み返してくれた。

「アリガトウゴザイマス」

片言だけれど、私たちの言葉で答えてくれた。

「ワタシ、ユキ」

ユキさんという名前ね。

雪のように美しい人。

「私はリア」

私も自己紹介した。

「リア……」

ユキさんが私の名前を繰
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