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第271話

Author: レイシ大好き
「うん、絶対に時間通り行くから!」

電話を切った清那は、そのままベッドから勢いよく起き上がり、簡単に身支度を整えて夜の外出に備えた。

久しぶりの外出となれば、もちろんショッピングもしないと気が済まない。

一方、紗雪が去った後、京弥は再びオフィスに戻った。

しかし椅子に座るなり、顔色を一変させて口を開いた。

「会社の連中は一体何をしてるんだ?紗雪がグループに来たのに、なぜ誰も俺に報告しなかった」

匠は額の汗をぬぐいながら、内心でドキドキしつつ応じた。

「社長、私が調べてまいります。一体どういう経緯だったのか......」

「徹底的に調べろ。一つ残らずな」

「かしこまりました」

京弥は手を振って、匠に早く行動に移るよう合図をした。

今日の件は、幸い匠がそばにいてくれて助かった。

でなければ、本当に取り繕えなかっただろう。

紗雪が何の前触れもなく上がってきたということは、すでに何かに気づいているという証拠だ。

でなければ、あんな行動には出ない。

そう思うと、京弥は少し不安になった。

このままでは、彼の正体がバレるのも時間の問題だ。

いつまでも受け身でいるわけにもいかない。いっそ、正直に話してしまうべきか?

京弥は眉間を指で押さえながら、ますます募る不安を感じていた。

このままでは、精神的に限界が来そうだった。

ずっと紗雪の前でごまかしてばかりというのも、もはや限界に近い。

ほどなくして、調査結果が出た。

紗雪は正面からではなく、裏口から入っていたのだ。

しかも、その間、監視カメラを意識して避けていた様子もあった。

その報告を聞いた京弥は、思わず笑いそうになった。

さすが自分が見込んだ女、やはり発想が違う。しかも実行力まで備えている。

そう思うと、彼女にはまだまだ自分の知らない一面があるのではないかと、逆に興味が湧いてきた。

......

「紗雪、準備できたよー。今どこにいるの?」

清那はバーのカウンター前の椅子に座っていた。

パンク風の服を着こなし、濃いスモーキーメイクを施し、ミニスカートからは大胆に脚を見せていた。

その姿は奔放かつ自由で、心からリラックスしている様子だった。

バーの中にいる客たちは、彼女に注目しっぱなしだった。彼女に恋人がいるのか気になって仕方がないようだ。

しかし清那は、そんな視線にも
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