2人で寮に戻って俺は自分の部屋で着替えるだけ着替えてから大我の部屋へと向かった。
「ごめん、すぐきちゃったよ俺」
大我の部屋に入ってから早く来すぎたことを謝れば 「そんなの気にしないから大丈夫だって。座って待ってな」 小さく笑いながら言ってくれた。 「なんか手伝おうか?」 なんか手伝うことがあるかなって思ったんだ。 「いや、大丈夫だけど。唯斗はなんか食べたいものあるか?」 やんわりと断られちゃった。まぁ、いつも作ってもらってるし、大我の方が手際がいいからなぁ。 「んー、特にはないんだけど…」 少し考えて答えれば 「なら、唯斗くんにはここで、火の番をしててください」 なんて急に言われて 「えっ?あっ、うん」 驚いたけど、傍にいたいと思った俺の気持ちを大我なりにくみ取ってくれたんだなって思った。だから、俺は急いで大我の傍に行き、火が消えないように、火加減を気を付けながら、鍋の様子を見ることにした。 俺がただ、ボーっと火の番をしてる間に大我は色々と下ごしらえをしてて凄いなって感心しちゃったよ。 「よし、完成。ほらこれを運んで座って待っててください」 盛り付けの終わった皿を俺に差し出して言うから 「これだけでいいのか?」 ってつい聞いちゃった。 「あぁ、後は大丈夫だ。運ぶだけだしさ」 小さく笑いながら言われる言葉に 「わかった」 俺は素直に返事をして受け取った皿だけ持ってテーブルの所に戻った。大我と一緒に大我の作ってくれたご飯を食べながら俺はつい一人、自分の考えに没頭してしまったらしい。
「いと、唯斗」 大我の呼ぶ声にびっくりして 「はっ、はい!」 慌てて返事をしたら苦笑してる大我と眼が合った。 「あっ、俺…」 そこまでしか言葉が出なかった。 「先に食べたらどうだ?それとも食欲がないか?」 その言葉に俺は慌てて首を振ったけど 「無理しなくていいんだぞ?」 なんて余計に心配させちゃった。 「ごめん、そういうんじゃないんだ…」 そう、本当にそんなんじゃない。 「なら…食べるか、やめるかだけ決めてくれ」 って言われて 「食べる」 俺は急いで、残りのご飯を食べることに集中した。片付けも大我に任せることにして、俺は大我が戻ってくるまでボーっとしてることにした。
ボーっとしてたのがダメだったんだろうな、大我が戻って来たのにも気付いてなかったんだ。 「今日は本当に変だぞ唯斗」 そんな言葉と共に優しく頭を撫でられてビックリして顔を上げたらさっきと同じで苦笑を浮かべた大我が俺を見てた。 「大我…あのさ…」 ふと思ったことを口にしようとして迷い結局は言葉にできなくてだまちゃった。 「ベッドに行くか?」 その言葉に驚きながらも俺は素直に頷いた。 「なら行こう」 大我に手を差し出されて俺は迷わずその手を取った。引き寄せられるように大我に立たされて手を引かれて寝室に向かいベッドの上に座った。 でも、お互いに言葉はなくて黙ったままだった…Side 唯斗 「んっ、こ、ここは…」 目が覚めて自分がどこにいるのかわからなかった。 「気が付いたか」 その声に反応して声の主を見た瞬間、自分の意思とは関係なしに涙が溢れた。 「っ、たい、大我ぁ」 俺は飛びつかん勢いで大我に抱き着いた。 「大丈夫だ、どこにもいかないから、だから泣け」 飛びついた俺を抱きしめながら告げられる言葉は、俺自身に何が起きたのかを知っていると告げている。 「っ、たい、大我、大我、俺、俺、」 俺は大我に抱き着きバカみたいに大泣きをした。大我の顔を見たら本当にダメだった。自分で処理しきれない感情がグルグルと渦巻いていて、どうしていいのかわからなくて、俺は大我の前で大泣きをしたのだ。 「少しは落ち着いたか?」 涙が止まったけど、離れたくなくて、抱き着いたままの俺に静かに大我が聞いてくるから、小さく頷いた。 「唯斗には悪いとは思ったけど、三枝さんと話をして、現状をすべて聞いた」 俺を抱きしめたままで、大我がゆっくりと話す。 「…ごめん…」 また、俺は大我に迷惑をかけたんだ… 「謝らなくていい。唯斗に聞きたいことがある」 「な、に?」 本当は大我の言葉が怖い。 「聖唯斗の気持ちが知りたい」 「お、れの、きも、ち?」 大我の言葉の意味が分からない。 「あぁ、今回のこと。自分勝手なあの2人のこと聞いて、唯斗はどうしたい?唯斗自身の気持ちが知りたい」 俺を抱きしめてくる大我の腕に少しだけ力が入る。 「俺は…もぉ…嫌だ…もう、俺をほっといてほしい、俺に関わらないで欲しい、俺を捨てたんだったらそのままほっといてほしい」 もぉやだ。本当にほっておいて欲しい。里親になって、また俺を捨てたんだ、これ以上俺に関わってほしくない。捨てたんだったらほっといてほしい。今更俺に踏み込んでこないでくれ… 「唯斗これは俺たちだけで解決できる問題じゃない。それは唯斗もわかるよな?」 大我の言葉にコクリと頷けば 「週末、俺の実家に行こう。今後のことも含めて家族会
Side 大我顧問に提出しなきゃならない書類を持って職員室に行き、戻る途中でけたたましく電話が鳴り響いた。慌てて携帯に出れば『い、委員長!!!今どこをほっつき歩いてんですか!!』鼓膜がはち切れんばかりのバカでかい声で永尾が叫んできた。「うるさい。職員室に用があって行ってきたところだ」耳から電話を離しながら返事をすれば『そんなことより、会長が、会長が、』切羽詰まった声で言うが、会長がしか言わねぇから意味が分からん。「聖がどうした?」永尾がここまで取り乱すんだから何かがあったのはわかる。だが、何があったのかは傍にいた永尾たちに聞かないことにはわからないのだ。『ですから、会長が、会長がですね、えっと、とにかく大変なんですって』語彙力がいつにも増して乏しくなってるなこいつ。なんて思いながらも聖の身に何か起こりそれが切羽詰まる状況なんだろうと自分で予測する。「あー、うるせぇ。何が言いたいのかわからんから一旦落ち着け、今そっちに向かってるから待ってろ」いうだけ言って一方的に電話を切りアドレスを探り目的の場所に電話を掛ける。『はい、神谷』それはすぐに繋がった。「神谷、悪いが残りは三条とお前に任せていいか?永尾からSOSが入った。ヤバい状態らしい」生徒会室に向かう足の速度を少しだけ上げながら電話した理由を告げれば『はい、大丈夫です。健汰から聞きました。会長が電話を持ったまま真っ青な顔をして動かなくなったそうです。三条も一緒に聞いていたのでこちらのことは僕たちに任せてもらって大丈夫ですよ』すでに永尾が突撃した後だったらしく神谷はすんなりと返事をしてくれた。「悪い、永尾をこき使っていいから最後の戸締りとか頼む」俺は神谷に最後のことを頼み急いで生徒会室へと向かった。ノックもせずに生徒会室の扉を開けて中に入れば異様な世界が広がっていた。生徒会長の机の所で真っ青な顔をして立ち尽くす会長。青い顔をしながら会長に声をかける会計と書記、同じように青い顔をしながら会長の机の周りをウロウロとする副会長。一体何があったんだこの部屋で?「永尾、説明してくれ」聖の傍によりながら声をかければ3人が俺の姿を確認して途端にほっとした顔になる。「委員長ぉ~」なんともまぁ情けない顔になる永尾。「何があったんだ?」聖の隣に立ち聞けば「先ほど会長の携帯に電話が
大我に卒業後のことを相談してから、数日間、俺は普通に過ごしていた。それなりに忙しい日々もあったけど、みんなの協力を得てなんとなくやり過ごしていたんだ。 生徒会室でいつもの様に仕事をしてたら、珍しく自分の携帯が鳴りだした。表示されている名前を見て驚いた。そこに映し出されていた名前は俺がいる施設の施設長だったから。 「もしもし、聖です」 俺はそこがまだ生徒会室だというのを忘れて出た。 『聖くん?三枝です。相談したいことがあるんだけど今お時間大丈夫ですか?』 電話の主はやっぱり施設長の三枝さんだった。 「はい、大丈夫です。何かあったんですか?」 相談と言われてドキッとした。 『実は2つ程あって、一つ目はあなたのご両親だという方が唯斗を出せとここ数週間の間に何度もみえてます。この方たちにお会いしますか?』 今更あの2人が施設に来て自分を出せと言っていると聞き正直驚いたし呆れた。俺を捨てて12年も経ってるのに今更、会いに来て施設に迷惑をかけてるとかなんて自分勝手な人たちなんだ。 「あの、ご迷惑でないのなら次に来た時にハッキリと言ってやってくれませんか?俺には両親はいないと。それでも騒ぐようなら警察を呼んでください。俺には今更その2人に会う気はありません。忘れた存在ですから」 今更あの2人に会ったところで俺の中にある傷は癒えることはないし、自分が幸せになれるとは到底、思えないのだ。 『わかりました。聖くんの気持ちを尊重して、あのお二人にはそう告げます。2つ目の相談なのですが、聖くんは内藤ご夫妻を覚えておりますか?』 三枝さんから出てきた名前にドキリと心臓が飛び跳ねた。 「い、一応…覚えてますが…」 なんで、今その名前が出てくるんだろうか? ドキドキと早鐘を打つ心臓が痛い。 『実は、相談というのは内藤ご夫妻のことなんですが…』 三枝さんはもの凄く言い辛そうに言葉を選んでいるような気がした。 「何かあったんですか?」 聞きたくない、本能的にそう思った。でも、これは聞かなくてはならない話なのかもしれない。 『実は2ヶ月前程から施設の方へ来てたんです』 「なんのために?お二人にはお子さんがいましたよね?」 そう、俺はあの夫婦の子供になるために引き取られたけど、本当の子供ができた途端に俺はまた捨てられたのだ。その相手がまたなぜ施設へと出向い
「俺は唯斗と一緒に実家に戻る予定でいたんだけど、ゆいはどうしたい?俺だけの意見じゃ決めれないしな」 大我から出てきた言葉にびっくりした。 「へっ?俺も一緒でいいの?」 そう、俺も一緒にって言われてびっくりしたんだ。 「そりゃそうだろ。実家には唯斗は俺の嫁だって紹介してあるんだけど?」 って半分呆れながら言われてあって小さく声を上げた。 そうでした、俺、大我の嫁だってみんなに紹介されてました。劉くんにも嫁って言ってたよこの人…。 「嫁云々はいいとして、俺は卒業したら実家に戻るつもりでいる。勿論、唯斗も一緒に戻るつもりで、実家には話してある。唯斗が実家に戻るのが嫌だとか、一人暮らしするとかって言いだしたらこの話はなしになるけど…。どうしたい?」 あくまでも決めるのは俺自身だという意味を込めて俺に聞いてくれる。 「俺が一緒に行っても邪魔にならないかな?」 一緒に行ってもいいなら行きたい。もっと、大我と一緒にいたい。だけど、邪魔だと言われたらと思うと怖い。 「唯斗はどうしたいんだ?唯斗の素直な気持ちが知りたい」 俺が何に対して戸惑ってるのかわかってるんだろうな。 「俺は…俺は大我と一緒に行きたい。もっと大我の傍にいたい」 少しだけ考えて、俺は意を決して自分の気持ちを口にする。 「なら、卒業後は2人で実家に戻ろう。戻るにしたって、卒業後の進路はまだ決めてないから、まずはそこから考えないとダメだけどな」 なんて、大我は苦笑を浮かべた。 「あっ…でも時期的にそろそろ決め始めないとマズくない?」 今年も半分は過ぎてるわけで、この後は色々と行事とかも多くなる。それこそ3年生の卒業だって控えてるわけだし。 「まぁ、考え出さないとヤバいかな。唯斗は候補とか決めてるのか?」 なんて、大我に聞かれて 「全然。まだ何にも考えてない…。それに俺の知らなかったことが色々とわかってキャパオーバーしてたし…」 そう答えた。うん、だって本当に俺の知らないことをいろいろと聞いて知ってってしてたらキャパオーバーした。だけど、それってきっと俺が他人に対して興味を持ってこなかったからなんだと思うんだ。だから大我と付き合うようになって色んなことを教えてもらって、少しだけ自分でも周りを見るようになって知っていった。そしたら普段使ってなかった記憶装置を使うようになったからオ
いつもの様に生徒会室で会長としての仕事をしていた。出来上がった書類に不備がないかを確認して、完成済み書類ボックスに書類を入れて、ふと目に留まったカレンダーに動きが止まった。カレンダーの日付を確認して、溜め息が零れた。 先月、17歳の誕生日を迎えた。誕生日当日は平日ってこともあり、大我だけがお祝いをしてくれたが、その週の週末は大我の実家で、盛大にお祝いをしてもらった。プレゼントもてんこ盛りにもらって、持って帰れないって悲鳴を上げたのは記憶に新しい。 いや、だって、ホントに多かったんだもん。ぼんやりとそんなことを思い出しながら卓上カレンダーを手に取りページをめくり考え込む。 今後のことをちゃんと考えないと時期が来たんだなと一人納得をして、もう一度溜め息をついた。カレンダーを元の場所に戻して作業を開始しようとしたら 「カレンダーを見て何かあるのか?」 そんな大我の声がして驚いて顔を上げれば書類を持った大我が立っていた。 「あっ、イヤ、帰ってからでいいんだけど相談したいことがあるんだ。いいかな?」 この場所で話す内容じゃない。だけど大我には相談がしたい。そういう意味を込めて聞いてみる。 「それは構わないけど、風紀の方は少し遅くなるぞ?それでもいいか?」 書類を俺に渡しながら返事をしてくれる。 「あぁ、それは大丈夫。今日がダメなら明日でもいいんだ」 そこまで急いでるわけじゃないんだ。 「わかった。なるべく早く戻るようにする」 それだけ言い残し大我は出ていった。 「そこまで急いでるわけじゃないんだけどなぁ…」 1人呟きながら俺は大我の持ってきた書類を確認し始めた。自分の部屋でやることやってボーっとソファに座って考え事してたら、メールの着信を知らせる音がして、確認したら 『帰ってるから、来るなら来いよ』 って、大我からの連絡だった。俺は携帯と部屋の鍵だけ持って自分の部屋を出て大我の部屋へと向かった。 部屋の扉をノックすれば 「開いてる」 って返事がするから後は勝手知ったるなんとやらで扉を開けて中に入って鍵を閉めた。部屋の中に漂う美味しそうな匂いにぐぅってお腹が鳴った。 「食べるか?」 って聞かれて素直に頷いた。だって、大我の作るご飯はどれも美味しんだ! 「座って待ってな。あー、その前
「んっ、ふっ、ぁ、ん、ぁぁ」繰り返されるキスが熱くて、それでいて気持ちがいい。「ぁっ、やぁ、ん、ぁ、ダメっ、ぁ、んぁ」大我に抱き着きその背に爪を立ててしまう。自分の中で意地悪く動く大我の熱は熱くて、熱くて、身も心も溶かされてしまいそうで、怖いと感じるときがある。それと同時に溶けてしまえばいいと思うときもある。「ぁ、ぁ、ん、ぁ、たぃ、ぁぁ、やぁ、もぉ、ぁ、んぁ」「あぁ、イケ」俺の言葉に大我が小さく頷き首筋に少し熱い唇が寄せられる。「ぁっ、あぁ、ん、ぁ、やぁ、もぉ、ぁ、いくっ、ぁ」「っ、くっ」何度も熱い塊に抉られるように突き上げられ、自分の中から溢れ出てくる波に呑まれ、俺は大我のモノをキツク締め付け、大我の背に幾つもの紅い筋をつけいった。どくりと吐き出される大我の熱を感じながら俺はゆっくりと大我の腕の中で意識を飛ばした。ー夢の中ー『はじめまして、唯斗くん』『唯斗くん、私たちの子供になってくれないかしら?』これは何時の夢だ?『唯斗くん、ここが君の部屋だよ』『早く慣れてくれると嬉しいな』これは…小学の時か?『唯斗くんは何が好きかな?』『唯斗くんの好きな食べ物は何?』『凄いじゃないか。こんなにもできるなんて』『唯斗くん、これ作ってみたの食べてみて』『唯斗くん』『唯斗くん』あぁ、これは俺が初めて里親に迎えてもらったころからの出来事か…。『本当か?本当に僕たちの子が?』『えぇ、3ヶ月目に入るって』『やったぁ、よくやった』『えぇ、嬉しいわ』そうか…俺はまた捨てられるんだな…『唯斗くん、ごめん』『ごめんなさい、唯斗くん』はっ、捨てるなら最初からその手を差し出すな!「っ!はっ」「大丈夫か?」その言葉と優しく撫でられる感触に驚き声のした方を見れば心配気に見ている大我の顔があった。「っ、っ、ぁ、たい、がぁ、っ、っ」俺は大我の首に抱き着いた。「大丈夫だ、ここにいる」「っ、ぁ、大我、大我、大我、大我ぁ」止められなかった。泣くつもりなんて本当はなかったんだ。だけど、俺の意思とは関係なしに涙が溢れだして、抱き着いた大我の服を濡らしていく。「ぅぁ、ぁぁぁ、大我ぁ、ぁぁ」「大丈夫だ、俺はちゃんとここにいる」抱き着き大泣きする俺を抱きしめ頭を撫でながら俺を安心させるために大丈夫だと何度も言ってくれる。「大我、大我、大