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第5話
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彼のいない七日目 第10話
彼女はすすり泣きながら言った。「あの男、大嫌い」私は頬杖をついて話を聞いた。この感情をどう評価すべきかわからなかった。ただ、その恨みを私に向けないでくれればそれでいい。香苗は長い間溜め込んでいたかのように、堰を切ったように私に打ち明け始めた。私は聞いているうちにうとうとしそうになった。最後に、彼女は恐る恐る尋ねた。「私のこと……許してくれますか？」「あの時、私はあなたから男を奪い、あなたの夫を奪い、あなたを悲しませた」「本当にわかってる、私が悪かったって……」私は少し考え、答えた。「どうでもいいわ」「私のあのウェディングドレスを直してくれたら、許してあげる」半年後、香苗が私のドレスを届けてきた。かつて引き裂かれたレースは、より精緻なものに取り替えられ、小さな真珠は彼女が一粒一粒探しては縫い直したものだ。あの破れや傷は全て、新品のように修復されていた。なかなか良く直してあった。少なくともドレスを直している半年間、彼女はあまり退屈せず、恭介が愛しているかどうかを一日中考えずに済んだはずだ。この間、二つの大きな出来事があった。一つ目、父をセクハラで誣告した女性が有罪判決を受け、父は社長の座に復帰した。二つ目、恭介が経営判断の失敗により、取締役会の満場一致で社長職を退くことを求められ、地方にある支社へ異動となった。私は驚かなかった。彼はビジネスの世界に入ってから順風満帆で出世しすぎていた。当然ながら慢心し、慎重さを欠き、躓きやすくなっていたのだ。出発前に、彼はまた私を訪ねてきた。まるであの頃のように。私は豪邸の大理石の階段の上から彼を見下ろした。彼は下に立ち、姿勢はこわばっていた。彼は顔を上げて私を見た。「俺はほかの町に行く。多分、何年もそこにいることになる……これって償いになるかな？」私は聞きたくなかった。「ならないわ。あなた自身の判断ミスでそうなったんでしょ。私とは関係ない」私は背を向けて立ち去った。香苗は恭介に従い、地方へ向かうことになった。ここでは彼女は独りぼっちで、見送りに来たのは私ただ一人だった。彼女は普通のビジネスカーに乗り、窓を開けて私を見た。目の中の輝きは失われている。彼女が何を心配しているかはわかった。地方の支社は昔から「落とし
彼のいない七日目 第9話
私は彼女を無視し、目の前のティラミスに集中した。小林夫人が私の耳元でこそこそと噂話を続ける。「道楽息子の妻から、グループ重役の奥様にのし上がったのに、あの女、まだ何が不満なの？」私は少し考え込み、口を開いた。「たぶん、彼女が望んでいたのはそれだけじゃなかったんでしょう」私は小林夫人にマカロンを一つ手渡した。彼女は腰を下ろし、私と共に午後の紅茶を楽しんだ。スイーツの甘い香りが空気に漂い、オークション会場にほのかな温もりを添える。小林夫人は落ち着きがなく、二口食べるとすぐに写真を撮りに行ってしまった。その時、内村香苗がひそかに近づき、怨念に満ちた口調で言った。「向井絵里……全部あなたのせいよ」私は少し困惑したように。「また私のせい？」若くて健康とはいえ、そんなに多くの責任は負いきれない。彼女は続けた。「あの時、あなたが恭介と結婚しなければ、五年前に私は彼と一緒になれたはず」「私はこんなに苦しまずに済んだし、彼の心の中にあなたがいることもなかった」「私たちがこんな……互いに嫌気がさすような結末を迎えることもなかった」私はこめかみを押さえた。鈍い痛みが走るだけだった。「どうして彼のせいにしないの？」その言葉に彼女は一瞬言葉を失った。私は口を開いた。「家業が破綻し、窮地を救おうとした時、白石恭介は私ではなくても、他の誰かを選んでいた」「彼は二十七歳で白石グループの社長の座についた。その地位は、多くの人間が生涯をかけても手が届かない」「彼と同期の優秀な卒業生たちは、今でも彼の下で働いている」「もし彼が本気であなたと結婚したかったら、誰にも止められなかった。ただ彼は、この名声と利益を手放せなかっただけ」「あなたは感謝すべきよ。私のように話のわかる相手と結婚してくれたことを」「他の人間だったら、あなたが恭介に最初のメッセージを送った時点で、二人のことを世間にバラしていたわ」実際、恭介が彼女を不幸な結婚から救い出した時、私は彼女を心から気の毒に思い、苦境から抜け出せて良かったとさえ思った。だが次第に、私は彼女への好意を失った。なぜなら彼女は、かつての私と同じように、あまりにも世間知らずだったからだ。私はゆっくりとこれらの言葉を終えると、手にしていたスイーツを置き、立ち去ろうとした。
彼のいない七日目 第8話
彼はずっと、自分が家族の圧力で絵里と結婚させられたのだと思い込んでいた。彼女を憎むべきだ、遠ざけるべきだ、香苗に償うべきだとも。しかし、共に暮らす日々の中で、彼は認めたくなかったが――絵里に深く心を寄せていることに、いつしか気づいていた。今この時、恭介はようやく悟った。絵里なしでは、彼の人生は全ての色を失うのだと。私は海外で長く暮らすと思っていた。だが二年後、父がグループの副社長に復帰し、会社内部の危機は解決した。父はセクハラ訴訟にも勝ち、彼に関する不祥事は瞬く間に消え去った。父の無実を証明する証拠を探したのは叔父だけではない、恭介も協力していたのだ。恭介の名が出た時、父の表情はとても落ち着いており、眉一つ動かさなかった。恭介にとって、父は元舅であると同時に、窮地に救いの手を差し伸べてくれた恩人でもある。父の状況を気にかけるのは、ある意味当然のことだったのかもしれない。春、私は両親と共に再び帰国した。かつての別荘はとっくに競売にかけられており、父は私たちを郊外の別荘へ移した。恭介が訪ねてきた日、空は霧雨が降っていた。彼は黒い傘をさし、門の前に佇んでいた。細やかな雨が私たちの間にカーテンのように降り注ぎ、薄いベールのようだった。私は初めて彼を見たあの瞬間を思い出した。人混みの中に立ち、ひときわ目を引く気品を放っていた。かすかに輝き、まるで宝物のように。時は流れ、彼はずいぶん痩せ、かつての鋭さは消え、今は深い水たまりのように静かで波一つ立たない。彼と再会しても、私の鼓動はいつも通りに落ち着いていた。私は軒下に立ち、手をポケットに入れ、うつむきながら尋ねた。「白石社長、ご用件は？」彼の声はかすれていた。「絵里……」「離婚は……俺の一時の衝動だった」「ただ……お前が俺の贈り物を全部売り払ったことに腹を立てていただけなんだ……」私は彼を見据え、ゆっくりと口を開いた。「白石恭介」「そんな怒りの言葉、あなたは二度言ったわ」一度目、私は自分を騙し、離婚届を隠した。二度目、私は勇気を振り絞り、恭介と離婚した。彼は眉をひそめ、目には困惑が浮かんでいる。記憶が彼の脳裏から消え去っているようだった。何しろ、あの時彼は酔っていたのだ。そしてあの出来事は、もう二年前のこと
彼のいない七日目 第7話
ここでは、国内では買えない果物を味わい、国内では見られない景色を目にすることができた。ここの日差しと海風は心が洗われるようで、私は次第にこの地での生活を愛おしく思うようになった。私はゆっくりと過去を忘れていった。白石恭介と共に過ごした細やかな瞬間の数々は、もうかすんでしまった。時折の温もり、稀な喜び。長く寂しい夜、誰にも顧みられない待ち時間……全ては風と共に過ぎ去り、遠い昔のことのように感じられた。父のある友人の息子さんの結婚式から戻ると、母が私の手を握り、眉をひそめて尋ねた。「さっき、ぼんやりしてたけど……また彼のことを考えてたの？」私は一瞬たじろぎ、正直に言った。「披露宴の蒸し魚の作り方を考えてたの。お母さんの味とはちょっと違ったから」母はふっと笑った。「じゃあ、明日お父さんに聞いてもらおうか」私は母の腕に抱きつき、甘えるようにすり寄った。穏やかな時間が流れた。式が始まる直前。恭介は絵里の部屋の前で長く佇み続けた。彼は説明したかった。この結婚式は、自分と香苗の若き日の過ちを埋めるためだけのものだと。ただ香苗への償いのためだけだと。絵里との離婚の言葉は一時の衝動で、本心からではないと。彼女にただわからせたかった――今、彼女が頼れるのは自分だけだということを。いつからか、彼は鋭い言葉で彼女を傷つける癖がついていた。今の恭介の胸は、後悔で張り裂けそうだった。彼女を傷つけるあの言葉を吐いたこと、何度も彼女の心を刺したことを。部屋に物音がしないので、彼は執事に尋ねた。「奥様は？」執事は香苗のことを尋ねていると思い、答えた。「奥様はただいまお化粧中でございます」彼は言った。「そうか」昨日、恭介は人を介して絵里にドレス一式を届けさせた。それは彼が二ヶ月前にオーダーしたものだ。精緻な品物を見る度、彼はいつも彼女に買ってやろうと考えていた。淡いピンクは彼女によく似合う。彼はそのドレスを彼女が着た姿を想像し、思わず口元を緩めた。しかし、式が始まっても、彼は絵里の姿を見つけられなかった。彼のまぶたがぴくっと動いた。再び執事に尋ねた。「奥様は？」執事はうつむき、声を震わせて答えた。「奥様は早朝に空港へ向井様をお見送りに……」式の時間が迫っていた。恭介は背後
彼のいない七日目 第6話
結婚式に出席する賓客たちは皆、白石家の別荘がある方向へと向かい、私の進む道とは反対だった。私はサンバイザーを下ろし、ぼんやりと自分の足先を見つめた。三年前、私は恭介と結婚し、互いを敬い合うような日々を過ごした。あの頃、私はあまりに世間知らずだった。香苗はもう嫁いだのだから、彼は私を選んだのだと誤解し、この結婚は続くのだと信じ込んでいた。真心を尽くせば必ず彼の応えが返ってくると、甘く考えていたのだ。一年前、香苗が突然彼に連絡を取ってくるまでは。彼と私が結婚してから、白石グループの業績は上昇を続け、時価総額は何倍にも膨れ上がった。私は彼を愛し、父は彼を支えた。彼の仕事は順風満帆で、将来は洋々たるものだった。起業に成功した頃よりも、なお輝いていた。しかし、彼の忘れられない女性の生活は、決して良いものではなかった。結婚後、彼女の夫は愛人を作り、彼女は毎日苦しみの中で暮らしていた。まだ二十五歳の若さで、心身共に疲れ果て、痩せ細っていった。彼女は幼なじみに胸の内を打ち明けずにはいられなかった。愛を訴えるメッセージの数々、嗚咽混じりの電話の一つ一つが、この運命の二人を引き裂いた。皮肉なことに、彼女こそが本来、恭介の妻となるはずの女性だったのだ。二人は学生時代から花嫁姿まで、共にあるべきだった。恭介は彼女に対する罪悪感から、私に対して憎しみを抱くようになった。だからあの時から、恭介は密かに彼女を助けながら、私を遠ざけたのだ。今さら自分が後悔しても、もう遅すぎる――そう私は思った。一時間後、私は海外行きの飛行機に乗っていた。両親は私が恭介と離婚したことを知っていた。彼らはただため息をつき、当時あの男を見誤ったことを悔やみ、私にこれほどの苦しみを味わせたことを嘆いた。私は唇を噛みしめ、声を上げられなかった。愚かなのは私自身だった。過ちを重ねてきたのだ。十数時間の旅を経て、ようやく両親が海外に構えた家にたどり着いた。私は新しい環境に馴染めないのではないかと心配していた。しかし最初は時差ぼてで数日体調を崩したものの、その後はすぐに慣れた。母は庭に花や草を植え、果樹を育てていた。ここは気候が穏やかで、何もかもがすくすく育つ。父の職務は核心から外され、以前の貯金の大半も
彼のいない七日目 第5話
「そういうことは使用人に任せておけばいい」私は適当に口元を引きつらせ、軽く応じた。「ええ、そうするわ」恭介と香苗の結婚式まで、あと二日しかなかった。別荘にはお祝いの飾りつけが施され、私のこの奥まった部屋の外さえも例外ではなかった。窓を開ければ、それが見える。赤い垂れ幕には、恭介の筆跡が躍っていた。【二人で一緒に年を取っていく】【ただ一人の心を得て白髪になっても離れずに】三年前、私と彼が結婚した時には、こんなものはなかった。私は窓の外を眺めた。香苗が廊下の突き当たりに現れた。彼女は今日はとても上機嫌で、目尻を下げ、軽やかな足取りでこっちへ歩いてくる。白いウェディングドレスの裾が、まるで軽やかな雲のようだった。彼女は私の部屋の前で立ち止まり、優しい口調で言った。「向井さん、結婚式の日、私はどんなネックレスを選べばいいと思いますか？」彼女は試着したばかりのドレスを着て、髪はまだセットもされていない。無邪気な少女のようだった。私は言った。「再婚なんだから、経験があるんじゃないの？わざわざ私に聞く必要ある？」彼女の表情が固まり、顔色が一瞬で青ざめた。唇を動かしたが、言葉は出てこない。いつからか、恭介が廊下の角から現れ、冷たい視線を向けていた。「向井絵里、お前も女だろう！なんでわざわざ過去のことで彼女を傷つけるんだ？」「香苗はお前と関係を良くしたいと思って、わざわざ相談しに来たんだぞ」彼女が誇示に来ているのは明らかだったのに、恭介には見えない。彼の目には、彼女しか映っていないのだ。私は入り口に立ち、見下ろすように彼女を見た。「好きなネックレスを、好きなだけつければいい」「さあ、答えたわ。もう行っていいよ」彼女の目が赤くなり、二歩後退し、恭介の体に弱々しく寄りかかった。恭介は眉をひそめ、私を脅した。「向井絵里、俺はいつでもお前の会社を完全に潰せるんだぞ？」私は彼の顔を見つめ、胸の奥が苦く渋かった。硬く口元を引きつらせ、突然笑いながら涙があふれた。恭介、離婚届には、あなたの署名がもうあるんだよ。彼は冷笑した。「式が近づいてなければ、今すぐにお前と離婚届を出してやるんだがな」彼は私に辛辣な言葉を浴びせることに慣れていた。何でも簡単に口に出せた。
