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GWの親子イベントで、夫が元カノの息子のパパ役をしていた

GWの親子イベントで、夫が元カノの息子のパパ役をしていた

By:  水耕ミントCompleted
Language: Japanese
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夫の坂田星川(さかた ほしかわ)が「会社の急用ができた」と言い訳をして、娘とのゴールデンウィークの親子イベントへの参加をドタキャンしてきた。しかも、私たちにも「今回はやめておけ」とまで言ってきたのだ。 だけど、私は、落ち込む娘の顔を見て、ひとりででも連れて行く決意をした。 学校に着いて、まず目に飛び込んできたのは、ステージ上のソファに、星川と彼の初恋の百瀬晴美(ももせ はるみ)、そしてその息子がまるで本物の家族のように寄り添って座っていたのだった。 星川はマイクを手に堂々と「どうやったら家庭も仕事も両立できるか」なんて語っている。話の途中、晴美と何度も目を合わせては意味ありげに微笑み合っている。 観客席からは大きな拍手が起き、星川は得意げな顔をしていて、隣の男の子までどこか偉そうな態度をしている。 やがて、質疑応答のコーナーになった。私は迷わずマイクを奪い取ってこう言った。 「質問です、坂田社長に息子さんがいらっしゃるとは初耳ですが?奥様はご存知なのでしょうか?」

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Chapter 1

第1話

夫の坂田星川(さかた ほしかわ)が「会社の急用ができた」と言い訳をして、娘とのゴールデンウィークの親子イベントへの参加をドタキャンしてきた。しかも、私たちにも「今回はやめておけ」とまで言ってきたのだ。

だけど、私は、落ち込む娘の顔を見て、ひとりででも連れて行く決意をした。

学校に着いて、まず目に飛び込んできたのは、ステージ上のソファに、星川と彼の初恋の百瀬晴美(ももせ はるみ)、そしてその息子がまるで本物の家族のように寄り添って座っていたのだった。

星川はマイクを手に堂々と「どうやったら家庭も仕事も両立できるか」なんて語っている。話の途中、晴美と何度も目を合わせては意味ありげに微笑み合っている。

観客席からは大きな拍手が起き、星川は得意げな顔をしていて、隣の男の子までどこか偉そうな態度をしている。

やがて、質疑応答のコーナーになった。私は迷わずマイクを奪い取ってこう言った。

「質問です、坂田社長に息子さんがいらっしゃるとは初耳ですが?奥様はご存知なのでしょうか?」

会場はざわつき、保護者や生徒たちが私に冷たい視線を向け始める。

「誰あれ、マナー悪すぎ」

「坂田社長の奥様に嫉妬してるんじゃない?だって坂田社長は何千億の企業のオーナーでしょ。玉の輿狙いの女が一人や二人いてもおかしくないよね」

「うわー、見てらんないわ」

ステージ上の星川は一瞬だけ動揺した顔を見せたが、すぐに平静を装った。けれど、晴美は抑えきれず、わざとらしく困ったように言う。

「星川、どういうこと?」

私はその様子を無視して、星川をまっすぐ見据えた。

「坂田社長、まだ質問に答えていませんよ?」

星川は無意識に眼鏡を押し上げ、観客の前で晴美とその息子を堂々と腕に抱き寄せる。

「これが俺の答えだ」

晴美は目を潤ませ、さらにきつく星川にしがみつく。

「うわぁ!」

「これぞリアルラブストーリー!人前で堂々と愛を見せつけるなんて!」

「坂田社長、理想の旦那すぎ!億万長者でありながらも家族愛に溢れてるなんて!」

私を見るみんなの目はますます冷たくなる。

「ほら見ろ、他人の家庭壊そうとして逆に恥かかされてるじゃん」

「この程度の顔で坂田社長の奥様と張り合うつもり?明輝グループで重役やってるあの奥様よ?社長を支える賢い奥様に、こんな成り上がり狙いの女が敵うわけないでしょ」

ちょうどそのとき、私のスマホが震えた。星川からのメッセージだった。

【雲香(くもか)、誤解しないでくれ。今日は晴美に頼まれて、海舟(かいしゅう)のパパ役をやってるだけなんだ。あの子、父親いなくて可哀想だろ?それよりお前さ、大勢の前で俺に恥かかせて何がしたいんだ。もうやめてくれ】

私は思わず冷笑した。我が多部(たべ)家に婿入りした分際で、私に許可も取らずに家族ごっこ?いい度胸じゃない。

明輝グループは元々祖父が一代で築いた会社で、今は私が株の75%を持っている。

私はすぐに明輝グループの人事部と法務部に連絡を入れた。今日、この場で彼の社長職を解任してやる。

娘の芽衣(めい)は、私が侮辱されているのを見て、我慢できずに声を張り上げた。

「何言ってるの?ステージの人は私のパパ!私のママが本妻よ!そっちが不倫相手でしょ!」

その言葉に、周囲はさらに大笑いし、皮肉たっぷりに言う。

「やっぱり親が親なら子も子だな。若いくせに男でのし上がろうとか、根性腐ってんじゃない?」

「坂田社長が公の場であんなに家族ラブラブアピールしてるのに、あれが本物の家族じゃなかったら何なの?」

すると、ステージから海舟が勢いよく駆け下りてきて、芽衣をにらみつけた。「誰が不倫相手だって?お前もお前の母親も、必死すぎて見てらんねぇよ。そこまでして成り上がりたいのかよ?みっともねぇな」

そう言って手を出そうとした彼を、私はすかさず止めた。視線を星川に向ける。

「これが最後のチャンス。まだ説明しないつもり?」
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第1話
夫の坂田星川(さかた ほしかわ)が「会社の急用ができた」と言い訳をして、娘とのゴールデンウィークの親子イベントへの参加をドタキャンしてきた。しかも、私たちにも「今回はやめておけ」とまで言ってきたのだ。だけど、私は、落ち込む娘の顔を見て、ひとりででも連れて行く決意をした。学校に着いて、まず目に飛び込んできたのは、ステージ上のソファに、星川と彼の初恋の百瀬晴美(ももせ はるみ)、そしてその息子がまるで本物の家族のように寄り添って座っていたのだった。星川はマイクを手に堂々と「どうやったら家庭も仕事も両立できるか」なんて語っている。話の途中、晴美と何度も目を合わせては意味ありげに微笑み合っている。観客席からは大きな拍手が起き、星川は得意げな顔をしていて、隣の男の子までどこか偉そうな態度をしている。やがて、質疑応答のコーナーになった。私は迷わずマイクを奪い取ってこう言った。「質問です、坂田社長に息子さんがいらっしゃるとは初耳ですが?奥様はご存知なのでしょうか?」会場はざわつき、保護者や生徒たちが私に冷たい視線を向け始める。「誰あれ、マナー悪すぎ」「坂田社長の奥様に嫉妬してるんじゃない?だって坂田社長は何千億の企業のオーナーでしょ。玉の輿狙いの女が一人や二人いてもおかしくないよね」「うわー、見てらんないわ」ステージ上の星川は一瞬だけ動揺した顔を見せたが、すぐに平静を装った。けれど、晴美は抑えきれず、わざとらしく困ったように言う。「星川、どういうこと?」私はその様子を無視して、星川をまっすぐ見据えた。「坂田社長、まだ質問に答えていませんよ?」星川は無意識に眼鏡を押し上げ、観客の前で晴美とその息子を堂々と腕に抱き寄せる。「これが俺の答えだ」晴美は目を潤ませ、さらにきつく星川にしがみつく。「うわぁ!」「これぞリアルラブストーリー!人前で堂々と愛を見せつけるなんて!」「坂田社長、理想の旦那すぎ!億万長者でありながらも家族愛に溢れてるなんて!」私を見るみんなの目はますます冷たくなる。「ほら見ろ、他人の家庭壊そうとして逆に恥かかされてるじゃん」「この程度の顔で坂田社長の奥様と張り合うつもり?明輝グループで重役やってるあの奥様よ?社長を支える賢い奥様に、こんな成り上がり狙いの女が敵うわけないでしょ」
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第2話
星川は眉をひそめ、冷たい目で私を見つめた。そして、しばらく沈黙した後、静かに言い放った。「失礼ですが、あなたとは面識がありません。礼儀をわきまえているつもりですが、妻や子どもに対する度重なる誹謗中傷は見過ごすわけにはいきません。当社の法務部も黙っていませんので、そのつもりで」芽衣は怒りで頬をふくらませ、信じられないという顔で叫んだ。「パパ、何言ってるの!?私とママのことまで知らないって、一体どういうことなの?」周囲の大人たちはどっと笑い声をあげた。「お嬢ちゃんさ、いい加減その茶番やめたら?坂田社長が本気出す前に、さっさとお母さん連れて帰りなよ。明輝グループ相手に喧嘩売るとか、無茶すぎ」同じクラスの生徒たちまでが嫌悪感を隠さずに言い放った。「うわ……芽衣って普段はいい子ぶってるくせに、中身こんなヤバかったんだ。マジ引く」芽衣は必死に星川の袖を掴み、泣きそうな声で懇願した。「パパ、どうしちゃったの?なんで私たちを知らないなんて言うの?お願いだから、私とママのために何か言ってよ!みんなママのこと、どれだけひどく罵ってるか聞こえなかったの?」しかし、星川は冷たく娘の手を払いのけた。芽衣は弾かれるように二歩ほど後ずさりし、傷ついた表情を浮かべた。その時、晴美は星川と指を絡め、私の方を見て、あからさまに勝ち誇った笑みを浮かべた。そこで私はすぐに悟った。晴美は私の素性を知っているのだと。私はすぐに娘の手をしっかりと掴んでこう告げた。「芽衣、よく覚えておきなさい。これから先、あなたにはもうパパなんていない」その言葉を聞いて、星川はほんのわずかに眉をひそめた。すぐに私のスマホが再び震えた。【雲香、もう説明しただろ。俺はただ一日だけ海舟の父親をやってやっただけなんだ。少しは俺の立場も考えてくれよ。もしお前の正体を認めてしまったら、晴美と海舟はどうやって世間の目に耐えればいいんだ?海舟だってもう学校に通えなくなるぞ。全部お前が騒ぐからこんなことになったんだ。文句を言われても仕方がない。さっさと芽衣を連れて家に帰って反省しろ!】私は思わず冷笑した。長年、社長の座に居座っていたせいで、誰のおかげでその権力を持てたかもう忘れてしまったらしい。その時、イベント担当の先生がやってきて、気まずい雰囲気を誤魔化すように言った。
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第3話
芽衣の言葉を聞いた星川は、ほんの僅かに眉をひそめ、逆に私に対してどこか恨みがましい目線を向けてきた。私はそれを無視して、視線を会場の連中へと移した。さっきから私と娘を罵倒し、蔑み、嘲笑っている奴らへ。順番に、ひとりずつ名指ししていく。「アルミサッシ業の張本家、セメント業の高木家、豆製品加工の橋本家……」私が落ち着いた声で一つ一つ名前を挙げていくと、皆が驚きに固まった。なぜなら、私は的確に彼らの家業を言い当てていたからだ。明輝グループの事業は広大で、彼らはみなその傘下に頼って飯を食っている。私はきっぱりと言い放った。「本日をもって、明輝グループはあなたたちとの全ての取引を終了する」彼らは最初こそ面食らったが、すぐにバカにしたように大笑いし、星川の前へと集まった。「見たか、こいつ、ついに頭がおかしくなったぞ。さっきは自分が坂田社長の本妻だとか言ってたくせに、今度は明輝の代表ヅラして俺たちとの取引を切るんだとよ!」「おいおい、自分が何様のつもりだよ。坂田社長が何も言ってないのに、勝手に騒ぎやがって。誰か精神科の番号知らないか?早く連れて行け!」星川の目はどんどん暗くなり、顔も青ざめていく。彼は一歩前に進み、低い声で私に囁いた。「雲香、俺はもう明輝の実権を握ってるんだ。お前がどんなに騒ごうが無駄だ。いい加減にして帰れ。お前にもう決定権なんてない!」私は彼を意味ありげに見つめ、何も答えなかった。代わりに、私を笑い者にしている連中、そして晴美へと視線をやった。「みんな、一つだけ勘違いしているわ。明輝グループの社長が坂田なのは間違いない。でも、決定権を持っているのは、この私よ!」晴美は一瞬きょとんとしたが、その後すぐに星川の胸に寄りかかって涙が出るほど大笑いした。「本当に頭がおかしくなったんじゃない?私、明輝で働いてるけど、星川が社長よ!この女なんて見たことないわ。きっと会社の入口すら知らないんじゃない?ほんと可哀想!」私は静かに微笑んで、何も言わなかった。なぜなら、もうすぐ私の味方が到着するからだ。晴美の職務では、せいぜいグループビルの10階までしか行けない。35階にいる私に、彼女が会えるはずもない。みんなが笑う中、ただ一人、星川だけは私を見る目が、もはや憎しみそのものだった。なぜなら、彼は恐れていたの
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第4話
星川の顔に一瞬驚きの色がよぎり、その目には黒い渦が湧き上がる。歯の隙間から絞り出すような声が聞こえた。「これ、まさか……お前が呼んだのか?本気でこの場を壊すつもりか?」私は眉を軽く上げ、目線に冷たさが広がる。言葉を発する前に、晴美が、皆に向かって顎を高く上げて誇らしげに言い放った。「雲香、見たでしょ?あれが明輝グループの法務チームよ。これまで一度も負けたことがないの。今日、あんたと娘がデマを流して騒ぎを起こした上に、会社の人間になりすまして偉そうにしてたんだから、土下座して退場するしかないわ!彼らを呼んだのは私よ!」晴美はそう言いながら、まるで勝ち誇ったように胸を張る。思わず笑いがこみあげてきた。さっき人事部と法務から、この件の報告は私のもとに入っていたのだ。星川は信じられないものを見るように晴美に視線を向ける。晴美は星川に媚びるようにウインクを送るが、星川の頬がこわばっていることには気付いていない。彼はまだ私の後ろ盾を警戒しているのだ。「星川、私知ってるよ。あなたがあの女を始末したいって。だから、ぜんぶ手配しておいたの」星川は目を見開き、罵倒の言葉が喉まで出かかったその時、黒塗りのワゴンから降りてきた一団が、私を素通りして星川と晴美の前に整列する。「坂田社長、百瀬さんから連絡を受けて参りました。会社の名誉を傷つける者の処理を行います」星川は安堵の息を漏らし、私を見る目には得意げな色が浮かぶ。「こいつらだ。徹底的にやれ」取り巻きの保護者たちは一斉に爆笑し、口々に嘲る。「おいおい、この女、さっきまで明輝グループの決定権を持っているとかイキってなかったか?ほらほら、今こそ言ってみろよ。ここの人があんたの言うこと聞くかどうか、見せてみろっての」「さっきまで偉そうにしてたのに、今は見事に沈黙だな、ははは!」弁護士の佐藤が私の方へ歩み寄り、見下すような目で、しかし鋭い口調で言い放つ。「あなた、明輝グループの名誉毀損で最低でも二千万円の賠償ですよ。これが弁護士からの通知です!」私は皮肉を込めた笑みを浮かべ、大きな声で言い返した。「あなたがここに到着したその瞬間、もうクビになってるけど?」実はさっき、グループの首席法務顧問が私に状況を報告してきたのだ。私は、「止めないで、好きにやらせてみて」と指示していた
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第5話
星川は私をじっと睨みつけて、拳を無意識に握りしめていた。それなのに晴美は全く気づいていない様子で、興奮したように星川の腕を掴み、自分の髪を慌てて整えた。「星川、早く私をみんなに紹介して!」晴美に引っ張られるまま、星川は重役たちの前に立たされる。無理やり作った営業スマイルを浮かべながら、声を絞り出した。「皆さん……今日はどうしてこちらに?」だが、彼らは星川など一顧だにせず、そのまま私の前へと歩み寄った。「会長、ご依頼いただいたものはこちらです」その「会長」という一言は、まるで雷が落ちたかのような衝撃を周囲にもたらした。見物していた保護者や先生方は、きょとんとした顔を見合わせる。「会長?だれが会長だって?」「テレビでしか見たことのないような大物たちが、あの変人女を会長と呼んだって?」「そんな馬鹿な……絶対に聞き間違いだ!」彼らの表情は、もはや言葉にできないほど困惑していた。晴美は、普段なら絶対に頭を下げない名士たちが私に対して恭しく頭を下げる光景を呆然と見つめていた。その完璧に作り込んだ美しい顔も、今や引きつっている。星川もまた、私を睨みつけたまま、こめかみがピクピクと動いていた。そして、ついさっきまで私の前で威張り散らしていた弁護士の佐藤は、手にしていた書類を震わせながら、声も震えていた。「ぶ、部長……どうしてここに……」私の隣にいたグループの法務部長が、彼を横目で一瞥して言った。「部長なんてもう呼ぶな。今、お前はクビだ」佐藤は今にも泣き出しそうだ。「え?ぼ、僕が何も……」「お前はついさっき、自分の会長に訴訟通知を突きつけたんだぞ。それでも何もしてないと?」佐藤がこちらを見直したとき、その顔はほとんど恐怖に染まっていた。この瞬間、ようやく皆が現実に引き戻された。「まさか……本当にこの人が明輝グループの会長だったなんて……」「嘘だろ!」私は受け取ったばかりの書類を一瞥し、周囲を見渡してから頷いた。すると、私の秘書がすぐさま動き、連れてきた有名メディア各社が一斉にカメラをセットし始める。直後、大きな幕が開かれ、その上には「明輝グループ記者会見」と大きく書かれていた。先ほど私を罵倒していた人たちは、すでに冷や汗だくだくでコソコソ逃げ出そうとする。私はすかさず警備員に指示し、ぐ
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第6話
星川の顔に、一瞬フリーズしたような呆然とした表情が浮かぶ。彼はゆっくりと手を伸ばし、離婚届をつまみ上げた。ちらりと一瞥しただけで、いきなり私に向かって怒鳴り声を上げる。「な、何だと?一円も持たないで家を出ろだと?そんなの認めるわけねえだろ!」私が口を開くまでもなく、隣に控える首席法律顧問が、冷静に事務的な声で応じる。「異議があるなら法廷でどうぞ。ただし、これまで私に勝てた相手はいませんが」私は満足げに頷き、再びマイクを手に取った。「次に、ここで皆さんの前で宣言します。本日をもって坂田氏を当社代表取締役社長の職から正式に解任します。同時に、百瀬氏も特別補佐の職を解任します。今後、二人の再雇用は一切ありません!」今回の生中継は、明輝グループが市内の主要ビルの巨大スクリーン全てで同時放送していた。私が話すたびに、街じゅうの交差点で人々が足を止めて見入っている。「おおおお!坂田社長、まさかの解任!?さすが多部会長、やることがでかい!これ、スッキリするわ」「自業自得だな。嫁の財産に乗っかって成り上がったくせに、調子に乗って不倫かよ」次の瞬間、星川のヒステリックな顔が大画面に映し出された。「俺は会社のためにここまでやったんだぞ!納得できるか!何でお前の一言でクビなんだ、俺は社長だぞ!」私は氷のように冷たい視線を浴びせ、絶対に抗う余地のない口調で告げた。「前から言ってるだろう、明輝グループで最後に決めるのは私だ。私が出て行けと言えば、お前は出て行くしかない」すかさず後ろの人事部長が補足する。「坂田氏は在任中、身内びいきと公金横領の疑いがあり、証拠も揃っています。当社は解雇だけでなく、今後法的措置も取る予定です」「百瀬氏については、何の実力もないのに坂田氏のコネで今の地位に就いただけです」会場のあちこちから驚きと嘆息が漏れる。「なるほど、社長は婿入りでなっただけ、特別補佐は愛人枠かよ!」「よくもまあ堂々とビジネスのエリートみたいな顔してたね、恥知らず!」「このクズ男女のやったこと、まともな人間の所業じゃないな!」その言葉の一つ一つが、まるで平手打ちのごとく、星川と晴美の顔を容赦なく叩きつける。星川は怒りで目を真っ赤にし、晴美は青ざめて手が震えている。彼女は焦って星川の腕をつかんだ。「ねえ、どうす
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第7話
私が言葉を発したその瞬間、奴らはあっさりと地面に膝をついた。「申し訳ありませんでした。どうか、お許しください!」私は鼻で笑った。「ふん。さっきまでどんな態度だった?私と娘をどう裁こうとしたか、もう忘れたのか?」「俺たちが愚かでした!会長に逆らうなんて、身の程知らずでした。どうか、どうかお命だけはお助けください!」そう言うが早いか、「ドン、ドン」と額を床に打ち付けて土下座を始める。だが、私には分かっていた。結局、私が彼らより上の立場にいるから、自分の利益のために怯えているだけのこと。私は合図を送り、傍らの秘書が私の指示通り、学校の監視カメラ映像を会議室のスクリーンに映し出す。その動画は瞬く間にネット上で拡散された。画面の中で奴らは、まるで化け物のような顔で、芽衣の弁明や悲しみには耳も貸さず、ただ星川と晴美に媚びへつらうばかり。口からは、信じがたい毒と下劣な噂ばかりを吐き出していた。言葉という刃で、私と娘を容赦なく傷つけたのだ。こんな連中、赦す資格などあるものか。私は分厚い契約解除通知の束を、躊躇なく奴らの頭上に叩きつけた。その声はまるで氷のように冷たく、澄んで響く。「私が何て言ったか、覚えているか?本日をもって、明輝グループはあなたたちとの全ての取引を終了する!」顔を上げた彼らの唇は震え、目には絶望の色が浮かぶ。明輝グループとの取引停止、それはこの街、この業界において破滅を意味していた。彼らが縋りつこうとした時には、既に警備員が容赦なく引きずっていた。時を同じくして、ネットの話題ランキングの最上位には――【#明輝グループ会長・多部雲香 不倫夫を家から追放!】【#坂田星川 生配信で明輝グループ社長解雇】【#百瀬晴美 ネット中傷主犯も逆に大炎上】という見出しが並んでいた。だが、記者会見が終わっても、事態は終わらなかった。明輝グループの法務部が、星川、晴美、そしてデマを拡散した連中に訴訟を提起する。彼らを待っていたのは法の裁きだった。数日後、星川が、私と娘の車の前に立ちはだかった。片腕はギプス、髭面に痩せ細ったその姿は見る影もない。「雲香、俺が悪かった!もう晴美とは完全に切れた。お願いだ、もう一度やり直そう。復縁してくれ!」私はその手を振りほどき、「どけ!」今度は
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