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第126話

Author: 雲間探
そのとき、辰也と清司も到着した。

二人の姿を見て、遠山家と大森家の人間はそろって迎えに出た。

何しろ、この二人は首都でも一目置かれる存在だ。

当然、誰もが彼らを非常に重視していた。

結菜は以前、辰也と一度会ったことがある。

今日再び彼を見た途端、化粧の整った顔がぱっと赤らんだ。

娘のそんな乙女心を見て、美智子も微笑んだ。

島村家は藤田家と並ぶ一流の名家であり、辰也自身の条件も申し分ない。結菜が彼を好きになるのも当然で、遠山家にとっても喜ばしい話だった。

前には優里と智昭、今度は結菜と辰也。前者はすでに既成事実に近く、後者まで実を結べば、遠山家は首都でまさに無敵の地位を築けるだろう。

そう思えば、遠山家の人々は辰也と清司に対して、いっそう熱のこもった態度を見せた。

しかし遠山家の様子を見た優里は、眉をひそめた。

あまりに媚びた様子に、違和感を覚えたのだ。

彼女は辰也たちとは対等な友人関係なのに、身内である遠山家の人間がこんなふうに辰也たちに媚びへつらうなんて、見ていて情けない。

とはいえ、これだけ人の目がある場では、さすがに口に出すこともできず、黙っていた。

大森家は何十年もの間、裕福な暮らしをしてきた。

それに対して、遠山家が富豪の仲間入りをしたのは、大森家との縁故のおかげだ。

とはいえ、それもまだ十数年に過ぎない。

家としての格や歴史で言えば、遠山家はやはり大森家には及ばない。

そのため、辰也や清司からすれば、遠山家はどこか物足りなく感じられていた。

とはいえ、優里との関係があるため、彼らはそこをあまり気にしていなかった。

贈り物を遠山家に渡すと、彼らは優里に尋ねた。「智昭は?まだ来てないのか?」

優里は答えた。「最近海外のビジネスが少しトラブってて、ここ数日ずっと遅くまで対応してたの。今日もまだ片付いてないみたい。少し遅れて来るって聞いてる」

それを聞いて、辰也と清司は軽く頷き、それ以上は何も聞かなかった。

優里は彼らと親しいため、自ら席まで案内して座らせた。

その頃には、すでにだいぶ時間も経っていた。

宴を始めてもいい頃合いだった。

ただ、今日の主賓とも言える智昭がまだ姿を見せておらず、遠山満は先に開宴していいものか迷っていた。

彼は優里と佳子に意見を求めた。

優里はあっさりと言った。「先に始めて」

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Comments (2)
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masakos31
優里は辰也達と対等な関係と思っているけど、クズ男のおかげ。遠山家と大森家が駄目になってほしい。 その時に擦り寄って人達がどうなるか見てみたい。 結菜は何もしていないのに偉そうなのが読んでいて嫌になる。
goodnovel comment avatar
カリン様
さっさと、旦那と、別れでハッピーになってほしい。
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