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第388話

Author: 雲間探
敦史は智昭に言った。「せっかく来たんだから、一緒に遊んでいかない?」

「いいですよ」

敦史は智昭と挨拶を交わした後、ようやく義久や礼二たちに向き直りながら言った。「さっき、どこまで話してたっけ?」

湊礼二が答えた。「さっきは、他国の探査機が我が国の制御区域に入ってきた場合、どう対処するのが最善かという話でした」

優里はそれを聞き、思わず思案に沈んだ。

敦史は笑いながら言った。「あなたと玲奈はどう思う?」

さっきは、玲奈も礼二もまだ深く考える暇もなかった時に、智昭と優里が現れた。

今あらためて敦史に問われ、玲奈と礼二は一瞬、静まり返った。

優里はここで思考を引き戻された。

玲奈?

敦史は玲奈のことをずいぶん親しげに呼んでいる。

それに、敦史が玲奈を見るときの眼差しには明らかな親愛の情が宿っていて、本気で彼女のことを評価しているように見えた。

彼女は眉をひそめた。

そう思った次の瞬間、玲奈がふいに口を開いた。「相手の探査機の制御権を奪って、それをそのまま返す、とか?」

玲奈がそう言うと、敦史と晴見は思わず笑い出した。

礼二は何かに気づいたような顔をして、玲奈に向かって親指を立てた。

敦史は良し悪しを語らず、穏やかな笑みを浮かべながら尋ねた。「自分の技術に、そんなに自信があるのか?」

玲奈は少しだけ間を置いてから答えた。「多分……難しくないかと?」

今度は義久が笑みを浮かべて言った。「本当に腕がある人は、言うことも堂々としてるな」

敦史も笑って言った。「その通りだ」

我が国は昔から平和を愛し、他国と良好な近隣関係を築いてきた。

たとえ他国の探査機が意図的に、あるいは偶発的に我が国の制御領域に侵入したとしても、それが他人の物であるならば、当然返却すべきだ。

そうすることで、双方の間に無用な摩擦が生じるのを避けることができる。

だが、この方法は表面的には礼儀正しく穏やかに見えて、実は他国の技術に対する強烈な軽視でもある。

なぜなら、相手の探査機の警報を作動させずに制御を奪えるというのは、相手の技術を完全に凌駕していることを意味するからだ。

相手国がこの事実を知ったなら、怒りに震えるだけでなく、我が国をより強く警戒するようになるだろう。

優里は最初、玲奈のその答えを聞いたとき、それが何の意味を持つのか理解できなかった。

だが
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Comments (56)
goodnovel comment avatar
千恵
あー、皆さんのコメントが面白くて ニヤニヤ うんうん しながら読みました。 ありがとう
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masakos31
翔太に姉と優里が知り合いってどこに書いてあったのか?教えて読み返すから。 翔太は玲奈の実力と美貌、性格の良さに惹かれたと思いたい。最初の時に夢中にさせて捨てると書いてあったが、本当にそういう事をしたら、クズ優里と一緒に地獄へ落ちて。
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ayako
おじさま達は玲奈の凄さを優里に見せつけるために智昭に誘いの言葉をかけたのかな?と思えてきた。全く会話についていけてなかった優里滑稽だったわ。
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