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第550話

Author: 春うらら
結衣はほむらの車椅子を押してエレベーターを降り、言った。「なるほど、このホテルがこんなに高いわけね。お金、全部この花に使っちゃったんじゃない?それに、このレストランの飾り付け、ちょっと派手すぎない?」

なんだか、このレストランの装飾はあまりにも豪華すぎる気がする。ただ食事をするだけのレストランなのに、ここまで豪華にする必要があるのかしら?

結衣はほむらの車椅子を押してレストランに入った。中に入るとすぐ、少し離れたところに拓海が座っているのが目に入った。しかも、レストランには時子、明輝、静江、そして詩織たちの姿もあった。

彼女は足を止め、時子を見て言った。「おばあちゃん、どうしてここにいるの?

それに詩織まで……どうしてみんないるの?しかも、どうして私に秘密にしていたの?」

彼女の言葉が終わらないうちに、それまで車椅子に座っていたほむらが突然立ち上がり、ポケットから指輪のケースを取り出すと、結衣の前でひざまずいた。

「結衣、この間ずっと考えていたんだ。どこで君にプロポーズしようか、君が承諾してくれるだろうか、って。

考えた末に、君の家族や友人の前でプロポーズして、みんなに僕たちの幸せを見守ってもらうのがいいと思った。僕と、結婚してくれないか?」

結衣はその場に呆然と立ち尽くし、ほむらの手にある指輪と、彼がひざまずいている姿を見つめた。昨日のリハビリではまだ足が震えていた様子など、全く感じられない。

「じゃあ、あなたの足、もう良くなったの?」

ほむらは答えた。「……そこは大事じゃない。大事なのは、僕が結衣と残りの人生を一緒に過ごしたいってこと。結婚してくれないか?」

「待って、どうしてそれが大事じゃないの?ということは、あなたはもう治っていたのに、私の前ではまだリハビリが必要なふりをしてたってこと?また私を騙したの?」

ほむらは少し困った表情で言った。「結衣、君のためにこのサプライズを用意してたんだよ」

結衣は不満そうに彼を見た。サプライズを準備するからって、嘘をつく必要はないでしょう?

これは、あとでしっかり説教して、この勝手に何でも決めてしまう悪い癖を直させなければ。

それに、こんなに大勢の人の前で突然プロポーズされても、嬉しいというより、むしろ緊張してしまう。

詩織が結衣を見た。「結衣、こんな時に、細かいことは気にしないでいいじゃな
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Comments (3)
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陽子
これで完結⁈ 結局、ほむらとの最初の出会いは......
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ちこにゃん
終わり?コレで?プロポーズで終わりとは…なかなか斬新かもwww
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Yuka Murata
これで完結なの? 駆け足だったけど幸せになったなら良かったw笑
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