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第75話 再会

last update Huling Na-update: 2025-05-10 09:08:05

 再び北への旅が始まった。

 今度は俺とクマ吾郎、エミルの三人旅だ。

 子供のエミルを連れての旅は、いつもより少々苦戦した。

 エミルは体力がまだあまりないので、どうしても歩みが遅くなる。

 とはいえ彼が一生懸命なのは伝わってきた。

 ときどきクマ吾郎の背中に乗せてスピードを上げながら、それでも歩ける分はなるべく歩いてもらった。

 エミルの心意気を無駄にしたくなかったからな。

 魔物が出たらクマ吾郎にエミルのボディーガードをしてもらって、俺一人で戦った。

 まあ、極端に強い魔物はここらじゃ出ない。

 戦うのが俺だけでも、油断しなければ特に問題はない。

 いい腕ならしになったってとこだ。

 そうして半月と少しの日にちが経過して、俺たちは再び北の平原へとやって来た。

 森の先の平原は前よりも残雪が減っていて、すっかり春の様相を呈している。

 川沿いに約束の場所へ向かえば、イーヴァルたち雪の民はテントを張って待っていてくれた。

「ああ、間違いないわ! この子はリリアンの息子」

 エミルと対面すると、イーヴァルの奥さんは泣き出してしまった。

 イーヴァル自身も目を潤ませながら、妻と孫を両手に抱きかかえる。

 エミルは祖父母の様子に戸惑いながらも、嬉しそうにしている。

 並んでいる彼らを見ると、確かに血縁関係を感じた。

 特にエミルは奥さんとよく似ていた。

 エミルもきっと、母親の面影を祖母に見出したことだろう。

「リリアンは、この子の母親は私似でしたから」

 奥さんは泣き笑いの表情だ。

「ユウよ、お前には大きな恩ができてしまったな」

 イーヴァルが言う。ごまかしているが、目が赤い。

「前にお前が言っていた、開拓村の話。お前たちを待っている間、我が民と話し合ってみた」

「え?」

 以前は取り付く島もなく断っていたのに。

 意外な言葉に驚きの声を発すると、イーヴァルは説明して
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