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旅路へ

last update Dernière mise à jour: 2025-05-11 18:10:07

 ヨールとして冒険者にになり、3年が経った。

 今ではオリハルコンランクの2級。名ばかりで何もできなかった頃から考えると、随分と遠くまで来たもんだ。気がつけば、上級冒険者として名簿に名を連ねるようになっていた。

 人族の国『ヒューマニア』に点在するダンジョンは、ほぼすべて踏破した。命を削るように戦い、身ひとつで切り抜けてきた。貯金もそれなりにできたし、生きていく上での不安はもうない。

 ――やっと、次に進める。

 旅の最初に立てた目標は、世界平和。笑われるような理想だった。薄暗いボロ宿で一人、シミだらけの汚い天井を眺めながら、どうやって世界を統一しようか……なんて、一生懸命に考えていたあの日が懐かしい。

 でも、それはただの夢じゃない。俺がこの異世界に飛ばされた理由は、世界を一つにしなければ元の世界に帰れないからだ。

 次に目指すのは、獣人の国『ビーストリア』。

 人族とは何世代にもわたり対立してきたと聞く。けれど、俺には失うものも、守るものもない。その分、恐れずに飛び込める。冒険者という立場が、せめて対話のきっかけになればいい。

 まずは向こうの冒険者たちと関係を築こう。共に依頼をこなし、実力を認めてもらえれば、やがては国の中枢に声が届くかもしれない。急がない。

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  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   旅路へ

     ヨールとして冒険者にになり、3年が経った。 今ではオリハルコンランクの2級。名ばかりで何もできなかった頃から考えると、随分と遠くまで来たもんだ。気がつけば、上級冒険者として名簿に名を連ねるようになっていた。 人族の国『ヒューマニア』に点在するダンジョンは、ほぼすべて踏破した。命を削るように戦い、身ひとつで切り抜けてきた。貯金もそれなりにできたし、生きていく上での不安はもうない。 ――やっと、次に進める。 旅の最初に立てた目標は、世界平和。笑われるような理想だった。薄暗いボロ宿で一人、シミだらけの汚い天井を眺めながら、どうやって世界を統一しようか……なんて、一生懸命に考えていたあの日が懐かしい。  でも、それはただの夢じゃない。俺がこの異世界に飛ばされた理由は、世界を一つにしなければ元の世界に帰れないからだ。 次に目指すのは、獣人の国『ビーストリア』。 人族とは何世代にもわたり対立してきたと聞く。けれど、俺には失うものも、守るものもない。その分、恐れずに飛び込める。冒険者という立場が、せめて対話のきっかけになればいい。 まずは向こうの冒険者たちと関係を築こう。共に依頼をこなし、実力を認めてもらえれば、やがては国の中枢に声が届くかもしれない。急がない。

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   最強の肉体 side健崎 加無子

     戦斧と盾を置き、岩山を駆け登っていると、ロックリザードが懲りもせず襲いかかってきたが、噛みつきをバックステップで避け、ハンマーのように右手を脳天に叩きつけると岩のような表皮は砕け、頭蓋を砕く音が聞こえ、ロックリザードは舌を出してぐったりと力なく倒れた。回収する数が増えてしまったけどラマツンがいるから大丈夫だろう。 2体のロックリザードを回収すると、山間を薄いオレンジ色に染め上げながら太陽が昇ってきていた。そろそろラマツンも交代しているだろう。地面を慣らすように尻尾を持ってトカゲを引き摺りながら大急ぎで岩山を降りた。 門に近づくと、ラマツンと交代した門番が目を丸くしながら口をあんぐりと開けていた。「ラマツン、行くよ」「よ、よし行くか。回収したやつはアジャが見てくれるから、門の横に並べておこう」 交代した門番はアジャというらしい。ラマツンよりも小さいが「お、おいラマツン。その怪力の女の子は彼女か?」「ラマツンは僕の手下」「そう、私はケンザキ様の下僕……って違うだろ!」「行くぞ我がラマツン」「だから違うって! 武器は持っていかないのか?」 無視して山を登り始める。ラマツンはやれやれと首を振っているが、僕は早く終わらせて寝たい。 上から順に回収していく。一往復で大体1時間半くらいかかり、僕が2体、ラマツンが1体の計3体だと7往復で終わる計算だ。 3往復し、4往復目に差し掛かるとラマツンが遅い。「ラマツン遅い」「ぜぇ……はぁ……少し休憩しないか?」「だからモテない」「な……!? やるよ、やりますよ!」 ラマツンが元気になったみたいだ。両頬を叩いて気合を入れているようだが、顔面蒼白で体調が悪そうだ。恐らくそれが巨人族の絶好調なのだと思う。 途中ラマツンがロックリザードに襲われた。武器を持っておらず、疲れから反応できていない様子だったので、飛び上がって

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   ゴネ side健崎 加無子

    「街に入りたい」 僕は今街の門の前にいる。門番が街の中に入れてくれなくて困っている。「だからダメだと言っているだろう! 夜間の門の開閉はゴールド級冒険者以上もしくは許可された者以外には出来ない!」 僕よりも背の高いメロンのように逞しい肩をした巨人族の門番がガミガミと怒っている。「ねえ、街に入りたい」「いつまで続けるつもりだ!」「街に入れるまで」「それでは朝になってしまうな」「じゃあそうする。街に入れて」「気でも触れてるのかこの娘は! 怪しい格好に怪しい言動、通せるわけがないだろう!」「じゃあ脱ぐ」 盾と戦斧を地面に置き、上着のボタンを1つ外す。「何をしている貴様! 服を着ていようが着ていまいが朝まで街には入れんのだ!」「僕を通さない、冗談も通じない。つまらない人」「な、なに……。この俺がつまらないだと!? よーし分かった。貴様はどうせ朝まで街に入れんのだ、門が開くまで俺が話に付き合ってやろう! 俺の名前はラマツンだ」「僕はケンザキ」 ラマツンは肩に担いでいた5メートルはあるだろうロングハンマーの先端を下にして地面に立てるように置き、腰に手を当てて仁王立ちになった。「ケンザキは冒険者なのか? 何故1人でゴールド級が依頼を受けるような場所にいる?」 返答に困る質問だ。なんて答えようか。「冒険者じゃない。岩トカゲを倒してた」「岩トカゲってロックリザードのことか? 南の森にいるストーンリザードではなくてか?」「ちょっと待ってて」 辺りは真っ暗で月明かりと星明かりしか頼るものがないが、何も見えないわけではない。盾を地面に突き刺し、岩山を駆け上がり、一番街に近い位置で倒したトカゲの尻尾を掴んでラマツンの元へ持って帰ってきた。「これ」「ロックリザードじゃないか! ふむ、確かにソロで倒すには骨が折れる相手だ。日が暮れてしまうのも頷けるな。ちなみに俺ならソロで1時間もかから

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   お友達 side八王子 麻里恵

    「じゃあこのリパッパデルコーサをお願いしまーす!」「かしこましましたー、こちらの席へどうぞ」 自信満々に注文したけどわたしは何を頼んだんだろう。日本円で1300円てまあまあの値段だったから失敗してないといいんだけど。 ウエイトレスさんが持ってきてくれた水は薄くピンクがかった色をしている。氷は入ってないけどひんやりと冷たい。「頂きます!」 あ、これ多分ワインを薄めたやつだ。アルコールはあまり感じないけれど、ほんのりと赤ワインの香りがする。「お待たせしましたー、リパッパデルコーサでーす!」 透けるように薄く切られた円形の巨大な大根で魚や色彩豊かな野菜が包まれてる。美術展に展示されていても気づかない程の完成された美しさに、ほぅと思わず溜息が出る。 木のナイフとフォークで食べるようだ。大胆に半分に切ると、中からソースがとろりと溢れ出し、同時にわたしのヨダレも溢れ出した。恐る恐る一口大に切り分けたそれを口に運ぶ。「うんまっ! なにこれー!」 これは当たりだ、大当たりだ。息つく間もなくぺろりと平らげてしまった。さて、デザートが気になりますねぇ。「ウエイトレスさーん、甘いものってありますー?」「こちらのゲロンデなど如何でしょうか?」「はーい、それにしまーす!」 名前は不吉な感じがするけど、このお店のならなんでも美味しい気がする。大丈夫でしょ。「こちらゲロンデになります」「はー……何これ?」「こちらゲロンデというカエルのモンスターの鼠径部付近の脂肪をギロングヤシの実からとれたミルクで味付けしたものになります」「な、なるほど……」 カエル……。ぶつ切りの白くてシワシワでぶにゅぶにゅした見た目の塊がココナッツミルクのような液体に浸っている。どうしようか、勇気を出して食べてみようか。えーい、いっちゃえ!「お、美味しい。美味しすぎる!」 甘みが強く酸味のある香り高いココナ

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   軍団 side八王子 麻里恵

    「うわぁ……。大分増えちゃったなぁ」 わたしの目の前には187体のゴブリンが規則正しく整列している。更にまるおを含めた25体のスライムが私の周りでぴょんぴょん飛び跳ねていて、5体の体毛が全くないかわりに苔に覆われている猪が近くで寝ている。モスボアという名前らしい。フカフカの苔が日差しを浴びて温かくなっているので、寄りかかってソファー代わりにすると凄く気持ちがいい。何故モンスターの名前が分かったかというと。(ステータス) 八王子 麻里恵  レベル:17  属性:魔 HP:420  MP:1410  攻撃力:210  防御力:210  敏捷性:210  魔力:3600 スキル  ・モンスタールーム レベル1  ・モンスター合成 レベル1 魔法  ・テイム レベル2 このモンスター合成というスキル、例えばゴブリンを指定してみると。(ゴブリン30体を合成し、ボブゴブリンを作成しますか?) こんな感じに脳内に文字が表示される。テイムしたモンスターにしか使えないけど、これでモンスターの種類が分かるようになったってわけ。あ、テイムもレベルが上がって3000体までモンスターを従えることが出来るようになったよ。 で、ですね。何故仲間になったモンスター達を集めているかと言うと、どのタイミングでモンスター合成をしようかなって話なんだよね。スライムはどんどん合成していった方がいいとは思うんだけど、モンスターを見つけて来てくれるゴブリン達を合成するとかなり効率が悪くなるのよね。「キモスケ、キモジロウ、こっち来てー!」「「ゲギッ!」」 右手を挙げて返事をすると、2体のゴブリンが駆け足でやってきた。(モンスター合成) スキルを使用するとキモスケと他の29体のゴブリンが眩い光に包まれ、29体のゴブリンが丸い光の玉となりキモスケに集約された。 キモスケを包む光は徐々に大きくなり、霧散するように光が弾け飛ぶと、中からはゴムのよ

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   冒険者 side武藤 零ニ

     最初にこちらを威圧するような態度だったので高圧的な嫌なやつかと思ったが、中々話のできる良い奴そうだ。「俺も冒険者になりゃあ強くなれんのか?」「ははは、試してみるといい。良いパーティーが見つかるといいな」「1人じゃ駄目なのか?」「ふむ、パーティーを組めばより強いモンスターと戦える。ソロでダンジョンに挑む馬鹿はおらんしな。早く強くなりたいのであれば、仲間を探すべきであろうな」「そういうもんか、じゃあ俺も冒険者ってのになってみっかな! 強くなったら俺のパーティーにおっさんも誘ってやるよ!」「それは熊ったなー。ぶぁーっはっはっはっは!」「おいおっさん、つまんねえぞ!」「ぶぁーーっはっはっはっは!」 冒険者か、今は何より強くならなきゃいけねえしいいかもしれねえ。しかしパーティーか、よええのと組まねえように気をつけねえとな。街の中心に冒険者ギルドってのがあるらしいから、そこで登録すりゃあ誰でもすぐに冒険者になれるみてえだ。 頭の中でおっさんの話をまとめていたら閂の外れる音の後にゆっくりと門が開いた。クリスと……なんだありゃ、首の長え奴がいやがる。キリンの獣人か、あんなのになってたら生活に不便すること間違いなしだったぜ。「お待たせしましたー! 衛兵長のジラフォイですー!」 声高すぎだろ、しかもジラフォイってなんだよ。こいつ笑わせにきてやがんな!「あ、あぁ。こっちは待ってる間にそこのおっさんにいい話が聞けて良かったぜ。街には入れるのか?」「まずはテストをするフォイ! 合格したら入れてやるフォイ!」「ぶふぉ……くっ、くく……。そ、そうか」 このキリン野朗畳み掛けてきやがった。笑いを堪えてたとこにこの不意打ちは卑怯だろ。獣人てのはこんなのばっかりなのか?「ジラフォイ隊長、いい加減笑う奴はいい奴っていうテストはやめた方がよいのではないか? 意味がない気がするのだが」「今日はもう遅い、この狼獣人の子供も早めに宿をとっ

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   動物園 side武藤 零ニ

    「やべえな、日が暮れてきやがった」 気づけば空には赤く染まった夕焼け雲が浮かんでいた。 どれほど走っただろうか、こちらに気付いては襲ってくるコボルトから逃げるように駆け回っていればそのうち諦めるだろうと思っていたが、奴らはなかなかにしつこかった。 体が疲れてきやがったんで立ち止まったら、木々の合間から出てきた15体のコボルトが向かってきやがった。木の槍で片っ端から心臓を突き刺してやると、いつの間にかレベルが12に上がってやがる。(ステータス) 武藤 零ニ(むとう れいじ) レベル:12 属性:無 HP:1350 MP:390 攻撃力:650 防御力:325 敏捷性:650 魔力:150 スキル ・アイテムボックス レベル2 ・鑑定 レベル1 ・身体強化 レベル1「スキルのレベルが上がってやがる。お、新しいスキルもあるな!」(アイテムボックス レベル2:容量100万リットル。保存物の時間経過有り。生命は収納不可)「歩く倉庫じゃねえか! んでこっちは」(身体強化 レベル1:対象1体の攻撃力と防御力と敏捷を2倍にする)「へへ、こいつはいいぞ。ブラフに使えるぜ!」 対人戦で重要なのは、いかに自分の実力を相手に悟らせないかだ。弱いフリして相手を調子に乗せたらこっちのもの、あえて無防備に殴られるなんて事をよくやったもんだ。相手の数が多い時にやったらそのままボコられちまうけどな。 しっかし、このゴールデンレトリーバーを人型にしたようなコボルトとかいうモンスターは次から次に向かって来やがるが、街に持って行きゃ金になるのか? アイテムボックスの容量も増えたし、ぶっ殺した毛玉どもを片っ端から収納してやってもいいんだがよ。とりあえず入れちまうか。「ん? なんだか香ばしい匂いがすんな。人か!? よし、早速試してみるか」(身体強化) 匂いのする方へ四足歩行で風を切り裂くように走る。レベ

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   グリードフィル 後編

    「しっかし、オネイローサもすげえ遊びを考えついたよな。自分で作った世界に別の世界の人間を入れて争うように仕向けるなんてさ」「ふぉふぉふぉ、この遊びが始まる前の、平和な世界に凶悪なモンスターを解き放って滅亡するかしないかを賭けるゲームもわしは好きじゃったがの」「オネイローサは天才だと思うのっ! 文明の発展してない世界をブラックドラゴンがめちゃくちゃにするのも楽しかったけどぉ、自分の駒で遊べるこのゲームの方が断然楽しいねっ!」「ふふふ。何者にも影響されず、全ての理を捻じ曲げることのできる私たち無欠の存在が、何が起こるか分からない運という要素を最も楽しめる方法を考えたのがこのゲーム『グリードフィル』です」 オネイローサは氷のように冷たい笑みを浮かべた。「ふぉふぉふぉ、ワシらの愉しむという欲望、駒どもの生き残りたい、願いを叶えたいという欲望、さらにそれを阻む七欲にまみれた安定を欲する住人達。欲に満ちた世界グリードフィルとはよく言ったもんじゃて」 イドモンが口の端を上げ目を細めると、顔に刻まれたシワがさらに深いものとなり、その笑みはどこか邪悪なものを感じさせた。「アイギナちゃんはねぇ、計画が失敗した時の、仲間を失った時の、そして自らが死ぬ間際の希望を失った顔が堪らなく好きなのっ! それは途中までうまくいっていればいっているほど深い絶望を感じさせてくれてぇ、腹の底から笑えるのっ!」 無邪気に笑う幼女だが、そのキラキラと輝く瞳の奥には奈落の底を感じさせる闇が見えた。「俺はどん底から這い上がって、生に縋りもがき苦しむ様が好きだぜ。仲間に裏切られたり、片腕を失ったり、それでも必死に世界をどうにかしようと足掻く命の灯火はなかなか熱いものを感じるな。最後はどうせみんな死んじまうけどな。ヒャハハハハハ」 シドは金縁の丸メガネを右手の中指でクイッと上に持ち上げると、天を仰ぐようにして笑った。「あらあら、皆さん楽しそうですね。ですが、毎回同じではつまらないでしょう? 今回は、誰かが統一するかしないか賭けをしましょう。チップは皆さんが管理する世界です」 「おいおい、統一なんて駒を争わせる為の口

  • 闇属性は変態だった?転移した世界でのほほんと生きたい   グリードフィル 前編

    「あらあら、皆さんお揃いのようですね。それでは始めましょうか」 光に包まれた世界で3人の男女の前で話し始めたのは、煌めく金髪に心の中まで見通すような爛々と輝く銀色の瞳に、彫刻のような端正な顔立ちの一目見たら誰しもが心を奪われてしまうような美女。そう、黒川 夜を人族の国ヒューマニアへと送った女神である。「早いのうオネイローサ。今回で5回目じゃが楽しみで仕方がないわい」 肩まであるウェーブがかった長い白髪に感情の読み取れない白い瞳、所々にシワの刻まれた顔には整った長い口髭と顎髭を蓄えている老人の姿をした神が続いて口を開いた。その口元はニヤリと口角がいやらしく上がっている。武藤 零ニを獣人族の国ビーストリアに送ったジジイと呼ばれていた神だ。「イドモンじいちゃんは毎回悪い顔をしますねぇ。アイギナちゃんの駒はとんでもなく強いのですっ! 今回こそは負けませんからねっ!」 自らをアイギナと名乗るこのほっぺたを朱色に染めた緑色のおかっぱ頭の幼女は、健崎 加無子を巨人族の国アトラストリアへと送った女神である。手をパタパタと動かし、目尻を下げてニコニコと話している。「おいチビ助、まさかまたズルしてねえよな? 前回は属性なしに2つも属性つけて負けてんだぞ?」 高圧的な態度で話すブルーのダブルスーツを着こなす、黒髪をオールバックに纏め上げた英国のモデルのような見た目の男性は、八王子 麻里恵を魔人族の国デモネシアに送ったシドという名の神だ。「ぐっ……。う、うるさいですよっ! シドは相変わらず裏表が激しいですねぇ」「ふぉふぉふぉ、その様子じゃとまた何かやったみたいじゃのぉ。それで負けたら罰ゲーム2倍じゃぞー?」「あらあら、前回お咎め無しにしてあげたのですから、今回は3倍ではないのですか?」「ははは、そりゃいいぜ! 覚悟しとけよクソガキ!」 地球からグリードフィルという異世界へと4人の高校生を強制的に送り出した神たちは、何やら集まって楽しそうに会話をしているようだ。 神達がそれぞれ空中に手をかざすと、テレビのモニターの様に、それぞれが異世界に送った者たちが停

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