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146.平穏な日常と崩壊①

last update Last Updated: 2025-08-27 19:57:10

華side

平穏な日常にいると、この生活が続くのが当たり前という錯覚を起こしてしまう。しかし、その日常は当たり前ではなく、突如として音を立てて崩される時もあるのだ。

火曜日。この日は護さんが仕事のため、朝早くから東京へと向かった。長野から高速道路を使っての移動を考えると東京で暮らした方が便利なのに、この生活を続けるのは、少しでも私たちと一緒にいたいという護さんなりの優しさと愛情だ。

久々に一人で過ごす時間ができたため、私は運転手に頼み、少し離れたショッピングモールへと連れて行ってもらった。

護さんは少しでも時間が出来ると会いに来てくれるが、私自身としては、たまには一人の時間も楽しみたいという気持ちもあった。夕食前には戻る予定だったが、お迎えの時間には間に合いそうになかったので家政婦に頼み、久々のひとり時間に羽を伸ばしていた。

トレンドが並んだ煌びやかなショーウインドウを歩き、新作コスメを試させてもらい、甘い香りの紅茶をゆっくりと味わう。家では母親に徹しているが、今日は一人の女性に戻った気分だった。

それでも子どもたちのことが気になって、新作のリップ以外に買うものは子ども服ばかりだ。可愛らしいキッズ用品を取り扱う店ばかりに目がいく。羽を伸ばしても、自分は母親なのだと実感させられる。結局、予定よりも早く切り上げて別荘に戻っている最中のことだった。

プルルルル……

車の後部座席でう

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