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第2話

작가: ロータス
夜、そろそろ眠ろうとしていたとき、玄関の鍵が「カチャリ」と小さな音を立てた。

ロレンツォが帰ってきた?

私は寝室の入り口に立ち、キッチンから聞こえてくるかすかな物音に耳を澄ませた。

最近、彼は時々こうして突然帰ってきては、キッチンで何かを作り、それを持って慌ただしく出ていった。

以前、オーブンから漂ってくる甘い香りを嗅いで、私へのサプライズだと思ったことがある。

「何を作ってるの?」

あのとき私は興味津々で彼のそばへ寄っていった。

けれどロレンツォは顔も上げず、焼き上がったばかりのレモンタルトを手早く箱に詰めながら答えた。「キアラがこれを食べたいって言うから」

彼は手際よくラッピングし、仕上げにリボンまで丁寧に結んだ。

「私もお腹すいた」

黄金色に焼き上がったタルトを見つめながら、私は思わずごくりと喉を鳴らした。

彼の手が一瞬止まった。そこでようやく、私もレモンタルトが好きだったことを思い出したらしい。「アンナに何か作ってもらうか?それともデリバリーでも頼む?」

その日、彼が出ていったあと、使用人のアンナが私のために麺料理を作ってくれたが、なぜかその味はひどく苦く感じられた。

今ではもう、彼が何を作っているのかも、それが誰のためなのかも、どうでもよかった。

少し喉が渇いていたので、私はただ水を一杯飲もうとキッチンへ向かった。

キッチンには、コーヒーとココアのほろ苦く甘い香りが漂っていた。

彼が作っていたのはティラミスだった。

コーヒーリキュールを染み込ませたビスケットを敷き、その上にマスカルポーネクリームを重ね、仕上げにたっぷりとココアパウダーを振りかける。

ロレンツォはあまりにも集中していて、私が入り口に立っていることにすら気づかず、グラスを手に取って水を注いだところで、ようやく私に気づいた。

「ヴィッキー?」

彼は勢いよく振り返ると、反射的に調理台を体で隠した。「まだ寝てなかったのか?」

「喉が渇いただけ」私は淡々と答えた。

「これは……」私の視線がティラミスをかすめたのを見て、彼は私が手を伸ばすとでも思ったのか、慌てて言葉を続けた。「これは食べちゃ駄目だぞ!コーヒーリキュールも入ってるし、生の卵黄も使ってる。妊婦にはよくないから」

その慌てぶりを見ていると、笑えてきた。

3か月前、つわりがひどかった頃には、私に白湯を一杯用意してくれたことすらなかったくせに、今はキアラに食べさせるデザートのために、こんなにも神経を使っている。

「安心して」私は手についた水滴を拭った。「あなたたちのデザートなんて、これっぽっちも興味ないから」

ロレンツォが何か説明しようと口を開いたとき、またスマートフォンが鳴った。

画面には「キアラ」の名前が表示されていた。

「ロレンツォ……」電話の向こうから、弱々しい吐息混じりの声が聞こえてきた。「私、熱が出たみたい……」

ロレンツォの表情が一瞬にして複雑なものへ変わった。眉間には苛立たしげに深い皺が刻まれたのに、その眼差しだけは柔らかくなった。「また勝手に薬を飲んだのか?待ってろ、すぐ行く」

電話を切ると、彼は手慣れた様子でティラミスを箱に詰めた。リボンを結ぶときには、わざわざ形まできれいに整えていた。

「今日、私たちは夫婦になるはずだったのよ」私は不意に言った。

心のどこかに、最後のわずかな期待が残っていた。

「困らせるなよ」彼は顔も上げなかった。「今日はキアラの誕生日なんだ。誰かがそばにいてやらないと」

「これで17回目よ。私を置いていくの」自分の声がわずかに震えているのが分かった。

ようやくロレンツォが顔を上げた。その目には、もう何度見たか分からない葛藤が浮かんでいる。「ヴィッキー、そんなこと言うな。マルコとの約束は分かってるだろ……」

「最期の頼みでしょう」私は彼の続きを代わりに口にして、笑った。「行って。キアラを待たせたらかわいそうだもの」

やがてエンジン音が遠ざかっていった。

私はスマートフォンを手に取った。

キアラは5分前にSNSを更新していた。

【熱が39度もあるの。でも、ロレンツォがサプライズを用意してくれるんだって】

一緒に投稿されていた写真には体温計が写っていた。

表示されていた数字は、36.7度だった。

私はスマートフォンを置き、ふと3年前、初めてロレンツォと出会った日のことを思い出した。

当時、北ベルディアと南ベルディアのマフィアがヴァレーノで交渉を行っており、私は北側の財務顧問として出席していた。

ロレンツォが南側の人間を引き連れて会議室へ入ってきた瞬間、双方のファミリーメンバーが一斉に銃を抜いた。

けれど彼はそんなことなど意にも介さず、まっすぐ私のもとへ歩いてくると、大勢が見守る中で片膝をつき、ルッソ家の後継者の証である金色のリボルバーを私の手のひらに載せた。

「ヴィクトリア・デ・ルカ」

彼は私を見上げた。エメラルドのような瞳には、私に一目で心を奪われたことを隠そうともしない、激しい熱が宿っていた。「この中には弾が一発入ってる。もし俺が君を裏切ったら、いつでも撃ってくれて構わない」

その場が騒然となった。

父は激怒してグラスを叩きつけ、南側の長老たちは口々に馬鹿げていると怒鳴った。

けれど私は、その行為がどれほど重い意味を持つのか分かっていた。

ルッソ家のドンである自分の命を、彼はこうして敵対する相手の手に預けたのだ。

あとになってロレンツォから聞いた話では、マルコは激怒したらしい。南ベルディアの権力を象徴する品を、敵対する北ベルディアの後継者に渡すなど正気ではない、と。

けれどロレンツォは、どうでもよさそうに肩をすくめただけだった。「どうせそのうち家族になるんだから、同じだろ」

あの頃、ロレンツォは確かにキアラを鬱陶しがっていた。

彼女の話になるたび、いつも苛立たしそうな口調で言っていた。「マルコの娘は、どうやっても手放せない厄介な荷物みたいなもんだ」

私が初めてキアラに会ったのは、私たちの婚約パーティーだった。

白いシフォンのワンピースを着た彼女は、部屋の隅にひっそりと立っていた。顔色は青白く、物静かな印象だった。

「あの子がキアラ?」私はロレンツォの肘を軽くつついた。

彼はそちらを見ようともしなかった。「ああ。体が弱いくせに、わざわざ来るなんて面倒なやつだ」

そう言った直後、彼はウェイターを呼び止めた。「隅にいるあの子にブランケットを持っていってくれ。それと、飲み物は温かいミルクに替えてやって」

その後、私は気づいた。

こうした矛盾した態度は、ほとんど二人の関係そのものだった。

「キアラは人に頼りすぎなんだ」

そう愚痴をこぼしながら、彼は彼女が何にアレルギーがあるのか、すべて把握していた。

「あいつ、本当に面倒くさいんだよ」

そう言いながら、彼女が入院すれば、いつだって真っ先に病院へ駆けつけた。

「少しは自立できないのか?他人の都合も考えろよ」

けれど、そう言ったあとにはたいてい、私たちの結婚式を放り出して彼女のもとへ向かうのだった。

鋭い着信音が鳴り響き、私の回想を断ち切った。

ソフィアからだった。

私の事情をすべて知る数少ない親友で、北ベルディアのあるファミリーの令嬢でもある。

「ヴィッキー!キアラのあの投稿、見た!?」

ソフィアは息つく暇もないほどの勢いでまくし立てた。

「なんでロレンツォがあいつのところにいるの?今日、ヴィッキーと結婚するはずだったじゃない!

なのに、今はあの病弱女の誕生日祝い!?しかも手作りのティラミス!?あいつ、あなたには作ったことあるの!?」

私は黙ったまま、冷え切った指先を見つめた。

「ヴィッキー?何か言ってよ!」ソフィアが焦れたように声を上げた。「まさか、また我慢したなんて言わないでしょうね?」

「ロレンツォとは、もう結婚しないわ、ソフィ」

私の声は自分でも驚くほど穏やかだった。「結婚式は中止になったから」

電話の向こうで、しばし沈黙が落ちた。

いつも威勢のいいソフィアでさえ言葉を失ったらしく、さらに数秒の沈黙が続いたあと、息を呑む音が聞こえた。「彼……今日もまた……誓いの途中で?」

「ええ」

ソフィアの声が一気に跳ね上がり、信じられないという怒りが爆発した。「17回目よ!17回目なのよ、ヴィッキー!しかも今はお腹に子供までいるのに!ロレンツォはいったい何がしたいの!?キアラって実の妹だったっけ!?」

「実の妹じゃないわ」私は淡々と訂正した。「マルコ・ロッシの娘よ」

「マルコ・ロッシなんて知ったことじゃないわよ!」ソフィアはついに悪態をついた。「マルコへの恩を返すために、あなたが一生我慢し続けなきゃいけないわけ!?ヴィッキー、あなたはデ・ルカ家の人間なのよ!いつからそんなに我慢強くなったの?」

「もう我慢しない」

私は鏡に映る自分を見つめた。

顔色は青白かったが、その表情は不思議なほど穏やかで、迷いはなかった。「ソフィ、一つ頼みがあるの」

「何?」

「中絶手術を受けられる病院を手配して」私の声は少しも揺れなかった。「中絶したら、ヴァレーノへ戻るわ」

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