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第6話

作者: みっつ
それでも莉乃は、すべてを平然と貪っていた。

あまつさえ、いけしゃあしゃあと私に「お茶はいかが?」などと聞いてきた。

「黙れ!」

蒼真が突然、低く唸り声を上げた。

その目に、ついに怒りの色が浮かび上がっている。

「安奈、話があるなら外で聞く。今日はこれだけ人が集まっているんだ。どうしても俺の顔に泥を塗りたいのか!?」

私は呆然と彼を見つめた。

ああ……これほどの事態になってなお、彼が一番気にしているのは自分の体面なのだ。

私がこの5年間、どんな思いで生きてきたかではない。

彼にどれほど無惨に騙されていたかでもない。

この「家」のために、爪が剥がれるまでチェリーを摘み、手首が腫れ上がるまで羊の毛を刈り、40度の高熱が出ても仕事を休むことすらできずに働きづめだったことでもない。

彼にとって重要なのはただひとつ、私が大衆の前で彼に恥をかかせたということだけ。

私は声を上げて笑った。

笑って、笑って――やがて、ひと筋の涙がこぼれ落ちた。

「何の権利があって?」

私は静かに問うた。

「蒼真。あなたは私を騙して5年も海外へ出稼ぎに行かせ、『帰国したら結婚しよう』と嘘を
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  • 5年の嘘、私を失ったあなた   第13話

    蒼真はハッと息を呑んだ。私は静かに告げる。「あなたが、私にいつも安らかでいてほしいって……そう願ってくれたからよ。でもね。その後、私から安らぎを奪い去ったのは……あなただった」彼の呼吸が微かに震える。私は構わず続けた。「だから、今日からもう、私の名前はあなたとは何の関係もないわ。私のこれからの安らぎも、もうあなたに祈ってもらう必要はない」そう言い捨てて電話を切り、私はその番号を着信拒否リストに入れた。その後、私は一度だけ蒼真の姿を見かけたことがある。それは1年後、業界のビジネス交流会でのことだった。私のスタジオは、すでに法人化して立派な会社に成長していた。その日、私はゲストとして壇上に立ち、証拠保全の重要性、女性の財産的自立、そして海外出稼ぎでのトラブル回避について講演を行った。客席には大勢の人が座っていた。スピーチを終えると、会場に大きな拍手が湧き起こる。その拍手の中――最後列の席にいる蒼真の姿を、私は見つけた。彼は色あせたシャツを着て、痛々しいほどに痩せこけていた。私が視線を向けたのに気づくと、彼は慌てたように立ち上がった。すぐに立ち去ろうとして、それでも去りがたい。交流会が終わった後、彼は会場の入り口で私を待っていた。冷たい風が吹く中、彼は両手で大切そうに小さな小箱を抱えている。私は避けなかった。ただ静かに、彼を見つめた。彼はその箱を差し出してきた。「……泥人形、直したんだ」私は視線を落とす。箱の中には、かつて真っ二つに割られたあの泥人形のペアが、不格好に接着剤でくっつけられていた。修復の痕は痛々しいほどにくっきりと残り、まるで醜い傷跡のようだった。彼は言った。「いろんな職人に見てもらったんだけど……誰もが、これ以上は無理だって。安奈。わかってるんだ、一度壊れたものは、もう元には戻らないってことは。でも……どうしてもお前に返したくて」私はその泥人形を見つめた。18歳の私。児童養護施設の裏庭に座り込んで、泥だらけの手でそれを作った。蒼真は私の隣に座って、不器用な手つきで人形に目を描き入れていた。彼は言ったのだ。「こっちがお前で、こっちが俺。俺たち、ずっと一緒にいような」一陣の風が吹き抜けていく。その瞬間、私の心の中で憑き物が落ちたように、すっと

  • 5年の嘘、私を失ったあなた   第12話

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  • 5年の嘘、私を失ったあなた   第11話

    あの頃の蒼真の瞳は、雪のように澄み切っていた。私はかつて、彼を愛していた。自分のすべてを懸けて、彼を愛していた。蒼真は声を詰まらせた。「すまなかった……本当に……すまなかった」私は彼をじっと見つめた。長い、長い時間。それから、静かに口を開いた。「蒼真、あなたが謝るべきなのは今の私じゃないわ。かつて、心の底からあなたを信じていた私よ」彼の目から涙がこぼれ落ちた。けれど、私はもう彼を見ることはなかった。きびすを返して裁判所を後にしたとき、降り注ぐ陽射しが痛いほど目に刺さった。階段を下りきったところで、私はふいにしゃがみ込んでしまった。九条弁護士が驚いて声をかけてくる。「望月さん?」私は手を振って制した。「大丈夫です」けれど、涙はすでに床に落ちていた。一滴。二滴。あっという間に、足元の地面を小さく濡らしていく。私が泣いているのは、蒼真のためじゃない。23歳の私のために泣いているのだ。努力さえすれば、いつか「家」が持てると信じていた私のために。異国の地で高熱にうなされながらも、歯を食いしばって彼に送金し続けた私のために。身ごもった子を諦め、冷たい手術台の上でひとりぼっちで横たわりながら、それでも「いつかきっと良い暮らしが待っている」と自分に言い聞かせた私のために。その日の夜。仮住まいの小さな部屋に帰った私は、スマートフォンの中にある蒼真の写真をすべて見返した。児童養護施設の門の前で撮ったツーショット。古ぼけたアパートで祝った誕生日のケーキ。彼が初めて買ってくれた薔薇の花。二人で一緒に作った、あの泥人形のペア。一枚見ては消し、また一枚見ては消す。そうやって消し続け、最後に残ったのは一枚の写真だけだった。それは、粉々に砕け散ったあの泥人形の写真。私はそれをじっと見つめ……やがて、それも削除した。その夜、私は夜が明けるまで泣き続けた。泣き尽くした後、顔を洗い、服を着替えた。スーツケースを開け、荷物を少しずつ、丁寧に収めていく。私の前半生は、ここで終わったのだ。朝日が昇る時、カーテンを開け放つ。眩しい光が部屋に差し込んできた。私は鏡の中の自分に向かって、静かに呟いた。「安奈、家に帰ろう」そこでふと、自嘲気味に笑ってしまった。私に帰る「家」なんて、どこにある

  • 5年の嘘、私を失ったあなた   第10話

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  • 5年の嘘、私を失ったあなた   第9話

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  • 5年の嘘、私を失ったあなた   第8話

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