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第2話

Author: 涼木
5年間の交際で、私が彼から受け取った「海外出張」のお土産のすべてがこれだった。

一方で、莉子が受け取っていたのはどうだろう。

プライベートスパ付きの高級リゾートでの宿泊、民族衣装を着てのデート、豪華な誕生日のサプライズ。

そして――彼女だけが呼ぶことを許された「サクくん」という特別な愛称。

手元のスマホが再び光り、朔也から一枚の写真が送られてきた。

まだパッケージに入ったままの、鹿の形をしたマグネット。

【可愛いだろ?莉子が一緒に選んでくれたんだ】

私への適当なお土産すら、彼女が選んでいる。

胸の奥で、何かが完全に冷え切って、粉々に砕け散るのを感じた。

私はメッセージの入力欄に文字を打ち込んだ。

【あなたは白石さんに何を買ってあげたの?】

けれど、送信ボタンの上で指を止め、入力した文字を一文字ずつ、ゆっくりと消していく。

そして、たったひと言だけ返信した。

【うん】

……

朔也がマンションに帰ってきた。

彼はスーツケースを引きずって玄関に入ってくると、サイドポケットから小さな紙袋を取り出して私に差し出した。

「ほら、土産のマグネット」

そして、別のポケットからもう一つ大きなブランドの紙袋を取り出し、無造作に玄関のたたきに置いた。

「それは何?」

「莉子への土産。マフラーだよ。あっちの国特有の柄が可愛いから買ってきてほしいって頼まれてさ」

紙袋の隙間から、ワインレッドのマフラーの端が覗いている。最高級のカシミヤ製だ。

そっと指先で触れてみると、とろけるように柔らかかった。

去年の冬、私は彼に「カシミヤのマフラーが欲しいな」とおねだりしたことがある。

すると彼は、「マフラーなんてわざわざ買う必要ないだろ。お前のクローゼットに何本も入ってるじゃないか」と言い放ったのだ。

私のクローゼットにあるマフラーは、すべて自分で、自分のお金で買ったものだったのに。

「白石さんに、マフラーを買ってきてあげたの?」

「あいつに頼まれたからな。ついでだよ、ついで」

朔也は靴を脱いでリビングに入ると、どさりとソファに腰を下ろした。

「あー、疲れた。飛行機で4時間も揺られてクタクタだよ」

「……ねえ、いつになったら私をあの北の国へ連れて行ってくれるの?」

私が尋ねると、彼は一瞬きょとんとした顔をした。

「なんだよ、急に」

「急じゃないよ。この5年間、ずっと聞いてる」

「……今は仕事が立て込んでるからな。まあ、そのうちな」

そのうち。

これで、17回目の「そのうち」だ。

私はそれ以上、何も言わなかった。

夕食前、朔也の母親から私のスマホに電話がかかってきた。

「紗良さん、朔也はもう帰ってきたかしら?結婚式の準備、急いでちょうだいね。親戚に送る招待状を早くしろって、こっちも急かされてるんだから」

「はい、今進めています」

「そういえば、先週莉子ちゃんが来てくれてね。結婚式で配るプチギフトのお菓子を一緒に4種類ほど選んでくれたのよ。あなたも確認してみてくれない?」

夕食の準備をしていた私の手が、ピタリと止まった。

「……白石さんが、プチギフトを選んだんですか?」

「そうよ。紗良さんは仕事が忙しいだろうからって、わざわざ手伝いに来てくれたの。本当に気の利くいい子よねぇ」

私は思わず、ソファでスマホをいじっている朔也に視線を向けた。

「お義母さん、そういうことは私に言ってくださればやりますから。白石さんに迷惑をかけるわけにはいきません」

「迷惑だなんて、そんなことないわよ。あの子はしょっちゅう遊びに来てくれるし。月に3、4回は来るから、あなたよりよっぽど顔を見せてくれるわね」

交際して2年目になった頃、私は「毎週ご実家に顔を見せに行こうか」と朔也に提案したことがあった。

しかし朔也は、「そんなに頻繁に行かなくていい。うちの親は騒がしいのが好きじゃないんだ」と却下したのだ。

だから私は月に一度訪問するようにしたのだが、その後彼はまた「お前も忙しいんだから、2ヶ月に1回でいいよ」と言い出した。

彼のお母さんは「人が来るのが好きじゃない」わけではなかったのだ。

「私が来るのが好きじゃない」だけだった。

莉子が月に3、4回も通ってきても、誰も迷惑だなんて思っていなかったのだ。

「お義母さん……プチギフトのことは、私がやります」

「そう?でも莉子ちゃんが選んでくれたお菓子、すごくセンスが良かったから、あなたも参考にするといいわよ」

電話を切った後、私は朔也を問い詰めた。

「ねえ、お義母さんのところに莉子を行かせて、結婚式のプチギフトを選ばせたの?」

「あいつが自分から行くって言ったんだよ」

「知ってたなら、どうして私に教えてくれなかったの?」

「いちいち言うようなことかよ?あいつは親切で手伝ってくれただけだろ」

「私たちの結婚式なのに、どうして部外者に手伝わせるの?」

朔也は面倒くさそうに眉根を寄せた。

「お前、毎日残業で忙しいだろ。俺はお前には時間がないと思って気を使ったんだよ」

「私の都合なんて、一度でも聞いてくれた?」

「はいはい、わかったよ。これからは全部お前が一人でやればいいだろ。それで満足か?」

吐き捨てるような、苛立ちを隠そうともしない口調。

喧嘩になると、毎回こうだ。

最初は「変な想像するな」と誤魔化し、次に「いちいち言うようなことかよ」と開き直り、最後は「はいはい、お前の言う通りにすればいいんだろ」と話を打ち切る。

結局、根本的な問題は何一つ解決しないのだ。

スマホが再び短く震え、朔也のお母さんから写真が送られてきた。

実家のキッチンに立つ莉子が、エプロン姿で出来立ての煮物を両手で持ち、カメラに向かって優しく微笑んでいる写真だった。

添えられたメッセージにはこうある。

【莉子ちゃんが作ってくれた煮物、私の味付けとまったく同じなのよ】

莉子はあのキッチンで、私よりずっと自然に振る舞い、くつろいでいる。

食器がどの棚にあるか、調味料がどの引き出しに入っているか、朔也のお母さんがどんな味付けを好むか、すべてを熟知しているのだ。

私が実家へ行く時は、5年経った今でも毎回「お義母さん、お皿はどこですか?」と聞かなければならない。

訪問する回数が少なすぎるからだ。

朔也が「そんなに頻繁に行かなくていい」と言ったからだ。

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