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第2話

Author: 子豚狐
慎一とクリスマスを過ごせる日を待ち続けて、もう6年になる。毎年デートプランを考えてきたけれど、6年も経てば、私の我慢も期待ももう残っていなかった。それでも、最後にちゃんと答えだけは聞きたかった。

通話が切れる直前、慎一は冷たく言った。

「自分のことは、自分で考えろ」

まただ。私のことはいつもこうして突き放すくせに、沙耶に何かあれば、慎一は必ずそばにいる。

子どもの頃からずっと一緒だったぶん、そう簡単には気持ちを切り替えられなかった。

胸が痛くてたまらないのに、それでもスマホを手放せず、沙耶のインスタが更新されるたび、また開いてしまった。

写真には、沙耶に指で口角を持ち上げられ、無理やり笑顔にされている慎一が映っていた。それを見たら、涙が出たのに、なぜか笑えてしまった。

慎一も、ちゃんとクリスマスを楽しめる人だったんだ。

慎一とクリスマスを過ごすことは、そこまでありがたがって待つようなものじゃなかった。私だけが、いつかはと期待して待ち続けていただけだった。

深夜、沙耶が「今年のクリスマスはこれでおしまい」と投稿したのを見て、私はスマホを伏せてパソコンを開いた。

3日前からメールに届いていた海外の研究所への申請書類を初めて開き、署名欄に自分の名前を書き込んだ。

沙耶の言う通り、何年も1人で過ごすクリスマスには、もううんざりだった。

慎一の出張は7日間だった。その間に私は少しずつ1人の生活に慣れていった。

ずっと慎一ばかり追いかけてきたけれど、足を止めてみてようやく、私の人生に慎一が絶対に必要なわけじゃないのかもしれないと思えた。

7日目、疲れ切って家のドアを開けた私は、その場に立ち尽くした。玄関から先は、目に入るところすべてがひどく散らかっていた。その奥の寝室からは、慎一の優しい声が聞こえてきた。

「ゆっくり食べろ。誰も取らないから」

寝室まで行くと、私のベッドに寝転がってポテトチップスを食べる沙耶と、その横で沙耶のアイスを持っている慎一がいた。冷えたカップについた水滴が、薄いピンクの掛け布団にぽたぽた落ちている。

一瞬、息が詰まり、耳鳴りまでしてきた。

私がひどい潔癖症なのを、慎一は知っていた。それなのに慎一は笑いながら沙耶にティッシュを渡し、服を汚すなよと言っただけだった。

沙耶がポテトチップスの食べかすを何気なく私のベッドに払い落としたのを見て、とうとう我慢できなくなった。

「何してるの?」

私が声をかけると、2人はびくっと振り返り、慌ててベッドから立ち上がった。

「瑞希!」

沙耶は私を見ると、笑顔で慎一の肩を軽く押した。

「ほら、私の勝ち!瑞希が帰ってくるまでに片づけ終わらないって言ったでしょ」

「お前がわざと片づけるの遅らせたんだろ」

慎一はむっとした顔をしていたが、その声は少しも怒っていなかった。むしろ、どこか優しかった。

私は胸元を押さえた。胸が締めつけられ、息がうまく吸えなくなっていく。

私の潔癖症をネタに、沙耶と賭けまでしていたんだ。

ドア枠にもたれながら、私はゆっくりその場にしゃがみ込んだ。

青ざめた私を見て、慎一もようやく様子がおかしいことに気づいた。慌てて駆け寄り、私を抱きしめた。

「瑞希、落ち着け。ゆっくり息を吸って、吐け」

そう言いながら、慎一は私の背中をそっとさすった。その慌てようを見ていると、私を助けるためなら何でもしそうに思えた。

「この前まではだいぶ良くなってただろ。先生も、少しずつ慣れて症状が落ち着いてきたって言ってたのに……なんでまた」

慎一の声は、今にも泣きそうに震えていた。

その声を聞いた瞬間、15歳だったあの夜を思い出した。

学校行事で施設に戻るのが遅くなり、細い路地の入口を通りかかったとき、ごみ置き場から何匹もの野犬が飛び出してきた。

私は全身血まみれになるまで噛まれ、慎一が駆けつけてくれなければ、あのとき死んでいたかもしれない。

噛み傷は治ったが、あのときの恐怖だけは消えず、それ以来、私はひどい潔癖症になった。汚れた場所を見ると、そこからまた野犬が飛び出してきて、私に噛みつくような気がしてしまう。

あの日、慎一は病院でもずっと私を抱きしめ、泣きそうな声で「先生、どうしてこんなことに……?」と何度も医師に尋ねていた。

それ以来、慎一はどんなに疲れて帰ってきても、床を磨いたりシーツを洗ったりして、私が少しでも安心して過ごせるようにしてくれた。

あんなに私を大切にしてくれていたのに、沙耶が関わるようになってから、慎一は少しずつ私より沙耶を優先するようになっていた。

カップが床に落ちて割れる音に、私ははっと顔を上げた。沙耶がベッドから降りようとして、コーヒーの入ったカップを落としたのだ。

こぼれたコーヒーが慎一の仕事用ノートパソコンに広がっていくのを見て、沙耶はすぐに目を潤ませた。

「慎一、ごめん。わざとじゃないの。瑞希が心配で慌てちゃって……これ、仕事に影響ないよね?」

私が何か言うより先に、慎一が答えた。

「お前が怪我してないなら、それでいい」

慎一は何も責めず、黙って片づけ始めた。その姿を見ていると、喉の奥が詰まって声が出なくなった。

私が仕事用のメモをうっかり元の順番に戻し忘れただけで、慎一は何日も口を利いてくれず、ちゃんと反省しろと言った。それなのに沙耶には、仕事用のパソコンを壊しかけても、怪我をしていなければそれでいいらしい。

沙耶はけろっとした顔で私の肩を抱いた。

「慎一って、こういうことで本当に怒らないよね。瑞希、それにしても潔癖症、まだそんなにひどいんだ。これから毎日来て、少しずつ慣らしていくの、私も手伝ってあげるよ!

私なら毎日来られるし、気にしないで。慎一とはこれからしばらく同じプロジェクトだし、それに今度から、私、隣の部屋に住むことになったの!」

沙耶は楽しそうに話し続けた。

私が断る間もなく、寝室の壁が突然崩れ落ちた。

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