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第9話

مؤلف: にゃー
凛音は、自分がまだ生きていることに驚いた。

重い瞼を開けると、看護師が点滴の瓶を交換していた。一瞬、夢を見ているのかと思った。

「目が覚めましたか?よかったですね……一晩中、懸命な処置を続けました。一時はどうなることかと思いましたが、峠は越えましたよ。今は安静にして、しっかり体を休めてくださいね」

看護師の優しい言葉を聞き、凛音は自分がまた一命を取り留めたのだと実感した。

喜びと悲しみ、そして笑いや涙が入り混じり、心は激しく揺れ動いた。冷静さを取り戻すまでにかなりの時間がかかった。

落ち着いてからは付き添いのヘルパーを一人雇い、再検査や薬の処方、身の回りの世話をしてもらうことにした。

邪魔をする者はいなかった。凛音の体は少しずつ回復し、心も晴れやかなものになっていった。

時折やってくる医師も、診察の合間に、あれこれと探りを入れてくる。

「あれほどの大怪我だったのに、ご主人は面会に来ないのですか?」

「あのときあなたを運んできた人は、本当にご主人なのですか?」

そんな質問に対して、凛音は決まってこう答えていた。

「夫ではありません。私は独身です」

その間も、景子は相変わらず、海斗から丁寧にお茶を出されたり、街へ連れ出してもらったり、プレゼントを買ってもらったりする様子の写真ばかり送ってきた。

それを目にして、凛音の心はもう何も動かなかった。

時は流れ、退院の日がやってきた。

荷物を片付け終わると、電話が入った。

「岡本様、申請されていたビザが承認されました。いつお取りに見えますか?」

その知らせに、凛音はふっと肩の荷が下りたような笑顔を見せ、晴れやかな声で答えた。

「今日のうちに伺えます。領事館は最終受付が何時まででしょうか?」

相手の返答をじっと聞き入っていた彼女は、病室の扉が開いた音に気づかなかった。

海斗が眉をひそめて入ってきた。その声には、冷たさと隠し切れない疑念が混ざっていた。

「領事館なんて、何のために行くんだ?」

海斗を見ると、凛音は笑顔をすっと消して電話を切った。

「別に。あなたに関係のないことよ」

その氷のような口調に、海斗の表情が険しくなった。

「無関係だって?忘れるな、今のお前は俺の妻だ。何をしようとしているのか、知る権利が俺にはある」

「私はあなたの妻ではないわ。あなたの妻は、景子でしょ」

凛音はじっと海斗を見つめた。その眼差しは、静かな水面のように凪いでいた。

一瞬、疑念を抱きかけていた海斗だったが、その言葉を聞いて気を取り直した。

どうせまた、いつものように嫉妬をして自分を試しているだけだろう。海斗は高慢な調子で言葉を継いだ。

「そうだ。お前との結婚は形だけだ。俺が心から愛しているのは景子だ。明日、景子のために盛大な結婚式を挙げることに決めた。お前も来て見届けろ」

投げつけられた招待状を見て、凛音の目がかすかに揺れ、静かに口元に笑みを浮かべた。

「いいわよ。明日、とびっきりの贈り物を用意しておくから」

あまりに平然としたその反応に、海斗は一抹の違和感を覚えた。

問い詰めようとした矢先、景子から電話がかかってきた。

「海斗、いつ迎えに来てくれるの?早くウェディングドレスが試着したい!」

景子の甘える声に、海斗は途端に他のことなどどうでもよくなってしまった。

彼は甘い声をかけながら、背を向けて立ち去ろうとする。

出口へ向かう直前、何かを思い出したのか振り返って言い捨てた。

「そうだ、景子の世話はもう手配してある。お前は今夜から俺の家に住めばいい。例の輸血への埋め合わせだと思って受け取れ」

海斗の背中を見送りながら、凛音は小さく呟いた。

「埋め合わせ?私の欲しいのはそんなものじゃないわ。唯一の望みは、あなたと縁を切って、これから先もお互い一生関わらずに過ごすこと。それだけよ」

退院の手続きを済ませた後、凛音は領事館へ向かい、ビザを受け取った。

帰宅してすぐに泥のように眠り、翌朝8時のアラームでスッキリと目が覚めた。

彼女はこれまで整理していた音声データと二枚の戸籍謄本を一つの箱にまとめ、速達を手配した。

「12時に、この荷物を招待状に書かれた場所へ届けてください。高木という名字の男性に渡して、『結婚おめでとう、凛音からの結婚祝いよ。末永くお幸せに』と伝えてください」

すべての支度を終え、時間を確認すると、凛音はスーツケースを持って空港へと向かった。

11時半。飛行機に乗り込むと、海斗の連絡先をすべてブロックして削除した。

窓の外で大雪が降り始めていた。20年以上暮らし続けたその街が少しずつ遠ざかり、やがて黒い点のように小さくなっていく。

凛音は目を閉じ、安らかな眠りに落ちていった。心は穏やかで、何も恐れることはなかった。

二度の人生にわたって続いた悪夢は、これで終わったのだと分かっていた。

これからの人生には、幸せな夢だけが待っている。
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  • 999回輸血し死亡。死に戻った私は夫を捨てる   第17話

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