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43.まさかの

last update publish date: 2026-07-28 19:47:20

運ばれてきたケーキを食べていると、理沙が何かを思い出したように話し始めた。

「そういえばさ、葉桜高校のエースだった人って知ってる?」

葉桜高校は、夕也の母校だ。

「葉桜高校のエース?」

「サッカー部のエースなんだけど。」

私はその辺の話には詳しくない。

夕也なら知っているだろう。

「ごめん、知らないや…」

「あ、そっかぁ…だよね、あんまりこういう話しないもんね。でね!」

「?」

「そのエース、彼女作らないで有名だったんだけど、葉桜に行ってた友達から聞いたんだけどね。…そのエース、ついに彼女できたんだって。」

「へえ…」

「他校からも告白されるくらいイケメンだったんだけど、どんな人が告白しても、全員振られちゃったんだって。」

どんなモテ男だったんだろう。

興味があると言ったら、多分夕也が嫉妬に狂うだろうから、言わないでおこう。

「ふぅん、そんな人が本当にいるのかな?」

「いるんだって!実際私もその人見たことあるんだから!超カッコよかったよ!あさひも見たら絶対好きになってたって!」

「へぇ…よく分からないや…」

理沙は楽しそうに話しているが、私の頭の中は疑問符しか浮かんでこなかった。

「もう!もうちょっと興味持ってよ!」

「あはは、ごめんごめん。」

「あのエースを落とすなんて、相当な美人じゃないと難しいよねぇ…あ、そういえば。そのエース、あさひと同じ地元だったはず!」

「え?そうなの?」

「確かね…桐山…なんとかって人。」

同じ地元で、葉桜高校のサッカー部だった人。

1人しか思い浮かばない。

「もしかして…桐山夕也?」

「あ、そうそう!桐山夕也くん!知り合いだったりする?」

「そのサッカー部に同姓同名の別人がいなかったとしたら、それ、私の彼氏だ…」

理沙が目を大きく見開く。

「ええええええっ!?あさひだったの!?」

スマホを取りだしてフォトギャラリーを開く。

「理沙が言ってるのってこの人?」

夕也の写真を見せると、理沙が大きく頷いた。

「そう、その人!えー!あさひがその彼女だったんだ!納得だわ~…」

「そんなに有名だったんだ、夕也。」

「そりゃもう!背が高くてイケメンだし、シュートもパスも上手いし、試合見に行けば女子の完成が凄かったんだから!」

「へえ、知らなかった…」

「ああ、ただ…3年の時に引退試合の直前に大怪我しちゃって、結局試合にも出れなくてそのまま辞めちゃったらしいんだよね…」

「大怪我?」

「そう。サッカーの練習してる時に、他の部員とぶつかっちゃって、その時に足首を骨折しちゃったらしいんだよね。ドクターストップかかっちゃって、骨が治っても前みたいなプレーができなくなるって言われて、サッカー選手になるって夢も諦めちゃったんだってさ。」

「そんなことがあったんだ…私、人の過去はあんまり詮索しないようにしてるからさ。でもまあ、教えてくれてありがとうね。」

「いいえ~。」

2人でティータイムを続けていると、カランカラン、とベルが鳴って、聞き覚えのある声がした。

「あれ、あさひじゃん。」

「あ、夕也!なんでここに?」

「え!?え!?桐山くんだ!」

「?どうも…?」

理沙にいきなり名前を呼ばれて不審がっている夕也に理沙を紹介する。

「えっと、この子は高校の友達の理沙。夕也がいた試合、見に行った事あるらしくて。」

そう説明すると、夕也は納得した顔をする。

「ああ、なるほどね。それで俺の名前知ってたんですね。」

「すいませんでした、いきなり名前呼んじゃって。変なやつって思いましたよね。あははっ。」

そんなことないですよ、と、夕也は手を横に振りながら言った。

「夕也もここで待ち合わせ?」

「ううん。普通に甘いもん食べに来ただけ。前からここ気になっててさ。」

「そっか。ティラミス、おすすめだよ。」

「んじゃ、それにしようかな。すみません。」

理沙の方に目線を戻すと、ニヤニヤした顔で私を見つめていた。

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  • Lilas   43.まさかの

    運ばれてきたケーキを食べていると、理沙が何かを思い出したように話し始めた。「そういえばさ、葉桜高校のエースだった人って知ってる?」葉桜高校は、夕也の母校だ。「葉桜高校のエース?」「サッカー部のエースなんだけど。」私はその辺の話には詳しくない。夕也なら知っているだろう。「ごめん、知らないや…」「あ、そっかぁ…だよね、あんまりこういう話しないもんね。でね!」「?」「そのエース、彼女作らないで有名だったんだけど、葉桜に行ってた友達から聞いたんだけどね。…そのエース、ついに彼女できたんだって。」「へえ…」「他校からも告白されるくらいイケメンだったんだけど、どんな人が告白しても、全員振られちゃったんだって。」どんなモテ男だったんだろう。興味があると言ったら、多分夕也が嫉妬に狂うだろうから、言わないでおこう。「ふぅん、そんな人が本当にいるのかな?」「いるんだって!実際私もその人見たことあるんだから!超カッコよかったよ!あさひも見たら絶対好きになってたって!」「へぇ…よく分からないや…」理沙は楽しそうに話しているが、私の頭の中は疑問符しか浮かんでこなかった。「もう!もうちょっと興味持ってよ!」「あはは、ごめんごめん。」「あのエースを落とすなんて、相当な美人じゃないと難しいよねぇ…あ、そういえば。そのエース、あさひと同じ地元だったはず!」「え?そうなの?」「確かね…桐山…なんとかって人。」同じ地元で、葉桜高校のサッカー部だった人。1人しか思い浮かばない。「もしかして…桐山夕也?」「あ、そうそう!桐山夕也くん!知り合いだったりする?」「そのサッカー部に同姓同名の別人がいなかったとしたら、それ、私の彼氏だ…」理沙が目を大きく見開く。「ええええええっ!?あさひだったの!?」スマホを取りだしてフォトギャラリーを開く。「理沙が言ってるのってこの人?」夕也の写真を見せると、理沙が大きく頷いた。「そう、その人!えー!あさひがその彼女だったんだ!納得だわ~…」「そんなに有名だったんだ、夕也。」「そりゃもう!背が高くてイケメンだし、シュートもパスも上手いし、試合見に行けば女子の完成が凄かったんだから!」「へえ、知らなかった…」「ああ、ただ…3年の時に引退試合の直前に大怪我しちゃって、結局試合にも出れなくてそのまま辞めちゃっ

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  • Lilas   40.ごめんなさい

    ―あさひ視点― 約1ヶ月ぶりの出勤。 ずっと病院にいて、あまり体を動かせなかったために筋力がかなり落ちてしまっているから、しばらくは軽作業だけをすることになった。 タイミングがいい事に、フォークマンの栗原さんが私の入院と同時に仕事復帰したため、倉庫の仕事は滞ることがなかったそう。 出勤してすぐ、買ってきた菓子折りを各部署に渡してきた。 「大変ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。」 「やだ、ちょっと謝らないでよ!迷惑なんてかかってないし、そもそも悪いのは運転手じゃない!」 「でも、私の不注意みたいなものなので…」 「不注意じゃなくて、甥っ子くんを守ったんでしょう?桐山くんから全部聞いたわよ。優しい風間さんらしいけど、なんでも自分のせいにしちゃダメよ。」 「…はい。」 「ふふ、前より雰囲気がなんだか柔らかくなった気がするわ。より一層女の子っぽくなったというか。」 「…もっと自分らしくしろって、家族に言われましたので。」 「そう。まあ、前の風間さんも、今の風間さんも、私はどっちも好きよ。」 「ふふっ、ありがとうございます。すみません、これで失礼いたします。」 「頑張ってね!」 しばらくの間、調理過程の記録のみをする事になったから、体に負担を欠けることなく仕事をすることができた。 昼休憩の時間になり、工場入口で靴を履き替えていた時、美奈が近づいてきた。 「あの、あさひちゃん…」 「…どうしたの?」 「…その、怪我は、大丈夫なの?」 まさか美奈にそんなことを聞かれるとは思っていなかった。 「うん。もう治ったから大丈夫だよ。骨も元に戻ったし。」 気まずい空気が流れる。 「あ、あのっ、あさひちゃん…」 「…?」 「…酷いこと言ったりして、ごめん。それと…酷いこともしてごめん。」 「酷いこと…?」 「桐山くんの事、見た目だけの人間なんて言ったりしてごめん。あさひちゃんの、彼氏なのに…酷いこと言ってごめん。それと…あさひちゃんから桐山くんの事奪っちゃってごめん。」 奪った? どういう意味だろう。 「奪ったってどういう事…?」 「…本当は知ってたの。あさひちゃんが桐山くんの事を好きだったの。桐山くんがあさひちゃんの事を好きだったのも気付いてた。でも桐山くんを取られたくなくて、桐山くんに『あさひちゃんは他に好き

  • Lilas   39.誰よりも愛している人

    ―夕也視点― 「ずっと愛してるからな、あさひ。」 すやすやと眠るあさひの頬を撫で、起こさないようにそっとキスをする。 ここにちゃんといる事を確かめるように、あさひを抱きしめて目を閉じる。 あさひが車に跳ねられたあの日、俺は永遠にあさひを失ったと思った。 もう目を覚まさないんじゃないか。 このまま死んでしまうんじゃないか。 道に倒れているあさひを見た時、そう思った。 あさひを失ってしまうのが、とても怖かった。 あさひと付き合い初めてから、あさひは自分の一部となった。 仕事に行く前も、仕事をしている時も、仕事が終わって家に帰った後も、休みの日も、頭の片隅にはいつもあさひがいる。 あさひが死んだら、俺の心も死んでしまう。 そう思えるほどに、いつの間にか大好きという感情が、愛情へと変わっていた。 前の職場で、俺のあさひに対する思いが重すぎると同僚に言われたことがある。 確かに、10歳の頃からずっと同じ子を好きでい続けるなんて、それは恋愛感情というより執着心のようなものに近い。 「俺、結構めんどくせえし、重い男だな…」 初めての時に抱き潰してから、あさひと会う約束をしている前日には必ず抜くようにしていた。 そうしないと理性を保てない、と、自分で分かっているからだ。 だが、昨日は結局タガが外れてしまい、またあさひを抱き潰してしまった。 退院したばかりだというのに、無茶をさせてしまった。 自分の行動を猛省しているうちに、日が昇り始めてしまった。 「ん、んん…」 あさひがゆっくり目を開ける。 また、怒られてしまうだろうな。 「…ふふ、おはよう、夕也。」 腕をのばして俺の頭を撫でる。 こうしてあさひに撫でられるのは初めてだ。 意外と、悪い気分じゃない。 「…怒ってないのか?」 「ん?なんで?」 「いや、昨日…また抱き潰しちまったからさ…」 また怒らせたと思っていたのに、あっさりとした態度だ。 「めちゃくちゃにしてって言ったの、私だし。私の事すごく大事に思ってくれてるの、知ってるからさ。それに…」 「それに?」 あさひが少しムスッとした顔になる。 「私以外の女の子の裸とか、見て欲しくないし…私だけで気持ちよくなってほしいから…」 「…ん?どういうこと?」 「男の人ってみんなそうなんでしょ。1人でする時、その…そ

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