Se connecter「植物状態の化け物にくれてやる」と家族に捨てられ、冷酷総帥・黒羽蓮の元へ身代わり婚に出された真白。だが蓮の昏睡は偽装で、彼は夜になると目覚める冷徹な支配者だった! 甘やかさず試練を課す蓮に、真白はめそめそ泣きつつも「絶対に負けない!」と不屈の根性と天才的なデザインの才能で立ち向かう。 盗作を繰り返す強欲な義妹と元婚約者、立ちはだかる絶対的女王・一条麗華、そして財閥の陰謀。守られるだけの女を捨て、泥を被りながら世界の頂点へと駆け上がる痛快逆転サクセス&激重ロマンス!
Voir plus「一週間で、私を納得させるデザイン画を一本描き上げろ」突きつけられた条件の重さに、真白はごくりと喉を鳴らした。黒羽グループがメインスポンサーを務めるジュエリー展示会といえば、世界中のバイヤーや名門ジュエラーが集う業界屈指の晴れ舞台だ。そこに並ぶ作品の選定基準は極めて厳しい。「できなければ、この屋敷から叩き出す。……母親の形見を抱えて、野垂れ死ぬ覚悟はあるか?」「あります。……いいえ、野垂れ死になんて絶対にしません」真白は胸元のスケッチブックを握りしめ、蓮の冷徹な眼光を真っ向から受け止めた。「必ず、あなたを認めさせてみせます」「言ったな。道具は執事に言えば揃えさせる。だが、手加減は一切しない」蓮はそれだけ言い残すと、悠然とした足取りで寝室の奥の書斎へと消えていった。翌朝から、真白の孤独な戦いが始まった。執事の高杉が用意してくれたのは、最高級の製図紙とデッサン鉛筆。真白は客間の一角に設えられた作業机にかじりつき、寝食を忘れて鉛筆を走らせた。幼い頃から、母の手元を見て育った。石の持つ命の輝き、身につける人の心を奮い立たせるデザイン――母から受け継いだ情熱を、一枚の紙の上に注ぎ込む。三日三晩、指先が黒く染まり、腱鞘炎のような鈍痛が走るまで描き続けた。描き上がったのは、朝露を宿した百合の花をモチーフにした、繊細で気品あふれるダイヤモンドネックレスの完成図だった。(できた……! 今の私の、持てるすべてを込めた……!)真白は震える手でそのデッサンを持ち、蓮の書斎の扉をノックした。「失礼します、黒羽さん。デザイン画が完成しました」執務机でノートPCを開いていた蓮が、視線を上げる。真白は緊張で喉をカラカラにさせながら、机の上にデッサンを差し出した。蓮は無言のまま紙を手に取り、鋭い瞳で数秒間見つめた。そして――ピリッ。静かな書斎に、紙が裂ける無情な音が響いた。「え……?」真白の息が止まった。蓮の手によって、三日間不眠不休で描き上げたデッサンが、真っ二つに引き裂かれ、そのままゴミ箱へと放り捨てられたのだ。「な……なにをするんですか……!?」「ゴミに用はない」蓮の声は、氷のように冷たかった。「デッサン力は素人並み。貴金属の構造計算も、宝石の留め方の強度もまるで考慮されていない。ただの『綺麗なお絵描き』だ。……こんなものに何億円も
「――俺の屋敷で、誰が騒いでいる?」氷点下の声が廊下に落ちた瞬間、その場の空気が凍りついた。「ひっ……!?」父・宗助の手から滑り落ちた母のスケッチブック。真白は素早く身を屈め、床に落ちる寸前でそのノートを胸元に抱きしめた。破れかけた表紙を指で押さえ、息を呑んで背後を振り返る。薄暗い寝室の奥から、静かに進み出てきた車椅子。そこに座る黒羽蓮は、完璧に仕立てられた漆黒のシャツの襟元をわずかに緩め、組んだ足の上に両手を重ねていた。植物状態と噂されていた男の、あまりにも圧倒的な存在感と美貌。その漆黒の瞳から放たれる冷酷な眼光に射抜かれ、警察官たちすら息を呑んで一歩後退する。「く、黒羽……総帥……!?」宗助の顎がガチガチと震えだした。継母の雅代は顔面蒼白になり、妹の結衣は神崎涼の背中に隠れるようにして縮こまっている。神崎に至っては、膝が目に見えて震えていた。「い、意識が……戻られたのですか……!?」宗助が脂汗を流しながら媚び笑いを浮かべようとするが、蓮の冷たい視線がそれを一瞬で粉砕する。「意識だと? 貴様らのような下品な羽虫が寝室の前で喚き散らせば、死人でも目が覚める」蓮は視線を微塵も動かさず、淡々と、しかし地を這うような重圧を込めて言葉を紡いだ。「白河宗助。白河グループ代表。負債三億を抱え、破綻寸前の分際で、我が黒羽家の敷地に警察を引き連れて乗り込み……あまつさえ、俺の妻を泥棒呼ばわりしたか」「め、滅相もございません! これは誤解でして……! この真白という娘が、総帥の財産を狙っているのではないかと心配になり、親心から――」「親心?」蓮がフッと薄い唇の端を持ち上げた。それは見る者の背筋を凍りつかせる、残忍な笑みだった。「実の娘を身代わりの生贄として差し出し、追加の融資を強請る行為を、貴様の国では親心と呼ぶのか?」「ぐっ……!」「警官」蓮が短く呼ぶと、二人の警察官が直立不動で姿勢を正した。「は、はい!」「邸内への不法侵入、および黒羽グループ総帥に対する名誉毀損・虚偽通報の現行犯だ。この連中を今すぐ敷地外へ叩き出せ」「承知いたしました!」「お、お待ちください、蓮様!」結衣が必死の形相で前に飛び出し、甘ったるい声を絞り出した。「私は白河家の正統な次女、結衣です! こんな地味で無能な姉ではなく、私こそが総帥の妻にふさわしいと
『開けなさい、真白! 泥棒猫の分際で閉じこもる気!?』防音扉越しに響く結衣の金切り声と、ドンドンと乱暴に扉を叩く音。送り届けられてからまだ数時間も経っていないというのに、白河家の連中は早くも真白を追い詰めるために乗り込んできたのだ。「……浅ましい連中だな」蓮が冷たい声音で吐き捨てた。だが、その表情に焦りは微塵もない。蓮は無駄のない身のこなしでベッドサイドへ戻ると、酸素マスクを手にとった。「言っておくが、俺は世間に対して『植物状態』のままでいなければならない。表立って貴様を庇うつもりはないぞ」「……ええ、望むところです」真白は自分の両頬をペチリと叩き、気合を入れた。「ここで私が逃げたら、一生あの人たちの言いなりです。私の戦いですから」その言葉に、蓮の漆黒の瞳がわずかに揺れた。蓮はベッドに身を横たえ、再び無機質な「生ける屍」の仮面を被る直前、真白に鋭い視線を投げかけた。「部屋の防犯カメラは作動している。――無様に泣き叫ぶなよ、真白」「泣きません!」真白は背筋をピンと伸ばし、カチリと鍵を開けて重い防音扉を引いた。瞬間、待ち構えていたように部屋へ雪崩れ込んできたのは、父の宗助、継母の雅代、妹の結衣、そして元婚約者の神崎涼の四人だった。さらに廊下の奥には、結衣が呼んだのであろう二人の警察官の姿まで見える。「まあ! なんて図々しい顔をして出てくるの!」雅代がわざとらしく胸を押さえ、警察官たちに聞こえるように大声を張り上げた。「お巡りさん、この子ですわ! 我が家の恥さらし! 黒羽総帥の身の回りの世話を名目にここへ入り込み、家中の高価な調度品や宝石を鞄に詰め込んでいるに違いありません!」「そうよ!」と結衣が勝ち誇った顔で続く。「さっき車から降りる時、不審な大きなバッグを持っていたのを見たわ! お姉様、早くそのバッグを開けて見せなさいよ!」神崎涼も蔑むような目を真白に向け、嘲笑を浮かべた。「見苦しい真似はやめろ、真白。大人しく罪を認めて盗んだ物を差し出せば、身代わり婚の役目だけは続けさせてやる。俺たちの温情に感謝するんだな」四人からの容赦のない罵声と侮蔑の嵐。普通の女性なら、警察を前にした恐怖と屈辱でパニックになっていただろう。真白の指先も、怒りで小さく震えていた。(……温情? 感謝? ふざけないで)真白は震える指をぎゅっと固く握
「……誰の手先だ、女」低く、地を這うような声が真白の鼓膜を震わせた。視界を埋め尽くすのは、植物状態と噂されていた男――黒羽蓮の顔。外された酸素マスクはベッドの脇へ無造作に転がされ、彫刻のように整った美貌には、獲物を射抜く猛獣のような冷徹な光が宿っていた。手首を握り込む力は強烈で、骨が軋むほどの痛みが走る。真白はベッドの上に組み敷かれたまま、あまりの衝撃に息を呑んだ。(起き上がっている……!? この人、意識がある……!?)「答えろ。叔父の征四郎が送り込んできた暗殺者か? それとも、息の根を止めに来た競合のスパイか」蓮のもう片方の手が、真白の細い喉元へと伸びてくる。触れた指先は氷のように冷たく、しかしわずかな力加減一つで真白の命を断ち切れるほどの圧倒的な実力差を物語っていた。寝室を支配する濃密な殺気。普通の令嬢なら、声も出せずに失禁するか気絶していただろう。真白の心臓は早鐘のように打ち鳴らされ、恐怖で全身の毛穴が開くようだった。(死ぬ……? こんなところで、何も成し遂げられないまま……?)脳裏をよぎったのは、実母の形見を踏みにじった継母の嘲笑と、自分を裏切った元婚約者の冷たい目。真白の奥底で、カッと熱い火が灯った。(ふざけないで。誰が死ぬもんですか……!)恐怖で震えそうになる膝に力を込め、真白は逃げ出すどころか、真正面から蓮の漆黒の瞳を睨み返した。「……誰の手先でもありません!」「なに?」「私は、白河真白です! 父の借金三億円のカタに、妹の身代わりに売られてきただけの……ただの捨て駒です!」真白の叫びのような言葉に、蓮の眉がわずかに動いた。だが、その眼光は依然として刃のように鋭い。「身代わりだと? 俺の寝室に入った人間が無事で済むと思っているのか。命乞いならもっとマシな嘘を吐け」「嘘じゃありません! それに、命乞いなんてしていません!」真白は喉元に当てられた蓮の手を、自由な方の手で力いっぱい押し返そうとした。びくともしないが、その指先は決して諦めていなかった。「私は死ねないんです! あの強欲な家族に奪われた、亡くなったお母様の形見を取り戻すまでは……どんな泥水をすすってでも、絶対に生き抜くって決めたんです! あなたを殺す気も、黒羽家の財産を奪う気もありません!」琥珀色の瞳から、一筋の悔し涙が頬を伝って零れ落ちた。だ