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74.解呪

last update Dernière mise à jour: 2025-08-12 11:00:00

 コハクの聖堂はとても大きかった。多分アリアの倍はある。

「凄い綺麗……」

「ねー。でもグリージオの聖堂はもっと凄いんだよ〜 ! 各地様々な神が祀られてるからね」

「ここは……地の神なのね」

「そうだね。タイタンとかガイア……精霊信仰はノーム。大きな山の麓だしねすぐ南には平原が広がってるから」

 そこへ司祭が側へ来た。

「ようこそ、白魔術師様。祈りですか ? 」

「こんにちは。実は彼の呪い解きをしたいんです人目に付かない場所をお借りしたいんです」

 司祭はセロを見、頷くと裏側の小部屋へ案内した。

「使っていない部屋ですので、どうぞここを」

「ありがとうございます ! 」

 全員で部屋に入る。

 狭い。四人で入るのが少し辛いくらい。

「わたしたち、出ようか ? 」

 気を使って言ってみたけど、何故かカイが「え〜」と不満気に声を上げる。

「見てぇよ。女の呪い〜」

 そんな見世物じゃないんだし……って、確かに呪い解除ってどんな風にやるのか見てみたいけど。

 ソワソワしている間、シエルは見たことの無い物を凄い手際で置いて行く。そもそもチョークで一気に円を描く技術。寸分の狂いのない円だわ。相当修行したんだろうな。それでもこの歳だもの、神童よね。

「……一ついいかな ? 」

 用意が終わったのか、手を止めたシエルはわたしとセロを見上げる。

「本当に記憶を戻していいんだよね ? 」

「ああ。構わない」

 どうしてそんな事聞くんだろう。

「なにか、問題とかあるの ? 」

「ううん。僕は何も。

 だけど、これはさ……本当にもしもの話で聞いて欲しいんだけど」

 もしも…… ? 

「おかしな女性が一方的にセロを呪った

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