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9.狂曲

Penulis: 神木セイユ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-10 11:00:00

 セロの弓が滑る。

 音が………… !! 

 次々に身体を抜けて行く。

 スピードナンバーなのにちっとも嫌らしい早弾きに感じない爽快感。

 これに合う歌を……。

 いける。無理に伴奏に合わせなくても歌が始まりさえすれば主旋律を握れる。

 大きくブレスをし、第一音をロングトーンから始める。

 鳥が飛ぶような颯爽感とぴょこぴょこ歩く様な可愛らしさ。

「〜〜〜っ !? 」

 セロの狐弦器が転調した。

 理解しろ ! 大丈夫。このメロディも決して奇抜じゃない王道。

 なんなの、この歌いにくさ ! さっきまでのユニークなイメージが無くなった。

 イメージして ! 

 遥か遠くへ。いずれは飛び立ち、知らない国の空を優雅に飛ぶ、力強い自然生物。その眼に映る景色はどんなに美しいだろう。

「はぁ……っ ! 」

 何とか間奏まで歌いきる。

 どこまでが休符 ? 演奏はまだまだ進んでるし、止まる気配も無い。間奏だって決めているのはわたしだけ。

 次に入るタイミング……急げ !  

「……」

 セロの鋭い視線が怖い。

 自分の手元を見てはいるけれど、わたしの様子を伺ってるのは言うまでもない。

 早く再開しないと。分かっていても目紛しく変わる旋律。違和感が無い、完璧に研ぎ澄まされ、練られたメロディ。この分だと尺もありそうだし、歌いきるよりも分けてシーンを作れば良かった。

 また一度に歌いきったら次こそ、どん詰まりになるのは言うまでもない。

「……」

 どこから入る ? 

 いえ、それはDIVAが教えてくれるはず。

 流れていく旋律を聴き続け、その瞬間が来た。

「っ……… !! 」

 声が

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