Home / 恋愛 / Love Potion / 真実 12

Share

真実 12

Author: 煉彩
last update Last Updated: 2025-09-18 20:42:10

「美月はとても一生懸命な女性で。家事や料理も上手で、自慢の妻なんです」

 ウソウソウソ!そんなこと思ってないくせに。

 美和さんの方が……とか、心の中で思っているんでしょ!?どうしてそんなに見栄を張るの。

「容姿だけじゃなく、内面も素晴らしいんですね」

 加賀宮さんはフッと笑った。

 その笑いは何?

 二人の会話に心の中で突っ込みを入れる。

「美月さんの作った料理、食べてみたいです。僕は、性格が悪いからか、何年も彼女はいませんし、食事もいつも外食だから。たまには手料理とか食べてみたいなって、憧れるんです」

 加賀宮さんは、そう言って孝介に微笑んだ。

 孝介の眉間がピクッと動いたのを私は見逃さなかった。

「すみません。今日は急だったから。彼女も準備していなかったみたいで。酒のつまみもろくなものがありませんね」

 孝介は私が料理が下手だと思い込んでいる。悔しい。

「私、作ります」

「はっ?」

 孝介が一瞬、素になった。

「美月、無理しなくて良いよ。食材も揃っていないだろ」

 どうしても私に作らせたくないのね。

 不味いものをお客様に食べさせたら、顔が立たないもの。「料理上手な妻」で通っているから。

 でも――。

「大丈夫です。私、作ります」

 ちゃんと作れるってところ、孝介に見せてやりたい。

「本当ですか?それは楽しみです」

 加賀宮さんがそう言ってくれたおかげで

「じゃあ、お願いするよ」

 孝介も渋々承諾してくれた。

 私がキッチンに立っている間、二人は楽しそうに会話をしていた。

 表面上だけなんだろうな、二人とも。

「お待たせしました」

 私は作ったおつまみを二人の前へ運んだ。

 卵焼き、塩昆布とキャベツの和え物、ツナと玉ねぎのピリ辛和え。

 イジメかっていうくらい、冷蔵庫には何もなかった。

 もっと材料があれば……。

 私の作った料理を見て、孝介は表情が明らかに歪んでいる。

「加賀宮さん、すみません。もっとオシャレなモノ、妻は作れるんですが。今日は····冷蔵庫に何もなくって。見栄えが悪いですよね。美月も無理して作るから。·····から、どこかコンビニでも行って、おつまみ買って来てくれないかな?」

 孝介は私に視線を合わせる。眉間にはシワが寄っている。すぐわかる、怒っている。

「いえ。とても美味しそうじゃないですか?僕はいただきますよ」

 そう言って加賀宮さんは、私の作った卵焼きをパクっと食べた。

「あっ、加賀宮さん。無理しなくても……」

 孝介が引き止めるも、もう彼は飲み込んだ後だった。

 なんて言うのかな。

 今更になって緊張してきた。

「すごく美味しいです。中身はふわっとしていて、だけど、表面はパリッとしていて。他のおつまみもいただきます」

 ニコッと笑って、加賀宮さんは他のおつまみも食べてくれた。

「どれも美味しい。材料がない中でパッと思いついて、すぐ作れて、味も美味しい。僕の理想の女性ですよ」

 何よそれ、褒めすぎで気持ちが悪い。そして嘘っぽい。

 だけど

「僕、お腹空いてたみたいで。九条さんが食べないなら、全部食べても良いですか?」

 そう言ってくれた。

「え……ええ。良かったら」

 孝介の顔が引きつっている。

 そんな不味そうに見えるの?

 いや、私のこと生理的に受けつけないんだろうな。

「すみません、あまりにもおつまみが美味しくて。お酒も進んでしまいました」

 孝介も負けじとお酒を飲んでたけど、加賀宮さんのペースについていけなかった。彼が一人で飲んでいた瓶ビールがあっと言う間に空になってしまった。

「美月、新しいお酒持って来て」

 孝介にそう言われたが、お酒のストックがない。

 お客様用の瓶ビールもないし、最近孝介が家に居なかったこともあり、缶ビールも買っていない。そもそも買い物はほとんど美和さんがしてくれてる。

「申し訳ございません。お酒がなくなってしまって。今すぐ買ってきますので、お待ちください」

 私が声をかけると

「美月さん。もう夜遅くですし、女性一人が買い物なんて何かあったら困ります。僕が買ってきますよ」

 加賀宮さんが席を立とうとした。

「いえ!俺が買ってくるんで。ちょっと待っててくださいね。準備不足で本当すみません」

 ハハっと笑いながら孝介は席を立ち、急ぎ足で出て行った。

 妻想いの旦那を演じるため、自ら近くのコンビニにでも行くのだろう。

 ふぅと息を吐く。肩の荷が下りた気がした。

 と思ったが――。

 いけない、いろいろ聞かなきゃいけないことがある。

「どうしてここに居るのよ!」

 そのまま何事もなかったかのように座っている加賀宮さんを怒鳴りつけた。

「どうしてって。今度、·············って言っただろ?それに、···あとで話は聞くって伝えた」

 さっきって私が電話をかけた時、もう加賀宮さんはうちに来る予定だったの?

「美月、料理上手いんだな。美味しいって言ったのはお世辞じゃないよ」

 彼はフッと笑った。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • Love Potion   真実 16

    「今日、美和さん来ないから。これ、食費」 孝介に渡されたのはこの前と同じ千円札一枚。「料理の勉強もしろよ。作っても良いけど、俺の分は要らないから」 私に返答する余裕を持たせず、玄関の扉がパタンと閉まった。 千円で何日間の食費だと考えているんだろう。 殴られなかっただけマシ……なのかな。…―――… 昨日会ったばかりなのに、緊張してしまう。 加賀宮さんが呼んだタクシーに乗り、彼のアパートに向かっている。 なぜ十六時を指定したのかわからないが、午前中は仕事だったのだろう。 お義父さんに会うって言ってたから。 タクシーを降り、木造アパートの階段を上り、部屋のインターホンを鳴らした。 だけど、彼は出てこないから……。<トントントン>  直接ドアをノックし 「私!開けて」 そう声をかけた。 しばらくするとドアが開き――。「お疲れ様」 ワイシャツ姿の加賀宮さんの姿が見えた。 「お邪魔します」 家の中に入る。 靴を脱ぎ、廊下に一歩入った時だった。 腕を引かれ、ギュッと抱きしめられる。「ちょっと!」 あっ、良い匂いがする。 香水?シャンプー?どっちだろ。「ベッド、行こう?」「えっ」 一旦離され、腕を引かれ、ベッドへ座らされて――。「ん……」 キスをされた。 次第に激しくなって、舌と舌が絡まる。「んっ……んん」 彼はキスをしながら、私の洋服を脱がしていた。「加賀宮……さ……ん。強引……」 いつも余裕そうな彼が、今日は焦っているような気がした。ベッドに押し倒され、首筋に彼の唇が触れる。「あっ……。待って……」 くすぐったい。 でも――。 彼の吐息と舌の感触にゾクゾクして――。「んぁ……」 声が漏れてしまう。「こっち向いて」 彼の声に反応すると「んっ……」 再び唇と唇が重なった。部屋にリップ音が響く。「ねっ、どうしたの?」 彼に問いかけるも、何も答えてはくれない。「後ろ向いて」「どうして?」「いいから」 下着姿の私を強引にうつぶせにさせた。 首筋、背中にチュッと軽くキスをされる。「あぁっ……」 彼の息が、唇が背中にあたり、ビクっと身体が反応してしまう。  加賀宮さんの動きが一瞬止まった。「ここ。どうしたの?痣になってるけど」 私の腰に彼の指先が触れた。 そこは……。

  • Love Potion   真実 15

     情報?どこからそんな。「今日の話は本当?私がカフェメニューの監修をするって。説明なんて全く受けてないんだけど!」「ホント。これからしばらく俺の会社が経営しているカフェで働いてもらう。新メニューに悩んでるって話は事実だしな。それに、これで出かける理由ができただろ?」「えっ」「これで俺が美月を呼び出しても、不自然ではない。さっき、連絡先も旦那の前で正式に交換しただろ」 彼の口角が少し上がった。 悪い顔。確かに仕事に行くって家を出ても、特別不自然じゃなきゃ怪しまれることもない。「監修と偽って、また私を呼び出すの?」「それが一番の目的だけど。監修はあくまでその次」 彼の返事は即答だった。  彼がチラッと時計を見た。「もうこんな時間だな。今日は疲れただろ?早く休めよ」 そう言って玄関に向かった。「待って!」 私は加賀宮さんのあとを追う。 すると彼が振り返り、私の両肩を掴んだ。「明日の十六時。俺のアパートに来て。久し振りなんだ。覚悟しとけよ」 唇が耳に当たるんじゃないかと思うような距離で囁かれた。「えっ!ちょっと!」「じゃあ、おやすみ」 玄関の扉がパタンと閉まった。「なによ、それ……」  寝室に戻り、孝介の様子を確認する。 いびきをかいて寝ていた。 急展開すぎて、考えることが多すぎて。頭がパンクしそう。 シャワーを浴びた後、リビングのソファで一人今日の出来事を振り返る。 加賀宮さんって、どんな人なの? 九条グループがお願いするほどの会社の社長だっていうことがわかった。それ以外何も……。 孝介の言葉を思い出した。洋服のサブスク、カフェ、BARの経営。 ネットで検索すれば、何か手がかりがあるかもしれない。 私はスマホを取り出し、彼の苗字と孝介が言ったワードを入れ、検索した。 すると――。「あった!」 思わず声を出してしまった。 「加賀宮……迅……。代表取締役社長。会社名は、シリウス」  私は、会社概要を食い入るように見た。 わかったことは、会社のこと。 私が知りたかった彼の情報については、名前くらいしかわからなかった。「かがみや……。じん。かがみやじん。かがみやじん……」 加賀宮さんは前から私を知っている。初対面ではないと言っていた。 小学校や中学校、高校、大学、同級生

  • Love Potion   真実 14

    「そんなっ!嬉しいお話ですが、美月は社会に出たことがあまりないんです。皆さんに教える立場になるなんて、ご迷惑をかけてしまうんじゃないかと心配です」 予想外のことに孝介もアタフタしている。 私が社会に出たことがないなんて、嘘だ。高校生の時からアルバイトをしてたし、あなたと結婚する前まで普通にOLしてたけど。「美月は?まさか、簡単にお願いしますなんて言ってないよね?」 彼は視線で断れという合図を送ってくる。「孝介さんに相談しないと答えられないってまだ返事をもらえていないんですよ。もちろん、これはビジネスですから。報酬はお支払いしますし、サブスクとこのカフェをきっかけに、九条グループの皆様と仲良くさせていただきたいと思っています。もし不安に思うところがあるのなら、僕の方から社長であるお父様の剛史さんにお話をさせていただいても構わないのですが」 お義父さんなら、喜んで受けろって言いそうな気がする。 義父にまで交渉しようとするなんて、加賀宮さん本気なんだ。孝介はお義父さんの名前を聞いて、反応している。 勝手に断って怒られるのは孝介だもんね。「ありがとうございます。申し訳ございません。父に、僕の方から相談しても良いですか?」「ええ。もちろん」 私を抜きにして勝手に話が進んでいる。 私には決定権がないから、何とも言えないけど。「このお話は後日でも……」 孝介が提案したが「明日、九条社長とお会いする予定なんです。そこでお話できたらと思っていたんですが。あっ、そうですね!やっぱり、僕から直接社長にお話した方が良いですよね、明日お会いするんだし……」 加賀宮さんはすみませんと言いながら、やんわりと孝介に圧力をかけた気がした。社長じゃないと判断ができないのか。そんな風に。 孝介のプライドが傷ついたのか「いや……。ぜひ……。ぜひ、そのお話受けさせていただきます!美月も自分の趣味が役に立てて嬉しいと思います。な、美月?」  加賀宮さんの話が本当だとして、確かにこの家にずっと一人で居るより、美和さんと顔を合わせるより、良いかもしれない。「私でお役に立てるのであれば」 そう答えた。「嬉しいです!ありがとうございます!」  加賀宮さんは手をパッと合わせ、喜んでいるように見えた。 彼が仕事モードだと本当に「良い人」に見えてしまう。

  • Love Potion   真実 13

    「あ……りがとう」 なんでお礼を伝えてるんだろ。 これじゃ、いつものようにまた加賀宮さんのペースに巻き込まれてしまう。「ねぇ!いい加減、教えてよ。何考えてるの?孝介が言っていることは本当?あなたが九条グループと提携するって?」「あぁ。本当だよ。俺っていうよりは、俺の会社と業務提携を結ぶことになったって話だけどな」 加賀宮さんの会社ってどのくらいの規模なの? やっぱり、BARのオーナーだけじゃなかったんだ。 ていうかそんなに凄い人なのに、どうして私なんかとあんな契約を?私じゃなくても良かったんじゃ。「美月は昼間何かあったの?電話くれただろ。今は旦那も居ない。話を聞くって約束したから」 今は私の相談なんてしている場合じゃない。「なんでも……ない」 はぁと彼は溜め息をつき「命令。話さないと、旦那が帰って来た時に全部バラすよ?」  バラす……。この前の動画、私があんなお酒さえ飲まなければ――。「孝介が……。家政婦さんと浮気してたの!それもうちのベッドで。あんなところで毎日寝ていたかと思うと気持ち悪くて。今日は排水溝に私の髪の毛が落ちてたからって、突き飛ばされて……。親に離婚したいって相談したけど、待ってほしいって言われて、辛くて。話を聞いてほしいって思い浮かんだのが、あなただったの!バラすって……。少しでもあなたのことを優しい人だって思った私がバカだったわ!どうせあなたもっ……」 孝介の浮気もDVも、離婚できない現実も全て私のせいで、加賀宮さんのせいじゃないのに。言葉が止まらなかった。 彼はスッと立ち上がって「ごめん。俺が悪かったから。落ちついて」 私をギュッと抱きしめた。 彼の胸を押し返そうとした。 けれど――。「突き飛ばされた時、ケガ、してない?」 彼の一言に、堪えていた涙が溢れ出してしまった。「してない……」「嘘だろ?」 あぁ、どうして彼にはわかってしまうんだろう。「擦りむいただけ」 素直に答えてしまう私がいた。 信じちゃいけない人なのに、私を利用しようとしているだけの人かもしれないのに。 期待してしまうようなことをする、加賀宮さんは本当にズルい人。「今度、全身チェックする」「えっ?」 全身チェックって。「バカ!変態!」 彼の胸の中から咄嗟に逃れようとした。 が、離してはくれなかった。 しばら

  • Love Potion   真実 12

    「美月はとても一生懸命な女性で。家事や料理も上手で、自慢の妻なんです」    ウソウソウソ!そんなこと思ってないくせに。  美和さんの方が……とか、心の中で思っているんでしょ!?どうしてそんなに見栄を張るの。「容姿だけじゃなく、内面も素晴らしいんですね」  加賀宮さんはフッと笑った。 その笑いは何? 二人の会話に心の中で突っ込みを入れる。「美月さんの作った料理、食べてみたいです。僕は、性格が悪いからか、何年も彼女はいませんし、食事もいつも外食だから。たまには手料理とか食べてみたいなって、憧れるんです」 加賀宮さんは、そう言って孝介に微笑んだ。  孝介の眉間がピクッと動いたのを私は見逃さなかった。「すみません。今日は急だったから。彼女も準備していなかったみたいで。酒のつまみもろくなものがありませんね」 孝介は私が料理が下手だと思い込んでいる。悔しい。「私、作ります」「はっ?」  孝介が一瞬、素になった。 「美月、無理しなくて良いよ。食材も揃っていないだろ」    どうしても私に作らせたくないのね。  不味いものをお客様に食べさせたら、顔が立たないもの。「料理上手な妻」で通っているから。 でも――。「大丈夫です。私、作ります」  ちゃんと作れるってところ、孝介に見せてやりたい。「本当ですか?それは楽しみです」 加賀宮さんがそう言ってくれたおかげで 「じゃあ、お願いするよ」  孝介も渋々承諾してくれた。 私がキッチンに立っている間、二人は楽しそうに会話をしていた。  表面上だけなんだろうな、二人とも。 「お待たせしました」  私は作ったおつまみを二人の前へ運んだ。  卵焼き、塩昆布とキャベツの和え物、ツナと玉ねぎのピリ辛和え。 イジメかっていうくらい、冷蔵庫には何もなかった。  もっと材料があれば……。  私の作った料理を見て、孝介は表情が明らかに歪んでいる。「加賀宮さん、すみません。もっとオシャレなモノ、妻は作れるんですが。今日はたまたま冷蔵庫に何もなくって。見栄えが悪いですよね。美月も無理して作るから。明日食べるから、どこかコンビニでも行って、おつまみ買って来てくれないかな?」 孝介は私に視線を合わせる。眉間にはシワが寄っている。すぐわかる、怒っている。「いえ。とても美味しそう

  • Love Potion   真実 11

     夕方になっても孝介は帰って来なかった。  私から連絡するつもりはない。    美和さんが来なかったから、自宅に帰って来ることもないんだろうな。  夕食も食べる気にならない。  見たい番組もなかったが気分転換になればと思い、ずっとテレビを見ていた時だった。 電話が鳴っている。 もしかして加賀宮さん? 着信相手を見ると、孝介だった。「もしもし」<もしもし?急だけど、家に客人を連れて行くから。大切なお客さんだから、粗相のないように。良い妻を演じろよ。愛想は良くしろ。俺の進退がかかってるんだからな>「どういうこと?今日、休みじゃなかったの?」<休みだったよ。だけど、父さんから呼び出されて……。お前に説明してもわからないよ。とにかくこれから帰るから> 孝介は慌てているようだ。  部屋は綺麗だし、お茶の準備とかしておけばいいよね。  あっ、お酒の方が良いか。もう二十時近くだから。 おつまみとか何もないけど、良いのかな。  買い物に行きたいけれど、孝介からお金もらってないから財布の中は空っぽだ。 再度確認しようと、電話をするも出ない。  念のため、LIEEを送っておこう。  文章を打って送信する。  けれど、返事が来ることはなかった。 キッチンや冷蔵庫を見て、何か作れるものがあるか考えている時だった。<ガチャン>    玄関の扉が開く音がした。  孝介が誰かと話している。出迎えなきゃ。「お疲れ様です。お帰りなさい」 深く一礼をする。「ただいま。急遽、ここで仕事の話をすることになって。あっ、どうぞ。汚いところですが、上がってください」 孝介が「ただいま」だなんて。いつもなら絶対言わないのに。  余所行き用の声と態度に、お客様がお偉いさんだと言うことを理解する。 私は顔を上げ 「こんばんは。初めまして。妻の美月です。どうぞ――」 どうぞお上がり下さいと声をかけようとしたが――。「こんばんは。初めまして。加賀宮と申します。急にすみません」 その声と顔に驚きを隠せなかった。「加賀宮さん……?」 えええええっ!?  どうして加賀宮さんがここに居るの!? 目を見開き、立ち尽くしている私に 「美月。加賀宮さんじゃなくて、加賀宮様だろ?初対面だし、お客様なんだから。すみません、妻

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status